さんぽみちプロジェクト

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和歌山新報で日曜日一面に連載中の「WAKAYAMA NEWS HARBOR」と連携。

持続可能な柑橘栽培の未来 消費者ニーズ・気候変動から考える

2021-09-05 16:35:00 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
25週にわたり紹介してきた、県内で収穫される様々な柑橘。その背景や収穫量の推移、味わい、加工品などを見ると柑橘を取り巻く環境の変化を感じさせられる。

和歌山市で発見された「三宝柑」は200年もの歴史をもつ柑橘。藩外へ持ち出すことを禁じた徳川治宝の命から、現在も、出荷される三宝柑のほとんどが県内で栽培されているという事実がある。
しかし、栽培効率や消費者に好まれる味に適応しづらく、最盛期に4千トンあった生産量も現在は5百トン程度。新しい春柑橘への切り替えで、三宝柑の木が伐採されることも少なくないといい、紀州の伝統を受け継ぐ柑橘の継承に不安が残る。

気候変動に目を向けると、イタリア原産の「ブラッドオレンジ」が、近年国内でも栽培されるようになった。国内に持ち込まれた1970年代、日本はイタリアと比べ栽培適温が2度程低く国内での栽培は適さないとされたが、2004年頃から国内で栽培可能となった。
技術の向上や品種改良が背景にあるのかもしれないが、栽培に適した温度を満たすようになったのは、地球温暖化もひとつの原因といえよう。


【写真】紀州伝統「三宝柑」㊧とイタリア原産「ブラッドオレンジ」㊨

消費者のニーズは一時として同じことはなく常に変化していくものであり、それに合わせて栽培する品種の選択や量を適応させていくのは農業を営むうえで必要なこと。
しかし、気候変動で思わぬものが栽培できるようになり、その裏で栽培が適さなくなるものもある。
伝統や歴史は理解されつつも効率性から別の品種へ置き換えざるを得ないこともある。

技術の発展や日々の研鑽により新しい品種が生まれ、様々な味わいを楽しめることを喜びつつも、様々な背景から消えゆくかもしれない品種に目を向け、持続可能な農業のあり方を考えていくことも大切だと思う。

(次田尚弘/和歌山市)

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