はいほー通信 短歌編

主に「題詠100首」参加を中心に、管理人中村が詠んだ短歌を掲載していきます。

「題詠blog2012」 投稿歌

2012年11月30日 19時10分49秒 | 題詠100首blog2012


001:今
 こんにちはお元気ですか今どこの子どもに春を探してますか

002:隣
 夜明けです隣で膝を抱えてる昨日がだんだん薄くなります

003:散
 散らすため咲かせる花のあるように夜は誰をも抱くのでしょうね

004:果
 日が射せばそれだけでもう春ですね因果っていう言葉、好きです

005:点
 泣いたって駄目ですからね視線から視点に移る君の耳たぶ

006:時代
 西風に嬲られるから咲くのです時代時代に置かれた花は

007:驚
 気田くんが驚いたまま凍ってるそばをすり抜け来た供物です

008:深
 話なら聞こえてますよまばたきを深く続けていただけだもの

009:程
 蝋梅がようやくですねなる程ね、そういう声が嫌なんですね

010:カード
 中指と人さし指のスナップでカードを放るようなあなたは

011:揃
 前髪を揃えることで体温を失えるなら安いものでしょ

012:眉
 青色が届けるでしょう眉波のふくらみゆれてかさなる果てに

013:逆
 お気持ちはうれしいけれど親潮に逆らうことができないように

014:偉
 果たして、日溜まりのなか偉そうに座るキャベツに勝てるでしょうか?

015:図書
 図書室で寄り添うでしょう背表紙の札に日付を刻まれたまま

016:力
 愛だけの力は成らないのでしょうかせめてすべての旗をメッシュに

017:従
 捨てなさい存在意義がありません風に従えない凧なんて

018:希
 最後まで小箱に残るべきでした「希ナ望ミ」という咎人は

019:そっくり
 性欲を感じませんか逢坂の背黄青鸚哥にそっくりなまま

020:劇
 とりわけ逢魔が刻の冬の場は無言劇から始まるのです

021:示
 石ひとつ拾って水に捨てました〈衣〉と〈示〉くらいの差違の

022:突然
 ではこれで(カップを置いて)突然に、なんて言うんじゃないですよねえ?

023:必
 「必ず」の書き順ひとつ知らないで生きてこられたあなたとならば

024:玩
 さすがに今は自前のものを玩ぶことのほかにも役立ってます

025:触
 四十四の冬の最後は舌に触れ指に拭った魚鱗のような

026:シャワー
 そのあとの水のシャワーのせいでしょう天王星は忘れられがち

027:損
 おおどかに損ないませよあかねさす薔薇の束にて撲つがごとくに

028:脂
 世の中を指の輪越しに見ましょうよ油脂せっけんのあぶくで出来た

029:座
 大丈夫 それぞれの座に帰るため互いに抱いているのですから

030:敗
 敗け方が大切ですよ椅子ひとつ置きに埋まった中華飯店

031:大人
 ウェンディは大人にしかもういないんです春女苑が咲くまで待って

032:詰
 ふふ別にかまいませんよ詰問のようにキャベツの葉を選り分けて

033:滝
 水だけが落ちてくるではないのです華厳の滝は塊として

034:聞
 やっぱり風を聞くのが良いでしょう木道沿いにゆれるぶらんこ

035:むしろ
 涼しみを第一目とするのなら桜はむしろじゃまな花です

036:右
 放置されすみれれんげは泣くのです右岸遡航の決まりごとゆえ

037:牙
 インナーを忘れたことを悔やむから光が牙になる日までまだ

038:的
 オーヴァーニーソックスですが遠当ての的にするにはまだ朧にて

039:蹴
 直ぐに立つ神社の杉のかなしくて上段真空飛び膝蹴り

040:勉強
 嘲りの業は勉強するまでもないから放り出します歌集

041:喫
 春になり茅ヶ崎市立病院の喫煙室も消えちゃいました

042:稲
 いつまでが早苗でいつから稲でしょう田んぼの上はどこも空だけ

043:輝
 後出しが座右の銘の人生に今日もしずかな冬の輝跡を

044:ドライ
 血の味がしますか?ならば僕じゃなくドライリップのせいでしょうから

045:罰
 こつんこつん不思議の国が好きだから罰を受けてるマンボウですよ

046:犀
 八重桜さみしげなのは花房の一つひとつが犀であるから

047:ふるさと
 ヘアピンが見つかりました目を細めふるさとづくりしていた頃の

048:謎
 くったくの無い顔でしょうあのときは謎なんぞにも浮かれてまして

049:敷
 くたびれた敷布の上で出来るのはベースラインをたどることだけ

050:活
 息一気行き活きいい気逝きに行きぴっちぴちです五月は闇も

051:囲
 しろたえの囲めかごめや夏の花うしろの正面見えていますか

052:世話
 エクセルのめぐりわらわら飛び出して今夜も来ます世話焼きうさぎ

053:渋
 傷ついた膝が教えてくれました渋谷が谷であるということ

054:武
 なめらかに沈めばうまくいきますよ演武は指のかたちがすべて

055:きっと
 曲がるのが下手なタイヤが乗り上げてあなたはきっと角の縁石

056:晩
 これはこれは重傷ですね晩酌が面倒になる君なんて

057:紐
 編みすぎて絡まりすぎた縁だから切ります紐の手品のように

058:涙
 土ならば涙も吸ってくれるからだから好きなんですよ里山

059:貝
 砂浜にからす貝がら敷きつめて夏が夕日になるまで待てば

060:プレゼント
 あなたへのプレゼントから放たれた風というならそうなのでしょう

061:企
 まなざしをひとりじめする企ての延命策も二時間でパア

062:軸
 もう一杯いただく時間はあるでしょう地軸がぶれるまでにはまだ、ね

063:久しぶり
 うなじから流れる雫と比べればお久しぶりと言えますかしら

064:志
 結局のところ残るは響きです成志せいじと流してくれた

065:酢
 滞るものが多すぎる朝はバルサミコ酢にパンを浸して

066:息
 青さへの冒涜でしょうわざわざ息を足りなくしている僕は

067:鎖
 首輪って見えないもので鎖って噛みつくためにあるものでしょう

068:巨
 ずぶぬれが似合いましたね小田原に巨きな象がいたころのこと

069:カレー
 やるのならすぐですからねしたくてもしたくなくてもカレー残して

070:芸
 野毛山に大道芸を見に行ったさなかに折れたヒールですそれ

071:籠
 たとえば夏のわたしが好きなのは籠で魚を飼っている人

072:狭
 だってどうせかたつむりだし男でも狭さはかわらないっていうし

073:庫
 ハマッちゃいますよねやっぱ剥くのってナショナル冷蔵庫の薄皮を

074:無精
 すっぱだかで浮き輪にのっているようで貧乏神は無精なクセに

075:溶
 いやです、と首をふりふりもだえれば解けなくなって溶けて無くなる

076:桃
 そういえばって彼が話してくれました桃を浮かべる競争のこと

077:転
 公転を止めればいいと思うんですスーパーマンがやってたように

078:査
 神父さん「査定に響く」が口グセで今日も笑顔で告悔室に

079:帯
 箱根ターンパイクくねくね空にほら王蟲の帯が伸びてゆくよう

080:たわむれ
 網の目にたわむれてくる蔓草はやがて闇をも絡めとります

081:秋
 麦の穂は頭を垂れることもなく10×10平米そこだけが秋

082:苔
 出てけって言われるんです舌苔をブラシで落としてる姉さんに

083:邪
 あのですねヒミツですけど邪なほど文章はうまくなります
 (邪=よこしま)

084:西洋
 右耳の穴をこんなに好きなのが西洋タンポポの綿毛でしょ

085:甲
 エスカルゴばかりを食べる甲冑が歩いてるから寝れないんです

086:片
 満ち潮の先触れとして泡たちが欠片ばかりでできた体を

087:チャンス
 もうなんかお尻の皮も攣ってもうラストチャンスがもう4回目

088:訂
 そのとたんカンカン帽を濡らしつつやってきますよ訂正男

089:喪
 てのひらで背すじをすっとなであげて赤い喪服をまとう子どもが

090:舌
 舐めることできるのは舌だけじゃなく花吹雪って桜だけじゃあ

091:締
 公園中の蛇口を締めてまわるうち羽根がなんでか生えていました

092:童
 入り口に童子がいます七つだけ灯のある窓を持つホテルには
 (童子=わらし)

093:条件
 抱擁の発動条件確認をしているような笑みであなたは

094:担
 両肩に担う荷物の少なさがかなしくなってしまったら老い

095:樹
 記念樹と言い張るのならそれも良しふたり見上げましょうか鉄塔

096:拭
 台拭きのような一世を送りたく濯いでくれるひと募集中

097:尾
 冬ごもりするシマリスのもふもふの尾っぽは布団になるんですって

098:激
 過激派の叔父「やめまーす!」ってヘルメット脱いで今年で定年ですね

099:趣
 趣が荒野にあると言う方は汚れても良い靴と瞳を

100:先
 これからの10年のため 先達の宝のために歌いましょうまた



「一日一首」終了です

2012年11月14日 19時52分06秒 | 日詠短歌

そんなわけで季節が一回りしたところで、『一日一首』終了です。

去年の11月から始めたこの企画、「3ヵ月続けば良い方だ」と考えていましたが、なんとか366首を読み終えることができました。
その名のとおり、一日に一首を作り、メールにて友達に(無理やり)送り続けたのですが、
「読んでもらっている」
という緊張感が無ければ、とてもとても持続出来なかったでしょう。1年間付き合ってくれた友人に、改めて感謝します。
本当にありがとう。

この企画の中で唯一気をつけたのは、
「その日の歌はその日のうちに」。
つまり、作り置きはしない、ということでしょうか。
こういった企画は、自分でルールを設定するゲームのようなものですから、自分からルールを破っちゃ面白くない。
おかげで、持続力が少し上がったような気がします。歌の出来不出来はともかくとして。

みなさんも、よろしければやってみて下さい。
1年はさすがに長いけれど、短期間でも色々と趣向を凝らして楽しめるんじゃないでしょうか。

それでは、お読みいただいた方々に深く頭を下げつつ。


一日一首

2012年11月14日 19時50分22秒 | 日詠短歌

2012/10/29(月)
   急いで走ってたって すぐに空は変わらない
   だからこのままいつもと同じ速さでずっと歩いてゆくだけ
   そう いつも通りの歩幅でゆくだけ
    (「あの空、Sunset Glow」 桂木千鍵)

 瘡蓋として凝りゆく夕焼けの明日天気でなければいやだ
 (瘡蓋=かさぶた)(凝り=こごり)


10/30(火)
   空気が澄み渡る。「白秋」の意味を実感。

 ま、いいかいつかは月に着くだろう傾いだ螺旋階段のぼる


10/31(水)
   引き継ぎ終了。明日より本庁に戻る。

 デザートはペパーの効いたア・ラ・モードいくつか終わる何かはじまる


11/1(木)
  『コレデオシマイ』
   (勝海舟)

 星々が楕円軌道をめぐるならこの花もまた蒼みを増そう



一日一首

2012年11月11日 15時44分10秒 | 日詠短歌

2012/10/22(月)
   あたらしくうまれたうたをひとつぶと数えて枝にのせておきます
    (「さなぎの数え方」やすたけまり 短歌研究二四年一一月号)

 ふたひらの掌と掌のなかに息吹あれあなたの性は星を孕める


10/23(火)
   ヘブンリーブルーは雑草、という意見もあるらしいが。

 廃屋を覆う蔓には十月の異国の藍のしたたりやまず


10/24(水)
   冬の大三角形を、全部言える人。
   カラマーゾフの兄弟の名を、全部言える人。

 焼尽の星という名にただようはシトラス・フローラルみどりの香


10/25(木)
   一年は長いようで、やっぱり長い。

 帰ろうを四つつぶやき戸を開ける椅子の一脚ひとつの軋み


10/26(金)
   なぜみんな平気なんだろ寒くなる十一月が死ぬほど嫌い
    (「恋する歌音」佐藤真由美)

 心から寒さを恋うるときがあるシリウスの火くらりさびしく


10/27(土)
   書くことが何もない。そんな一日が嬉しい。

 今はもう路地に沿いゆく十月の最後の風であれと月光


10/28(日)
   前の空き地に鳥が群れる。雀、鳩、烏、鶺鴒、椋鳥。
   今日は、名前の知らない鳥も。

 ディズニーのチーズのように歳月が人はなかなか空になれない
 (空=から)


一日一首

2012年11月07日 20時21分16秒 | 日詠短歌

2012/10/15(月)
   「あ、今、俺は宇宙人が出てきても、
    『それどころじゃないんだ、お客に会いに行かなきゃ』
   と言ってる状況だな」って。
     (『世界中が夕焼け』(新潮社) 穂村弘のコメントから)

 よむ時は誰もひとりでその人のために作った三百の空


10/16(火)
   琥珀エビスが店頭に並ぶと、秋だと思う。

 空間を時間単位で借りきってさて騒がしの闇が来るまで


10/17(水)
   歯科医にかかる時ほど無防備な状態も、日常にあまり無い。

 口腔が入口でなく出口なら出ていくなにを書きとめる莫迦


10/18(木)
   もっとも日本らしい季節は秋だ、と言ったのは椎名誠だったか。

 前腕を半ばさらせばしろたえの秋の冷たさ雨のやましさ


10/19(金)
   なんでもないこの瞬間が
   一生記憶に残るような気がしたんだ
    (「星が瞬くこんな夜に」 supercell)

 連環鎖継いだ一日一輪がほらこんなにも遠くへ届く


10/20(土)
   早朝。吐く息がかすかに白い。

 籾殻の煙たつ田のこの灰は誰から成ったものなのだろう


10/21(日)
   快晴。伊豆へ墓参。

 昼顔は秋の花かよ相州の海の水皺の金にたゆたう


一日一首

2012年11月04日 21時09分58秒 | 日詠短歌

2012/10/8(月)
   つっぷしてまどろむまみの手の甲に蛍光ペンの「早番」ひかる
    (『手紙魔まみ、夏の引っ越し(ウサギ連れ)』穂村弘)

 あおむけに事務椅子鳴らす土曜日は分度器の弧を虹にあてがう


10/9(火)
   ほとんど眠れなかった。原因不明。

 叶うなら幹となりたい壮大な無駄を積みあげてゆく明るさ


10/10(水)
   朝晩は上着が欲しくなる。

 かこまれる笑顔がまわる暗くなる神無月からいついつ出やる


10/11(木)
   「簡単にいうと、別れてやる!というのが俳句で、
    でも別れられないって、下の句でいうのが短歌だ」
   と言います。
   俳句は決断の形式。一方短歌は未練の形式。
   (高橋睦郎の発言 「『一握の砂』から100年 啄木の現在」から)

 舐めるにはもう遠いんだ右肘の3年生のときのすり傷


10/12(金)
   腰痛再発。椅子から立つときが辛い。

 あしびきの往路復路に坂は無く通しゃせぬとの囁きもなく


10/13(土)
   食えなくなったなあ、と思う。若いときと比べるのが変なのだが。

 三口分捨てるくやしさジェノベーゼソースの他意を感じる午後は


10/14(日)
   朝の散歩。久々に、指が冷たい。

 バンザイをするだけすれば曇天の世界は白でまず出来ていた