仔馬が鼻先や肢を直腸に突っ込み、そのまま生まれてしまうと、肛門括約筋まで切れて、第3度会陰裂傷と呼ばれる状態になる(左)。
直腸と膣がつながった状態で、膣からうんこをすることになる。
牛でも第3度会陰裂傷が起こるようで、昔、数頭手術したことがある。
しかし、牛は子宮頚管がしっかり閉じる構造になっているので、そのままでも子宮内膜炎も起こさず、妊娠可能なのかもしれない。
馬は、とくに発情期には子宮頚管が緩むので、第3度会陰裂傷のままだと受胎させて妊娠維持させるのは無理だろう。
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第3度会陰裂傷の縫合方法はいろいろな方法が報告されている。
直腸膣瘻の手術も考え方は同じで、直腸は糞汁が漏れないようにしっかり縫う。
膣壁は力に耐えられるようにしっかり縫う。
そして、直腸壁と膣壁のあいだに距離ができるように、しっかり左右を張り合わせる。
ただ、第3度会陰裂傷の場合は肛門括約筋も切れてしまっているので、これも一度に再建しようとすると相当しっかり縫い合わせないと難しい。
また、直腸と膣はきれいに中央で切れているわけではないので、左右対称になりにくく、へんな引きつれもできやすい。
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癒合させるコツは、
・手術前後の絶食と下剤投与を確実にして、術創が直腸便により破壊されないように すること。
・直腸と膣の切り分けをしっかりして、直腸壁と膣壁のあいだに距離を作ること。
だと考えている。
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絶食と下剤投与は必ず必要。馬の直腸便はすごい太さで出てくる。糸で縫ってある直腸にあのテンションが一度でもかかったらひとたまりもない。
絶食していて馬が可愛そうになって食べさせたり、「もういいかな?」で下剤をかけないで便が固くなると、癒合せずに、結局また傷が落ち着いてから絶食・下剤投与・手術を繰り返すはめになる。
馬のためにも1回で治してやりたいのだ。
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その後、副鼻腔の蓄膿症かと思ったら・・・篩骨血腫の診断・治療。
午後は血液検査。
そして、月末の事務仕事。
明日から東京だ。