「詠草」
9月10日今年も夏を生き残り鳥、間断なく降下する川
熱くない夏の日に鳴く蝉たちはこんなに頁の字にそぐわない
薄靄を今夏はじめて見る朝に散らず汚くなる紫陽花は
向日葵が取り払われた歩道にも疲れた蝉の声ふりつづく
セミの声じゃもう震えない朝露を舐める塩辛蜻蛉も俺も (☆)
「うたう☆クラブ」
山生れしごとくに雲の湧き出づる奇妙に紅の濃き桜花 (☆)
目を瞑る 目を開ける 手を翳す どうせ同じものしか見えない
掌の中の光幾千ほつほつと皆俺のもの であるはずの
次々と身を突いて喰む蒼銀のあるいは眼あるいは背鰭
蜘蛛の巣が顔に付くのは仕方ない が、眼鏡の筋に困る山道
マフラーを恋は山羊さん郵便のころが一番いいね、と直す
(☆)のついているものが、取られた歌です。
「うたう☆クラブ」に六首挙がっていますが、本当は五首のはずなんです。
でも、手持ちの記録では六首……
どれかを落として投稿したんでしょうが、それがどの歌か、今となっては永遠の謎です。