馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

麻布大学で「馬の消化器疾患」の講義

2022-06-23 | How to 馬医者修行

20日仕事を終えて千歳空港へ向かい、9時の飛行機で羽田へ。

うとうとしながら羽田へ着いたら眠たい。

私はいつもはもう寝ている時間だ。

羽田空港内のホテルで熟睡。

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羽田から京急で横浜へ。京急蒲田で乗り換え、おまけに鈍行だったので遅い。

横浜でJRに乗り換えて、東神奈川戻り戻り、乗り換えは新横浜だっけ?八王子行きに乗り換えて、これも鈍行。

結局、羽田から2時間以上かかって麻布大学へ。

大学のHPには羽田から75分ということになってるんだけど;笑

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講義の対象は5年生。

まだローテーションは始まっていないそうだ。

北海道のNOSAI獣医師は、酪農学園大の卒業生が一番多く、二番目は麻布大学の卒業生が多い。

獣医科大学が大動物臨床の教育に力を入れてくれれば、関東圏の獣医科学生たちだって北海道の大動物診療に興味をもってくれるのだろう。

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小動物志向で入学している学生が多いのだろうから、小動物の話も交えながら馬の診療の話をした。

Dukeの写真は効果があったように思う。

ゴールデン可愛いですね、と言ってくれた学生もいたから。 

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学生さんたちが寝ないし、スマホもいじらないで話を聴いているのには驚いた。

私の話がそんなに面白いはずはない;笑

馬の臨床に興味がある学生など1割もいないだろう。

約1000人が毎年獣医師になるが、そのうち大動物臨床へ進むのは1割、馬は10人くらいだろうから1%ほどなのだ。

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それでも、日本にも少なからず馬が居て、生産地の馬の臨床も継続し進歩していかなければならない。

獣医師の供給源は獣医科大学しかない。

出かけて行って講義をして、馬の臨床に興味を持ってもらわないと続いてさえいけないのだ。

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3時の飛行機で帰ってきた。

昼食を食べる暇はなかったが、夜は家で食べられた。

24時間以内で行って帰ってこれるんだから、近いもんだ。

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今日は、

披裂軟骨炎の2歳の披裂軟骨切除。

喉嚢真菌症の子馬の再検査。

午後、繋靭帯炎のトリミング手術。

顔面陥没骨折が治った子馬のプレート抜去手術。

 

 

 

 


ヒロくんとぼく

2022-06-18 | 図書室

病院の待合室に置いてあって読んだ。

おがわじゅりさんの、少年と馬の別れを描いた絵本。

とても優しい絵で、悲しいが温かいストーリーになっている。

少年ときずなで結ばれた乗馬。

しかし、肢を傷めて安楽殺されるしかなかった。

落ちこむ少年。

でも、新しい馬とまた乗馬を楽しむことを「ぼく」は願っているよ。

というお話。

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「白い人」が出てくる。

治せなくて、安楽殺する獣医さん。

残念。

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きのうは

3歳馬の跛行診断からスタート。

High 4 block が効いて、繋靭帯近位付着部傷害が疑われた。

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途中から並行して繁殖雌馬の蹄葉炎の深屈腱切断術。

この青草の季節。

体重オーヴァー、糖質過剰、だと馬は蹄葉炎になりかねない。

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これに並行して、肢軸異常のscrew抜去。

これは立位で。

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午後、私は血液検査業務。

43検体。

ほとんどが、「ロド」「肺炎」「発熱」「ロドチェック」

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手術室では喉頭方麻痺のTieback&cordectomy。

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私は、血液検査を終えて、子牛の剖検。

腹腔内膿瘍から、癒着による消化管閉塞を起こしていた。

これではどうしようもない。

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そのあと、1ヶ月齢の子馬の球節内反の矯正手術 single screw 。

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やれやれ、繁殖シーズンも終わったようだ。

 

 

 

 


夜、でっかい犬が笑う

2022-06-14 | 図書室

 

この作者の本は、むかし何冊か読んだように思う。

エッセイは毒舌と現代批判に満ちていてなかなか面白かった。

一般に思われている「作家」のようにはなりたくない小説家といった印象。

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犬の飼い主としてはろくでもない。

理想の犬、を求めながら、次々と大型犬を飼い、理想ではないと難癖をつけ、死なせてしまったり、人に譲ってしまったり。

夫婦そろってそのようだからあきれる。

時代が違っているのを差し引いても。

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理想の犬と言いながら、どうも犬の本来の性質や姿を好きになれなかったのだろうと思う。

ラブを飼って、明るすぎる、陽気すぎる、はしゃぎすぎる、と文句を言う。

アフガンハウンドを買って、毛の手入れがたいへん、走るのが速すぎる、体力がありすぎる、言うことをきかない、と気に入らない。

ジャーマン・シェパードに執着していたようだが、シェパードの中の犬的な部分が許せなかったようだ。 

そして、自分でも飼い主としてろくでもなかったことを認めている。

          ー

この作者なりに理想の犬を求めて、次から次へと大型犬を飼替える。

それでも知人に犬を飼うことを勧めたりもしているので、犬と暮らす喜びを感じてはいたのだろう。

その相手も「知人」でしかない。

「こんなやつ」という悪口雑言の対象になっているから。

ただ、その中にうなづける部分があるからエッセイとして面白いのだろう。

平成の御世にはすでに許されなかった女性蔑視表現もひどい。

「女の腐ったようなやつ」は、今はすっかり聞かなくなった。

そして、男とはどうあるべきか、という話も。

今はタブーなんだろう。

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夜、大型犬たちが夢の中で笑うのだそうだ。

それも無邪気に、楽しそうに。

この作家は自分のこだわりで、犬たちと楽しく遊びまわるのを自分に許せなかったのかもしれない。

それでも、飼いついで来た犬たちがあたえてくれた喜びを実は感じていたんじゃないか?

夜、でっかい犬たちが夢の中で笑うのだそうだ。

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午前中、3歳の喉頭方麻痺 Tieback&cordectomy。

午後、今週わたしは検査担当。

手術室では腕節の関節鏡手術。

そのあと、黒毛子牛の腹腔内膿瘍の術創ヘルニア?の診察。

つづいて、1歳馬の飛節の細菌性関節炎疑い。

全身麻酔で関節洗浄。

しかし、関節液の白血球数は80/μlだった。

 

 

 

 


疝痛の季節 part 3 結腸捻転

2022-06-11 | 急性腹症

子馬の疝痛が来る前に、繁殖牝馬の疝痛の依頼。

15分前に疝痛を見つけたが、暴れて手がつけられない、とのこと。

来るのに1時間あまりかかる牧場。

間に合うかな、と思いながら、「来て」と回答する。

            ー

午後10時過ぎ、来院したら馬運車の中で倒れていたらしいが、なんとか立ち上がって倒馬室へ入れることができた。

倒馬室で倒れてしまうが、それでも暴れる。

鎮静剤・鎮痛剤を投与。

血液検査だけはしておきたい。

PCV53%、乳酸値5.0mmol/l。

結腸捻転だろう。

すぐに開腹する。

             ー

実は、2年前に結腸捻転で開腹手術している馬だった。

再発防止のためにcolopexyしてある。

しかし、

colopexyしていた痕はあるものの、結腸は腹壁にはまったく固定されていなかった。

サク癖するし、直腸検査するといつも気脹している、という繁殖牝馬。

繰り返す負担で剥がれてしまったのだろう。

             ー

結腸全体の色調はひどくはない。

切開した骨盤曲の粘膜は暗黒赤色だがアズキ色でもある。

結腸動脈周囲の色調は赤い。

結腸全体の浮腫性の肥厚は強く、漿膜は短い線維に覆われている。

でも結腸の生存性は大丈夫だろう。

今度は6ヶ所、colopexyする。

             ー

この繁殖牝馬が立ち上がって入院厩舎へ行ったのは午前1時40分。

2日遅れの誕生日partyだった。

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植えて5年 になるかな。

プンゲンス・ホプシー。

色がゴジラみたいで気に入っている。

新芽はワックス分をかぶって白っぽい。

1年に1回しか新芽が出ないので、その分、10センチか10センチくらいしか高さも枝も伸びない。

 

 


疝痛の季節 part 2 子馬の小結腸閉塞

2022-06-09 | 急性腹症

繁殖雌馬の空腸腸間膜ヘルニアの手術が終わって、あらためて来院することになった子馬50日齢。

来院したら立ってはいられる。

腹囲膨満。

PCV30%。

以前に、両飛節の関節炎、前眼房への凝固物の析出、肺炎疑い、があった子馬。

超音波で観ると、小腸内容はあるが完全に膨満した部分はない。

大腸はガスばかり。大腸壁は厚くない。

つまり、小腸捻転とも、大結腸捻転とも思えない。

          ー

できれば開腹手術したくない。特に子馬は。

それも夜中には。

朝から便がほとんど出ていない。

浣腸して、様子を観てもらうことにした。

          ー

そして、翌朝、連絡したら、やはり便は出ておらず、まだ痛い、とのこと。

開腹手術するつもりがあるならもう開けた方が良いだろう。

開腹したら、

予想通り小結腸の閉塞だった。

ひどくはない疝痛。

血液検査所見も悪くない。

しかし、腹囲膨満は強い。

小結腸や直腸、すなわち消化管の最後の部分での単純閉塞の症状と経過だった。

子馬だから詰まっているのは母馬の便なのだろう、と思っていたが、

詰まっていたのは、粘土様の塊だった。

消毒用に馬房に撒いた消石灰かも、という話だったが、

pHは6.0、弱酸性。

消石灰ならアルカリ性になるはずだ・・・

何だ??

           ー

私は寝不足で頭が働かない。

そう、この子馬の来院のあと、さらに疝痛馬が来たのだ。

not to be continued

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6月になって気温が低い。

今日は久しぶりに日差しが暖かかった。