嘲りの業は勉強するまでもないから放り出します歌集
2012/4/2(月))
課内異動で別の出張所へ。
かるがると行く春靴に地下道の凝る汚水は触れられもせず
4/3(火)
本当の台風でも、ここまですごくはない。
無言劇そこここにたつ春嵐の雨連弾と散弾と薙げ
4/4(水)
散髪は月一回。今日の店内は若い子が多かった。
髪梳きの鋏の音のさきさきと花よ新たな門を見守れ
4/5(木)
「うたう☆クラブ」からメール。ほんとに、タイミングを狙ってるのか?
蔦の這う瓦礫廃場よ春嵐に磨かれ月は輪郭を増す
4/6(金)
課歓送迎会。異動者だけで20人以上。
宴ならさらに笑えというのだろうぬばたまの昼あかねさす夜
4/7(土)
近所の高台に、広大な霊園がある。
青天にふさと蕾める桜ばな四月の霜はまだ溶けきらず
4/8(日)
この時期に、まだ手袋が必要だとは。
公園の桜の下の生け垣の柔葉を口に入れてみる 噛む
2012/3/26(月)
職場で周りの人たちが大異動。さらなる嵐の予感。
終電のガラスに触れて指先に籠もってしまう熱を逃がそう
3/27(火)
車内に「鎌倉学園 送球部」のジャージを着た女の子がいた。
いつもより遅い電車に人びとは附箋だらけの体で眠る
3/28(水)
結局、三月は公園で昼食を取ることが出来なかったけれど。
置き去りのなし崩しでも春の陽は塩のむすびの確かさに似て
3/29(木)
爪やすりは化粧品に売っていた。まあ……言われてみりゃそうなんだろうけどさ。
ほおづえをつけば眼下は白妙のマスクの群のゆらめく夕べ
3/30(金)
「立春から春分までの間に」吹く風を言うのだそうだが。
県道を赤色灯の連なりが春一番にあらがい駆ける
3/31(土)
正に百花繚乱。めまいがするほどに。
唐突に辛夷の花のほぐれるは回しがけする蜜なのだろう
4/1(日)
日本に根付かないのは食べ物とセットになっていないからだ、という説。
道走りする雉の尾を追う四月馬鹿はこの日にだけ泣けばよい