はいほー通信 短歌編

主に「題詠100首」参加を中心に、管理人中村が詠んだ短歌を掲載していきます。

「短歌研究 2011年11月号」詠草・うたう☆クラブ

2011年11月28日 20時51分45秒 | 日詠短歌

「詠草」

9月10日今年も夏を生き残り鳥、間断なく降下する川

熱くない夏の日に鳴く蝉たちはこんなに頁の字にそぐわない

薄靄を今夏はじめて見る朝に散らず汚くなる紫陽花は

向日葵が取り払われた歩道にも疲れた蝉の声ふりつづく

セミの声じゃもう震えない朝露を舐める塩辛蜻蛉も俺も (☆)


「うたう☆クラブ」

山生れしごとくに雲の湧き出づる奇妙に紅の濃き桜花 (☆)

目を瞑る 目を開ける 手を翳す どうせ同じものしか見えない

掌の中の光幾千ほつほつと皆俺のもの であるはずの

次々と身を突いて喰む蒼銀のあるいは眼あるいは背鰭

蜘蛛の巣が顔に付くのは仕方ない が、眼鏡の筋に困る山道

マフラーを恋は山羊さん郵便のころが一番いいね、と直す



(☆)のついているものが、取られた歌です。

「うたう☆クラブ」に六首挙がっていますが、本当は五首のはずなんです。
でも、手持ちの記録では六首……
どれかを落として投稿したんでしょうが、それがどの歌か、今となっては永遠の謎です。


一日一首

2011年11月23日 19時09分05秒 | 日詠短歌

2011/11/7(月)
   2年以上積んだままだったBOOK1を、ようやく読み始める。

 人間てきもちわるいというこへの腑分けに使うための言葉を


11/8(火)
   「まっくらー」が、近ごろの退社の挨拶。

 秋咲きのひめつるそばの日一日せばまりてゆく朧月かな


11/9(水)
   こんなにも疲れることだったろうか 小説を読むという行為は。

 現実と「その現実」がねじり合いだんだんめり込んでいく うなじから


11/10(木)
   この秋初めてセーターを着る。

 おはなしのほうがつらいと思ってた温い薊の茎の臥所で
 (温い=ぬるい 薊=あざみ 臥所=ふしど)


11/11(金)
   なぜだ。『たべちゃうぞ』(ポンキッキ)の歌が、耳から離れない。

 暖を取るには脂肪なら「国産の」表示を貼れば良かろう、人も


11/12(土)
   父の墓参に伊豆稲取へ。十年目。

 墓群のしずかに光る岬にてさねさし相模の海は断たるる


11/13(日)
   来られない方の甥の靴のサイズは29cm。兄がそう言う。

 海沿いの高架の駅に猫がいて鉄路をのろり下っていった



一日一首

2011年11月16日 22時07分42秒 | 日詠短歌

2001/11/1(火)
   通勤路はほぼ直線だが、坂がひとつある。

ダイナモはひと漕ぎごとに闇を生む今宵月齢五.三と


11/2(水)
   「うたう☆クラブ」から作品へのアドバイス届く。この、タイミングで。

そこにある界への改の軋みもて(ほってしもたらええねんけどな)


11/3(木)
   DVD「メディア 蜷川幸雄×大竹しのぶ」(2005年)を見る。

蓮の葉は流れの中にひらかぬをうち重なりて筋となりゆく


11/4(金)
   コロス「しかもその怖ろしい句を、忌わしい響きにあわせて/声高な節で歌い上げるとは。」
   (『アガメムノン』アイスキュロス ちくま文庫)

「おととととい、ぽぽい、だあ。」陽に灼かれ地球最後の日は今日も来る


11/5(土)
   VHS「王女メディア 蜷川幸雄×平幹二朗」(1984年)を見返す。

女とは男か折れる帆柱か機械仕掛けの神をも拒み
(機械仕掛けの神=デウス・エクス・マキナ)


11/6(日)
   昨夜半、胃痙攣起こる。三〇分ほどで回復。

拳大の緊縮おぼゆ鶺鴒の黒も夜には馴染まぬものを


一日一首

2011年11月16日 22時05分53秒 | 日詠短歌

 『短歌研究』11月号特集「一日一首歌を作る」。
 読んでそのまんまの内容ですが、これに感化され、自分でもやってみようと思い立ちました。
 最初は、このブログに毎日発表しようかと思ったのですが、強力な「縛り」を設けないと絶対途中で挫折すると思い(特集中で、岡井隆さんもそのような意味のことを言われていました)、何人かのお友達に、無理やり毎日メールで送りつけることにしました。
(お友達の方々、申し訳ありません。天災と思って諦めてください。)

 ここでは、送りつけたその歌を数日分まとめてアップしていこうと思います。
 夢は、1年間継続。
 どうなりますことやら。よろしければ、読んでやってください。

やつあたり

2011年11月11日 20時03分46秒 | 日詠短歌

駅前に、巨大ショッピングモールが開店した。
それはあまりに巨大で、小やみになってきた雨にけぶって、果てが見えないくらいだった。
それはとても明るかった。今年の真夏の午後二時より明るかった。
それに背を向けて歩いた。背を向けて歩かないと、家に帰れない。
それに向かって進んでいくのだろう、対向車線のヘッドライトが、いつもより3倍増しで明るかった。
そして家に帰り、風呂に入り、冷蔵庫からビールを取り出し、わざわざパソコンを起動させて、今僕はこれを書いている。
数十年前の東京電力のコマーシャルが頭に浮かぶ。
『現在使われている電気の四分の一は、もう原子力発電です』


  要塞は索敵灯を全方位照射したりき我のみを除け