馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

早期の2回目の開腹手術

2017-12-09 | 学問

この秋は、子牛の骨折内固定の講習であちこちへ出かけて、すっかり意識がそちらへ行ってしまった。

本業に戻らないと (って馬の開腹か?;笑)

                           -

腸管手術したのに、術後も疝痛を示すPOI (Post Operative Ileus 術後イレウス)は外科医の悪夢だ。

Florida大学のDavid E. Freeman教授のグループが、空腸絞扼の外科手術後の早期の再開腹について書いている。

                           -

Response to early repeat celiotomy in horses after a surgical treatment of jejunal strangulation

空腸絞扼の外科手術後の馬における早期再開腹への反応

Veterinary Surgery, 2017; 46: 843-850

要約

目的: 空腸絞扼で手術された馬での早期の再開腹後の予後を求めること。

研究のデザイン: 回顧的症例調査。

動物: 空腸空腸吻合によって絞扼性の空腸病変を外科治療行った馬(n=14)と切除しなかった馬(n=8)で、術後の胃液逆流(POR;Postoperative Reflux)と術後疝痛(POC;Postoperative Colic)、あるいはそのどちらかにより再開腹した馬(n=22)。

方法: 再手術前の症状を示した時間、手術時の所見と治療内容、そして結果について診療記録を調べた。

長期間追跡は、電話での聴き取りで生存を記録した。

手術のタイミングへのPOCとPORの影響を分析した。

長期間の生存はKaplan-Meier分析により検定した。

結果: 最開腹は最初の手術後、中央値57時間で、症状の始まりから16.5時間で行われた。

そして、POCがあった馬は、PORがあった馬に比べてより早かった(P<.05)。

全部で22頭中3頭が麻酔中に安楽殺された。

1回目に空腸空腸吻合を行った11頭のうち全部で9頭が、吻合部の問題によって元の吻合部の切除を必要とした。

切除していなかった8頭では、2回目の手術は切除(4頭)あるいは減圧(4頭)であった。

再開腹は、PORを示した馬16頭中13頭で成功した。

再開腹でPOCは全頭(n=9)で取り除かれた。

全部で19頭が麻酔から覚醒し、全頭が生存して退院した。

2回の手術は同じ腹部正中切開で行われ、術創感染が17頭中13頭で診断され、ヘルニアが感染した術創13のうち4頭で起こった。

生存期間の中央値は90ヶ月であった。

結論: 再開腹によってPORかPOCあるいはその両方を取り除くことができる。

そして再手術はPORを悪化させることはないと思われた。

今回の調査での再開腹の判定基準は、空腸絞扼の術後のPOCとPORを治療するガイドラインとなりうる。

                        -

私の経験と似通っていると思う。

1回目の開腹手術が終わる。

たいていはそれで疝痛が消えるが、術後も不快感が続くことがある。

あるいは、絶食中は順調だが、食べさせ始めると疝痛を起こしたりする。

蠕動を亢進させる薬を点滴したり、リドカインを投与して様子を観るが、駄目なら2回目の開腹を考えることになる。

最初の手術から57時間、これはちょっと遅いか。

症状開始から16.5時間、これは内科的対応とその反応を観ることを思えば早いか。

疝痛を示す症例POCで、逆流を示す症例PORより早いのはそうだろう。

逆流には胃カテで対応できるが、疝痛が続くなら早く開けなければならない。

                        -

22頭のうち3頭は再手術中にあきらめて、残りの19頭は退院できた。

これは良い成績だが、短期間に2回開腹すると癒着しやすいし、術創のトラブルも多くなる。

それでも、2回目であろうと、やらなければならないときはやらなければならない。

馬の腸管手術について、次々と成績をまとめておられるDavid E.Freeman先生に心から敬意を表する。

                        -

この文献に紹介されている2回目の開腹をせざるを得なかった病変。

空腸局部的な緊縮。

腸間膜の裂孔で絞扼されていたのを整復した87時間後。

最初の手術ではこの緊縮の徴候はなかった。

                       -

空腸空腸吻合部での通過障害。

A, 吻合部(矢印)の吻側が膨満している。

B, 同じ部位を開けると吻側の内容物と、反吻側の暗色になった粘膜(右側)が見える。

38時間前の最初の手術時はこの粘膜は正常だった。

                      -

空腸の、血栓のできた静脈と、それに関連した赤と青に変色し水腫を起こしている梗塞部(白矢印)。

最初の手術から12時間後。

最初の吻合部は黒矢印で示されている。

                      -

腸間膜の血腫による牽引のために、腸間膜が短くなって空腸空腸吻合部(矢印)が捻れた。

その血腫は33時間前の最初の手術時には創外へ出せたが、2回目の手術時には不可能だった(左が吻側)。

                     ---

2回目の開腹手術をしなければならなくなるいくつかのパターンがおわかりいただけただろうか。

最初の手術に問題がなくても、術後の腸閉塞が起こることは十分ありうるのだ。

                      -

麻酔から覚醒した19頭のうち18頭で6ヶ月以上の追跡が可能だった。

18頭のうち17頭は6ヶ月後には生存していた。

1頭は手術から12ヶ月後に放牧地で死んでいるのが発見された。原因不明。

もう1頭は手術から18ヶ月後に疝痛の検査中に直腸損傷し安楽殺された。空腸空腸癒着が剖検で見つかった。

他の4頭の安楽殺の理由は、手術後6ヵ月後のひどい疝痛(1ヶ所の癒着が空腸10cmの絞扼した)、30ヶ月後のひどい疝痛(剖検なし)、72ヵ月後の事故、92ヶ月後の蹄葉炎とCushing病、であった。

残りの12頭は術後6-108ヶ月は生存しており、中央値は90ヶ月であった。

2頭の繁殖雌馬は手術時に妊娠5・6ヶ月であり、退院から1ヶ月以内に2頭とも流産した。

1頭は以前の活動(レベル4のドレッサージ)には戻らなかった。調教中の軽度の疝痛によるものであった。

                        -

つまるところ、22頭再開腹し、3頭は術中にあきらめ、半年以上生存して”無事”だったのは12頭あまり。

(30ヶ月生きていたら、ひどい疝痛、おそらく癒着でもあったのだろうが、2年以上経っているから例えば繁殖雌馬なら仔馬を産めたかもしれないし、競走馬だって競馬できたかもしれない。)

(72ヶ月後の突発事故を2回の腸管手術と関連付けるのは無意味だろう。92ヶ月後の蹄葉炎による安楽殺も御同様。)

2回目の開腹をしなければならない場合、予後は当然1回ですんなり治った場合より厳しくなるが、必要ならやるしかない。

私の患畜は、繁殖雌馬が多く、たいていは妊娠中だ。

なんとか生き延びてお腹の子だけでも産ませることができれば、そしてできれば育ててくれれば、開腹手術で救命した価値があると考えている。

あとは牧場やオーナー側の判断だ。

よく「腹の子だいじょうぶだろうか?」と訊かれる。

母馬が生きる死ぬなのに腹の子を心配してどうする。やらなければ母子ともに死ぬ。

                     /////////////////

おいで~って呼んで、

すぐに戻って来るなら、

もっと自由に散歩してやれるんだけどね。

 

 

 

 

 

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馬の骨折ではトマススプリント-キャストは・・・・

2017-11-07 | 学問

小型の馬属の四肢の骨折をトマススプリント-キャストで治療した、というリポートが今年のVeterinary Surgeryに載っている。

Modified Thomas splint-cast combination for the management of limb fractures in small equids.

小型の馬類の肢の骨折の治療のための改良されたトマススプリントとキャストの組み合わせ

デンマーク、コペンハーゲン大学からの報告。

要約

目的

改良したトマススプリント-キャスト併用で治療した小型の馬類家畜の肢の骨折の治療と予後について記載すること。

研究のデザイン

回顧的症例群。

動物

畜主所有の馬とロバ。

方法

2001年から2012年までの、肢の骨折と診断され、改良トマススプリントキャスト併用による外固定で治療した動物の詳細を、x線画像を含めた診療記録から調べた。

退院後6ヶ月以降については畜主や獣医師への電話相談から情報を得た。

結果

9頭の馬と、4頭のロバは、脛骨骨幹部骨折(n=4)、尺骨骨折(n=3)、中足骨遠位(n=2)、中手骨近位(n=1)、橈骨骨幹(n=1)、踵骨(n=1)、大腿骨遠位成長板(n=1)の骨折と診断された。

追跡調査は12頭について可能だった。そのうち8頭(67%)は骨折から回復し、放牧できるようになった。

6頭は患肢の明らかな外見上の変形を起こした。

結論

長骨骨折を起こし、運動能力を期待されない小型の馬属の限られた症例は、改良トマススプリント-キャスト併用による外固定で治療できる。

畜主には、この治療が命を助けるだけの手技だと考えられることを説明しておくべきだ。

Veterinary Surgery 2017; 46: 381-388

                              ---

 まずModified Thomas splint-cast だが、特別なものではない。どうもわれわれが普通にトマススプリントと呼んでいるものをModified Thomas splint と考えて良いようだ。

もともとThomas splint は人の大腿骨骨折の治療のために100年以上前に開発された。

それを家畜での使用のために改良したのが、われわれが知っているModified Thomas splint だ。

それにキャストも巻くと、Modified Thomas splint-cast combination ということになる。

                                -

INTRODUCTIONによれば・・・

馬の長骨骨折のほとんどでは、ORIF (Open Reduction and Internal Fixation ; 切開して整復し、内固定すること) が選択されている。

それは、正しく解剖学的な整復を行い、しっかりした固定を行うことで、早期の機能回復を可能にする。

馬の骨折治療の進歩に関わらず、感染、対側肢の蹄葉炎、癒合不全、インプラントの破壊、がいまだに起こる。

経費と結果を見比べて、オーナーの中には手術をこばむ人もいる。

しかし、外固定(副木やキャスト)は馬には単独ではめったに用いられることはない。

適切な骨折整復と不動化をできず、それゆえに、過剰な贅骨形成や骨癒合の遅延、あるいは骨癒合不全のリスクが高まるからである。

さらに、外固定の期間が長くなることで、擦過傷、腱の弛緩、対側肢の蹄葉炎などの併発症につながりやすく、それによって機能回復と本来の飼養目的に戻るのを妨げかねない。

                           -

この症例報告で使用されていたModified Thomas splint はこういうやつ。

径1cmの鋼線を溶接して作られている。

近位の輪状の部分から30°傾けて肢の部分が付けられている。

                           -

この報告では、Thomas splint を着ける前に、骨折を整復するために肢を引張るのに、

内側、外側、背側、掌/底側に粘着テープを貼り付けて引張っている。

良い方法かどうか、やってみたことがないのでわからない。

                           -

ポニーの後肢をModified Thomas splint-cast combination (MTSCC)で外固定したところ。

飛節より遠位は、トマススプリントの後の棒に固定されている。

飛節自体は前と後の棒に固定されていて、腿部は前の棒に固定されている。

                           -

右前肢につけたMTSCC。

キャストは腕節の上までは前と後の棒に固定されていて、腕節より上は後の棒だけに固定されている。

                            -

さて成績は、

5歳 シェトランドポニー 152kg 内側関節面を含めた脛骨遠位の変位していない斜骨折  放牧可能  飛節が固まった。骨性の腫脹

2歳 ロバ     140kg 脛骨骨幹部近位の変位した斜骨折    放牧可能  骨性腫脹、外反、3年後再骨折

1歳 シェトランドポニー  112kg 内側関節を含んだ脛骨遠位骨幹の変位、粉砕骨折   放牧可能   骨性腫脹

0.5歳 ロバ    60kg  脛骨骨幹開放、変位、斜骨折   安楽殺  MTSCC除去2日後中足骨粉砕骨折

20歳 シェトランドポニー 115kg 変位していない尺骨骨折type4  追跡できず

12日齢 QH   65kg  変位していない尺骨骨折type3   放牧可能   競技で騎乗可能

9歳  アラブ   308kg 変位した関節を含めた尺骨骨折type4  安楽殺  腸炎、脇にひどい圧迫創

12歳 シェトランドポニー 157kg 中足骨遠位の粉砕骨折    放牧可能   骨性腫脹

4歳 ロバ   136kg 中足骨遠位の開放粉砕骨折  安楽殺  2週間後傷は治癒、骨感染の所見なし、オーナーの希望で6週間後殺

1歳 シェトランドポニー 100kg 中足骨近位の粉砕骨折  放牧可能  骨性腫脹

10歳 シェトランドポニー 100kg 踵骨骨折、飛節の脱臼・亜脱臼  放牧可能

0.75歳 ロバ  76kg  橈骨骨幹の変位横骨折  放牧可能  骨性腫脹

0.25歳 フリージアン  127kg  大腿骨遠位成長板の変位骨折(SH2)  放牧可能  速歩で跛行

                                -

固定期間は、5週間から20週間。

5週間のは安楽殺症例。次いで短い6週間の症例2頭のうち1頭も6週間で安楽殺。もう1頭の6週間の症例は、変位していない尺骨骨折。これは治療せず温存でも治ったんじゃないか? 

だから、固定期間は、それ以外の症例の8週間から13週間くらい、つまり2ヶ月から3ヶ月と考えた方が良さそうだ。

1頭が20週間(5ヶ月!!)と特別長いが、大腿骨遠位成長板のSH2損傷で変位していた症例。ゴテゴテになって固まったのだろう。跛行が残った。

                                -

それでも、とても良い成績だと思う。

曲がりなりにも、12頭のうち9頭が放牧可能なくらいには回復している。

ロバがとくに成績が良いわけではない。

必要なときには、上手にMTSCCできるように準備をしておきたい。

                                -

考察の末文では、

小型の馬類では(馬類であっても体重が重くないなら?)、経済的な問題で内固定手術や貫通ピンキャストが選択できないなら、MTSCCも選択肢である。

畜主には、この治療が、命を助けるためだけの手技で、放牧が可能になることが期待できる結果であること、を知らせておくべきだ。

とある。

                                -

同じ馬類でも、サラブレッドは

競走馬にしなければならない馬がほとんどだし、

皮膚が薄いので長期のMTSCCに耐えるのは厳しいし、

蹄葉炎になりやすいし、

肢が長くてMTSCCしにくい、

のでトマススプリントキャストには向かない。

逆に個体価格が高いので、治療費をかけられことが多く、競走馬になったり、繁殖供用に問題を残したくないので、内固定手術を選択しやすい。

                                                              ////////

冬に傷めたオラの右飛節。

春と夏にも痛くなった。

でも、今のところ大暴れできる。

トマススプリントは勘弁してもらいたい。

 

 

 

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牛の脛骨骨折の保存的・外科的治療

2016-05-24 | 学問

ついでに牛の脛骨骨折の治療成績の報告をもうひとつ紹介しておく。

Conservative and surgical treatment of tibial fractures in cattle

牛の脛骨骨折の保存的および外科的治療

Veterinary Record (1998) 143,12-16

脛骨骨折した95頭の牛、1頭を除いて片側の骨折を1990年から1994年の間に診察した。

治療の可能性はX線画像で評価し、体重や牛の価値も考慮した。

22頭は淘汰した。

牛房での安静および/あるいはスプリントやキャストによる保存的治療は18症例で行い、うち8頭(44%)で満足のいく結果が得られた。

それらの牛は正常な体重まで肥育されたが、全頭に患肢のひどい変形があった。

55頭では、透視下でスタインマンピンとメチルメタアクリルレート架橋による外固定を行った。

うち10頭は患肢に負重することができず、ピンを抜去する前に淘汰された。

残りの45頭ではピンは平均(偏差)71(14)日で抜去した。

4頭はピン抜去後すぐに患肢を再骨折し、他の6頭は体重負荷が充分でなかったので淘汰された。

35頭で良好な結果であった(64%)。

患肢あるいは対側肢、またはその両方に軽度の変形がしばしば認められた。

脛骨骨折した牛全体での生存率は45%であった。

                          -

調査対象となったのは1日齢から3.5歳齢まで(平均7.3ヶ月齢)の牛であった。

22頭はすぐに処分されている。

それらの牛の平均(偏差)年齢は、13.1(4.7)ヶ月齢であった。

保存的に治療された18頭の平均年齢は、3.5(2.6)ヶ月齢であった。

貫通ピンとメチルメタアクリルレート架橋で治療された55頭の平均年齢は6.5(2.1)ヶ月齢であった。

                          -

考察にはこう書かれている。

「脛骨骨折の保存的治療は通常、満足のいく治癒とはならない。

フルリムキャストは膝関節を不動化できず、脛骨骨折を適切に安定させない。」

「改良したトマススプリントあるいはトマススプリントとキャストの併用によりよりよい治癒が得られる。」

新生子牛以外では、脛骨骨折をキャストで治療するのは非常に難しい。そして、トマススプリントを併用しても、全例で変形癒合に終わっている。

                          -

そして、この病院ではスタインマンピンとメチルメタアクリルレート架橋による外固定を55頭でやっているのだが、成功したのは35頭だけ。

考察でも、この外固定はひどい粉砕骨折や近位骨端あるいは近位骨幹端の骨折には使えず、骨折を正確に整復できず、贅骨形成が強いことを欠点として挙げている。

                          -

だから、私はプレート固定を選択肢として用意しておくべきだと思う。

                       //////////////////

へっへっへ、ここで張り番してたら、オラを置いていけないべ」

狂犬病の予防注射だけど、行くの?

「・・・・・・・・・」

 

 

 

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馬の子宮捻転のその後

2016-04-19 | 学問

開腹して子宮捻転を整復した繁殖雌馬は、その後も不調が続いたが、徐々に回復し、

予定日よりかなり遅れて正常分娩したそうだ。

子宮捻転を診断して、母馬も仔馬も助かることはこの地域ではマレだ。

私の所へ送られてくるときにはたいてい子宮捻転の末期症状で、胎仔は死んでいることが多く、ときには子宮も壊死している。

                        -

今年のEquine Veterinary Journal にオランダでの馬の子宮捻転の回顧的調査成績が載っている。

Mare and foal survival and subsequent fertility of mares treated for uterine torsion

子宮捻転で治療を受けた母馬と仔馬の生存とその後の繁殖成績

Equine Vet J. 48 (2016) 172-175

要約

研究実施の理由: 

子宮捻転の整復後の母馬と仔馬の生存は、今までの調査では、それぞれ60-84%、30-54%と報告されている。

さらに立位での膁部切開による整復により仔馬の生存性は良好だが、母馬についてはそうではないとされてきた。

目的

立位膁部切開の成功率を他の方法(全身麻酔下での正中切開、あるいは膁部切開、径膣整復)と比較すること。

研究のデザイン

臨床記録の回顧的調査。

方法

手技、妊娠日齢、捻転の程度、生存とその後の繁殖成績を、1987-2007年にオランダの3つの馬病院で子宮捻転で治療を受けた189頭について分析した。

結果

診断された平均妊娠日齢は283日(範囲153-369日)で、子宮捻転の大半(77.5%)は妊娠320日以前に起きていた。

子宮捻転の整復後、90.5%の母馬と、82.3%の仔馬が生存して退院し、分娩した。入院期間は3-39日間であった。

多変量解析では、整復方法と妊娠日齢が子宮捻転後の仔馬と母馬の生存に影響していることが示唆された。

立位膁部切開後の仔馬の生存は88.7%で、他の方法では35.0%であった(P=0.001)。

妊娠320日未満で子宮捻転が起こると、生存した子馬は90.6%であり、320日以上では56.1%であった(P=0.007)。

母馬の生存では、妊娠日齢と整復方法の間に相互関係があり(P=0.02)、妊娠320日未満では、立位膁部切開後はより高く(97.1%)、他の方法では低かった(50.0%)(P<0.01)。

妊娠320日以降に起こったときには、母馬の生存は手技による差はなかった(76.0 vs 68.8%; P=0.6)。

再交配された123頭のうち、93.5%は妊娠した; 繁殖成績は立位膁部切開で治療された母馬(93.9%)と、他の手技(87.5%; P=0.9)で差が無かった。

結論

妊娠320日を越えている場合を除いて、併発症(例えば、消化管病変の存在)がない馬の子宮捻転の整復では、立位膁部切開が選択すべき外科手技である。

                               ---

ずいぶん、立位膁部切開にこだわった調査になっている。

それというのも、169頭は立位膁部切開で整復され、分娩中だった10頭は経膣で整復され、全身麻酔下での正中切開での整復は5頭、全身麻酔下での膁部切開での整復が2頭、

1頭は保存的に治療され(子宮捻転は自然に整復された)、残る2頭は整復されずに安楽殺された。

これだけ立位膁部切開ばかりやっていたのでは、手技による結果を比較するには無理があると私は思う。

だいたいサラブレッドでは立位膁部切開による子宮捻転整復なんてできそうにないし;笑

                                -

この報告にある馬の種類は、

Dutch warmblood (111, 59.7%), Friesian (27, 14.5%), Arabian (12), Welsh pony (7), draught horse (6), Hflinger (3), Fjord horse (3), 残り17頭はその他13種の馬だった、となっている。

サラブレッドは1頭もいないか、あるいは含まれていても2頭以下だったようだ。

こんなに様々な種類の馬が繁殖されている点でオランダの馬産を羨ましくも思う。

3つの馬病院での症例の寄せ集めとは言え、20年間に189頭も子宮捻転を診療していることは感心する。

どうも、ここに示された種類の馬は子宮捻転を起こすことが多いのではないだろうか。

日高で毎年4500頭以上が生産されてきて、この調査成績ほど多くの率で子宮捻転を起こしているとは思えない。

                                -

この調査成績では、妊娠320日未満での発生が77.5%、320日以降が22.9%ということになっている。

妊娠中の馬の疝痛の診断では、子宮捻転を頭において、必ず直腸検査して子宮広間膜の捻れや緊張をチェックすべきだ。

子宮捻転による疝痛はひどく痛いわけではない。

子宮が変色したり、ひどく水腫を起こしたり、胎盤が機能しなくなったり、胎仔が死んでしまったりする前に運んでくれれば、母仔ともに助けられる可能性が大いにある。

                            //////////////

モクレンの苗木を植えた。

 

 

 

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非競走馬の第一指骨・趾骨不完全骨折

2016-01-22 | 学問

以前に障害飛越競技馬の第一指骨骨折の症例について書いたことがある。

乗馬は、競走馬に比べて骨折事故は少ないが、第一指骨・趾骨は折れてしまうことがある。

障害飛越からの着地や、狭い馬場での回転運動が要因になるのだろう。

そして、X線撮影では見つけにくい不完全骨折が前駆病変としてあり、無理をしてとひどい骨折へと悪化しているというパターンもありうる。

Veterinary Surgery 44 (2015) 809-815

Radiographic and Computed Tomographic Configuration of Incomplete Proximal Fractures of the Proximal Phalanx in Horses Not Used for Racing

競走に使われない馬の基節骨の近位部不完全骨折のx線画像とCT上の形態

この文献の、知見のひとつ。

第一指骨(前肢基節骨)の近位部の不完全骨折は、第一趾骨(後肢基節骨)のそれより明らかに背側によっていた(上図)。

後肢第一趾骨の近位不完全骨折の横断面CT像。

骨折線は底側皮質を貫いており、骨の底側に軽度の骨膜反応がある。

染色体様に2重になった骨折パターンは、軟骨下骨の軽度の硬化に囲まれた近くの骨に囲まれている。

                             -

海外ではCTの臨床応用が進んでいて、x線撮影では診断しにくい不完全骨折が診断できるようになっている。

正中の縦骨折でもどの位置にスクリューを入れるべきかの根拠になる。

第一指骨・趾骨はいろいろな折れ方・割れ方をするので、骨折「線」を正しく把握しておきたい。

CTがなくても、CTにより蓄積されたデータを知っておくことは、スクリューの位置の指針になる。

                             -

那須での2月8日は第一指骨の縦骨折の実習もしてもらおうと準備している。

日本の乗馬でも指骨・趾骨骨折が診断され、手術して治るようになるために、乗馬の獣医さんにも参加してもらいたい。

                          //////////////

年末に骨折して、年が明けてゆっくりしてから帰されてきたらしい競走馬。

中足骨外顆の骨折だったが、スクリュー2本で締めたら骨折線は圧迫できた。

中手骨外顆骨折をスクリュー1or2本で内固定するなら、静脈麻酔で、あるいは立位でできるんじゃないかとも思うが、

それは全身麻酔下での充分な経験があっての話かもしれない。

そして、キャストを巻いて、安全に立たさなければならない。

思えば遠くまで来てしまったのかもしれない・・・・・・と遠い目;笑

 

 

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