掌側/底側の皮質だけが割れるunicortical condylar fracture 単一皮質顆骨折。
顆骨折の中でどれくらいあるのか?
7%ほどはあるのではないか、というデータが次の文献に示されている。
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Frequency distributions of 174 fractures of the distal condyles of the third metacarpal and metatarsal bones in 167 Thoroughbred racehorses (1999-2009)
B.D.Jacklin and I.M.Wright
Equine Veterinary Journal 44 (2012) 707-713
167頭のサラブレッド競走馬の第三中手骨と中足骨の遠位顆の174の骨折の頻度分布(1999-2009)
あのNewmarket Equine Hospital のWright 先生たちの報告。
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12の骨折(6.9%)は単一皮質骨折であった。
と、Resultsに書かれている。
6例は辺縁が尖鋭で急性の骨折だと見え、6例は辺縁が明瞭ではなく、骨折周囲に骨吸収があり、長期の病変であるか、軟骨下の病変の進行の期間のあとに起こったと見えた。
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Newmarket Equine Hospital もこの調査期間(もう10年以上前だ)には、この単一皮質顆骨折を見逃さないように完全な検査をしていたわけではないようだ。
そのことが、Discussion に書かれている。
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ほとんどの症例で、骨折は背掌/底方向X線画像撮影で判別された。あるいはわずかな追加撮影で。
しかし、急性例でのように、掌/底側の軟骨下骨の”単一皮質”骨折は通常、ルーティンの背掌/底像では描出されない。
屈曲位での35°近位背-掌/底側35°遠位-背側近位方向撮影も、この調査では行われた。
これは、Pilsworthらによって記述された撮影方向の変更である。
この方法では、中手骨/中足骨は垂直で、下肢の関節は屈曲させて保持され、X線束は水平である。
著者の意見では、この撮影方向は、中手骨/中足骨の顆の軟骨下骨を評価するのに優れている。
その画像では顆の関節面移行部を、近位種子骨の底部で、かつ基節骨の掌/底側突起の間に描出できる。
しかし、この撮影方向においても、掌/底側の軟骨下骨の潜在病変がわずかであると、これらの単一皮質骨折はしばしば7-10日はX線画像上は現れず、ときには2-4週間も判明しない。
単一皮質骨折に代表されるような見逃しは今回の調査のわずかな部分にすぎない。しかし、これは警告として解釈されるべきである。なぜなら、それは調査においてはおこりがちなことであるからである。
単一皮質骨折の多くはX線画像には現れず(少なくとも最初のステージでは)、保存的に管理される。
さらなる診断のために上診されることは少ない。
臨床において起こっている単一皮質顆骨折の比率を低く評価していることが起こりうるのである。
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Newmarket Equine Hospital のIan Wright先生たちでさえ、完全な顆のX線撮影はできていなかった、という苦しいDiscussionだ。
1988年におなじNewmarketで掌/底側を描出するための、屈曲打ち上げ撮影が報告されているが、1999-2009年のNewmarket Equine Hospital もそれはルーティンではやっていなかった。
この一番右のやつ。
だから、掌/底側の単一皮質顆骨折を見逃し、過少評価しているだろう、ということ。
そして、にもかかわらず、174例の顆骨折のうち12例(6.9%)は掌/底側の単一皮質骨折だった。
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日本では、そんな率では見つかっていない。
私たちは中手骨あるいは中足骨の顆の単一皮質骨折をかなり見逃しているだろうし、
調教馬、競走馬の球節の病変・損傷を正しく評価できていない、のではないかと思う。
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北海道にも控えめな夏が来ている。
わずかに暑さを感じるようになり、強い日差しを楽しめる。
牧場は牧草作業で忙しい。
毎日、1頭ずつ開腹手術馬がやって来る。
日中来ることもあるが、昼間に来ないと夜に来る。
こいつは川で夕涼み。