馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

昼夜放牧明けの結腸捻転

2022-07-26 | 急性腹症

朝、5時半。

昼夜放牧明けの繁殖雌馬の疝痛の依頼。

私は起きてはいたが、朝食はまだ。

食べておかないと手術中にハンガーノックに陥るかも。

豆乳、バナナ、ヨーグルト、を食べて診療センターへ。あっ、マドレーヌも追加。

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ざっと用意して研修の先生も呼ぶ。

疝痛症例を多く見たいのだそうだ。

先週末からまた開腹が続いている。

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来院した馬は、あちこち傷があり、目の上も腫らしていて、夜中から痛かったようす。

PCV45%。

超音波で診たら、

あまりに大腸壁が厚いので、収縮した小腸の連なりと間違えそうになったが、やはり結腸壁だ。

2cmほどある。

疝痛歴がある馬なのだが、今回は開腹手術適応だ。

もう一人当番獣医師も呼び出して、手術の準備を進める。

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開腹したらやはり結腸捻転で、捩れ方はけっこうひどい。

右背側結腸の膨満がひどくて、腹腔右へ沈み込み、内容を掻き出すのに注意が必要だった。

破れたら・・・・助けようがなくなる。

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再発防止にcolopexyして、終了。

重賞馬なのだ。

助かってもらわないと困る。

私はハンガーノックも起こさなかったし、

3日前にうってもらった4回目のコロナワクチンの倦怠感も消えて好調だった;笑

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先日、前から行ってみたいと思っていたウポポイを訪ねた。

実演もいくつか見ることができた。

これはカヌーであり、SUPボードだよね。

ちょっと乗ってみたかった。

 

 

 

 

 


牛の骨折内固定のアプローチ

2022-07-22 | technique

牛の骨折内固定手術のためのアプローチを説明した文章を書いてくれ、と頼まれている。

プレート固定手術をやってみよう、と思っても、まず肢を切り開いて骨に到達するところが関門なんだろう。

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牛の臨床に比べると馬の臨床では、

・そもそも運動器を扱うことが多い。

・それも骨折、OCD、骨増勢が問題になることが多く、X線撮影が普及している。

・腱炎、靭帯炎、関節炎、腱鞘炎、血腫、なども多く、超音波検査も普及している。

・外傷も多く、中でも肢の外傷が多い。

・跛行診断の中で、肢の解剖に精通していなければならない。

と言った理由で、馬の獣医師は肢の構造を意識しているが、逆に言うと牛の獣医さんは肢に親しみがないのだろう。

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言葉で説明するだけではわかりにくいだろうから、写真か図で説明しなければならない。

文章を読んだからいきなり実践できる、というような事柄ではないが、

解剖体で練習するときの参考になるような文章を書きたいと思っている。

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まず、よく肢を触ってみる経験を積み重ねることだ。

これは子牛の大腿部。

大腿骨へのアプローチは深くて難しいのは確かだが・・・・

大腿筋膜張筋などの伸筋群と、大腿二頭筋などの屈筋群の間を指で探ると、

写真のように大腿骨に到達できる部位がある。

その部位を切皮して行けば良い。

筋肉量が多い馬だとこうは行かないし、

骨折した部位がひどく腫れていると牛でもそう簡単ではないかもしれない。

そのときどうするか?も書きます;笑

プレート固定で治してもらえる骨折牛が1頭でも増えますように。

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3人出勤体制になった7月。

外部の見学研修や会議で、実質獣医師二人の日。

当歳馬の臍ヘルニア。ヘルニア嚢は大きいがヘルニア輪は小さい。

飛節がひどく腫れてしまった1歳馬の検査。OCDではなく、関節内出血のようだった。

今週、私は検査当番。午後は血液検査。

3歳馬の声帯切除&披裂喉頭蓋ヒダ切除。全身麻酔して喉頭切開して。

1歳馬の頚堆症腰痿のX線撮影。

もう1歳馬も大きい。ポータブル撮影装置では線量が不足しがちなので大型X線撮影装置で。

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一時の疝痛ラッシュも治まった。

Dukeがいた夏。

 


グルグルの結腸捻転

2022-07-13 | 急性腹症

朝、Tiebackの予定だったのが、繁殖雌馬の疝痛の依頼。

急遽、Tiebackを延期してもらって、疝痛馬が来るのを待つ。

来院したらもう虚脱状態。PCV57.

目の周りは打撲と擦過傷で腫れている。

「厳しいと思いますよ」と言ったが、「可能性があるならやって欲しい」とのこと。

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開腹したらグルグル捻れた結腸捻転だった。

引っ張り出して、捻れをほどく。

後ろ回りに3回転していた。

壊死している部分もあるのだが、基部には健常な部分が残っているので亜全摘・吻合した。

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この馬、大網が小結腸の腸間膜に癒着していたのでそれは切除した。

盲腸が膨満していて自分では動けなさそうだったので切開して内容を捨てた。

最後に小腸をみたら素直に出てこないように絡んでいたのでほどいた。

おなかの中で竜巻でも起きたようだった。

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それが昼過ぎまでかかって、

午後は去勢と、

午前中に予定していたTiebackと、

子牛の第四胃の膨満の開腹手術と、

飛び込みで当歳馬の小腸捻転の開腹。

ずっと立ちっぱなしで疲れた。

2講連続で講義するよりたいへんだ;笑

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夜中からひどく痛んで苦しんだのだろう。

目の周りから鼻までひどく腫れてしまっている。

状態が悪く見えるが、心拍は40、血検所見も悪くない。

夕方、退院して行った。

 

 


酪農学園大で講義 運動器疾患・泌尿生殖器疾患

2022-07-13 | How to 馬医者修行

月曜日は、また酪農学園大で講義。

今回は、1講目、運動器疾患。

馬の運動器疾患を90分ですべて解説するのは無理。

習って知っているはずの解剖学を思い出してくださいよ。

から始めた。

私は獣医師の卵たちが、骨の名前もスラスラと答えられないのを良く知っている;笑。

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「馬は骨が折れたら治らない」と言われていたが、「必ずしもそうではない」と骨折内固定まで話した。

抜け落としなく講義するのは本職の先生方にまかせて、私は私にしかできない話のために招かれているのだろうから。

馬はどういう病気や事故でダメになっているか?

骨折はその最たる原因のひとつで、それを何とかするのが私の仕事であり夢であったこと。

その話から、獣医臨床のやりがいを感じてもらえたら、と考えた。

寝てる学生も居るけどね;笑

あとは感受性や真面目さや想像力の問題かな。

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2講目は泌尿器生殖器疾患。

馬は泌尿器疾患は多くない。

膀胱破裂くらいかな。

生殖器疾患として産科学に力を入れて話した。

分娩事故も生産地の馬の死因のひとつ。

かつては助けられなかった馬を助けられるようになったのがこの30年だった。

そのための馬獣医師の責任とやりがい、を感じてもらいたかった。

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人生は1本の映画のようだ。

喜劇もあれば、悲劇もある。

面白くて悲しいものもある。

面白くも悲しくもなく、平平淡々とした映画もある。

あなたが一生懸命演じれば、それは優れた映画になるだろう。

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最後に、香港の美術館で見た文を紹介しておいた。

「あの業界の方が初任給が1-2万円高い」とか、

「ここはボクに向いてるところじゃない」とか、

「別なところも経験してみたい」とか、

”自分探し” ”温室探し” ”blue ocean 探し” ばかりしようとする若者が居ることも知っている。

主演俳優が、本気で演じていない映画が良い映画になるはずがない、と私は思う。

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とあるバラ園に立ち寄ってバラを見てきた。

きれいなんだけどね~

 

 

 


TPCは外すのがたいへん

2022-07-11 | 整形外科

第一指骨が粉砕しかけてscrew固定した繁殖牝馬。

第一指骨の強度に不安があったので、TPC(貫通ピンキャスト)も併用していた。

キャスト擦れが辛くなって、TPCを外して、普通のキャストに巻き換える。

貫通ピンはまだしっかり効いていて抜くのがたいへんだった。

この貫通ピンは、中央部にネジ山がある専用のものを使っている。

入れるときは三角状の端をジャコブスチャックで掴んで回して入れる。

しかし、その三角状の端は切り落としてあるので・・・・

抜くには丸い部分を思いっきり掴んで回すしかない。

ピン周囲に感染がない証でもある。

            ー

こんなのが良いかね?

             ー

腕力、握力、持久力を鍛えておくこともだいじ;笑

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USAの銃乱射事件に、「なんという国だ」と思っていたら、日本でこんなことが起こるなんて・・・

              ー

過剰な反応が起こることも恐ろしい。

自由にものが言えない風潮は今までもあったのだから。

規制や抑圧が大好きな人たちも多い。