はいほー通信 短歌編

主に「題詠100首」参加を中心に、管理人中村が詠んだ短歌を掲載していきます。

一日一首

2012年01月25日 19時30分35秒 | 日詠短歌

2012/1/2(月)
   一月二日に川崎大師。40年以上続く我が家の行事。

 現役のトーテムポールのように咲くアロエの花の肉色の首


1/3(火)
   NHKスペシャル『映像の世紀』全十一回をやっと見終わる。タフな世紀だ。

 壁はひと 壁なれば人また壁をつくることから始めてみよう


1/4(水)
   仕事始。

 どうせならみんなさらってほしかった残りものじゃあつかえないってさ


1/5(木)
   雑誌はもっぱらお風呂の中で。

 両足を伸ばせないまま中年が汗したたらすヤな味の汗


1/6(金)
   どこまで「おはよう」だろう。どこから「こんにちは」だろう。

 空と宙なみだとひとみ風と波 温泉たまごの黄身と白身の


1/7(土)
   「らくらくホン」を使っている。意外に難しい。

 少年は五の指をもて押し拡ぐ膝の上なる面の世界を


1/8(日)
   昔、外国映画で卵料理を延々と挙げていくのがあったけど、なんて題だっけかなあ。

 高島屋最上階の食堂の勝丼上の落とし卵を


「短歌研究 2012年1月号」詠草・うたう☆クラブ

2012年01月21日 19時12分43秒 | 日詠短歌

「詠草」

稲の穂はすべて東を向いて垂れ水の匂いのふと香ばしく

谷風は刈草の香を運びくる裏切るように蝉声は無く

起こされて「今は春だ」と言われればそうかと頷きそうな農道

老い果てて朝露の乗ることもなく里芋の葉の野垂れてゆくか

刈り株にゆれる二番穂三番穂また白色の軽トラが行く (☆)


「うたう☆クラブ」

ぬる濡れたガラスを滑る指先もかなしい言葉なのでしょうから

ここまでが相模の海である海の見える斜面にある俺の墓 (☆)

墓苔の匂いは指に沁みついて車窓にひとり頬杖をつく

悲しんでくれるであろう人がいるうちにと思う四十四の初夏

一度だけほんとの恋がありまして陽光発電板の黒ずみ


(☆)のついているものが、取られた歌です。

完全に季節はずれなのは、ご容赦を。
作ったのは夏だったんです。


一日一首

2012年01月18日 20時31分13秒 | 日詠短歌

2011/12/26(月)
   近ごろは、売れ残りのケーキって売らないんだ。

 昨日より暗い夜にはぼくだけのきまりを破る やぶらせてくれ


12/27(火)
   計画停電を思い出す。信号機の八割方が消えた(あとの二割はディーゼル発電機で)。

 こっちさ来、つまんねえべと右を指す信号右の下の矢印
 (来=こ)


12/28(水)
   年末って要素があんまり無いね。

 注連飾り甘夏老婆落花生屋台を覆う幕の紅白


12/29(木)
   近所のラーメン屋が閉店していた。「34年間ありがとうございました」と。

 死を少し吸いこむだけと知りながら歌と笑顔をまた唇にする
 (唇=くち)


12/30(金)
   帰省。電車で一時間半だけどね。

 桜木の枝の隅ずみ刈られるを(俺はまっすぐ捻れたいんだ)


12/31(土)
   『ノルウェイの森』何度読んでも、かなしい小説。

 親指に血の巡ること ゆっくりと頁を捲るものであること


2012/1/1(日)
   何となく、
   今年はよい事あるごとし。
   元日の朝、晴れて風無し。(啄木)

 冬薔薇ひとつ見知らぬ家々の見覚えのある道角に咲く
 (薔薇=そうび)



一日一首

2012年01月11日 19時34分52秒 | 日詠短歌

2011/12/19(月)
   惑星直列。脳みそがとろけるほど疲れた。

 眼底を何度も過ぎるらんちゅうのような形を微熱と呼ぼう
 (過ぎる=よぎる)


12/20(火)
   初マフラー(ただし朝のみ)。

 これからがはないちもんめと空を割く二〇時半の飛行機雲は


12/21(水)
   辻堂駅北口再開発最高潮。

 空漠の地に聳えるは骨組の見え易き機器そして白光


12/22(木)
   センター試験、ってもイメージ湧かない。共通一次?縁が無かったしなあ。

 〈熱烈〉の点の八つにとろとろと煮られる指導塾ロゴマーク


12/23(金)
   百五十年前の日本人に誕生日は無かった。

 そこのあなた、カードを持っていませんか?今のわたしはとっても寒い


12/24(土)
   Have yourself a merry little Christmas.

 まどろみは今夜もきっと来るのだろう(みどりが き なのあかは ち なのよ)


12/25(日)
   聴く専門だけれど。

 つっかえてつっかえて弾くバイエルのねえ、ちょっと目を上げてごらんよ


一日一首

2012年01月06日 20時41分09秒 | 日詠短歌

2011/12/12(月)
   月は友。オリオン座も。

 十六夜の浮き出でるころ退庁すぱくりと叩き割れそうな月


12/13(月)
   夜はだいたい麺類(そば、うどん、スパゲティ)。

 適当に灯りを間引き色映えのせぬ野沢菜のマヨネーズ和え


12/14(水)
   「若いさ。娘のような年齢だ。だが関係無いのさ。
    目で追うだけで元気になる。俺も負けちゃいられないなと思うんだ。
    貴重だろ?」

 ディスプレイの珊瑚を縫ってえいえいとドルフィンテイル、髪ひらめかせ


12/15(木)
   生き物を飼ったことがない。子どものころインコを死なせたくらいかな。

 籠の巣の銀糸づくりの扉を開けろ入れろとせがむハムスターかな
 (扉=と)


12/16(金)
   帰り際に通り雨。コーヒー一杯で止んだ。

 ようやくに極まる色のもみじ葉の中央公園風吹きぬける


12/17(土)
   半月ぶりの里山の朝。嬉しいくらいに関東の冬だ。

 霜の降るあおだけのそら、青空にしらじらと浮く月は現役


12/18(日)
   「ベートーヴェンピアノ協奏曲第3番」グレン・グールドと内田光子を聞き比べ。

 アラスカの氷河が競ってくるような「なぜ?」の轟くうたを聴きたい
 (競って=せって)


一日一首

2012年01月02日 20時14分27秒 | 日詠短歌

2011/12/5(月)
   イルミネーションに青が多いのは、今年の流行か。

 光ひかり瞬くだけの家垣に月齢十夜の白ふりそそぐ
 (十夜=とおや)


12/6(火)
   雨。寒い。が、悪くはない。

 四両の窓にもれなく曇りあり運命共同体の終着


12/7(水)
   熱のせいか妙にハイ。

 鼻先に浮く熱塊はわたしより遣り手洒脱な分身として


12/8(木)
   ダウン。窓の外は米軍機の轟音がしきりと。

 飛ぶものはいつも僕らに腹を見せたぶん海から風が吹いてる


12/9(金)
   丸二日寝てれば、そりゃ直る。

 ひさかたの外の空気は月の味郵便受けの文裏を見て
 (文=ふみ)


12/10(土)
   『小澤征爾さんと、音楽について話をする』(小澤征爾×村上春樹)一気に読了。

 望月の滅するという夜なれば友よ、光に耳を澄ませよ


12/11(日)
   月蝕見物なんて、学生の時以来だな。

 影を見て光の濃さを確かめる0時半なる海岸歩道