馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

朝も昼も疝痛開腹で遠方からの歯の治療も

2021-08-28 | 歯科・口腔外科

学会の動画ファイルの作成の締め切りが押し迫っている朝、また疝痛の依頼。

繁殖雌馬がひどく痛がっている、とのこと。

来院したらPCV55%、馬運車の中で立てない。

馬主さんに連絡の上、手術することになった。

結腸捻転だった。

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終わって、予定していた重種馬の歯の診察と治療。2頭。

遠路、道東から来られた。

軽種馬用の開口器がはめられるか心配したが、なんとか大丈夫だった。

斜歯がひどい。

臼歯が割れたのか欠損している部分もあった。

もともと臼歯の並びも良くなかったようだ。

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2頭目はひどい過長歯あった。

106・206を叩いてへし折り、電動歯鑢でこすり落とした。

311・411は難しいがなんとかバールを当てて叩き折ることができた。

前所長が現所長の手をハンマーで叩きましたけど;笑

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その後、当歳馬の疝痛の依頼。

小腸閉塞のようだ、とのこと。

来院して鎮静したら鼻から胃液が出始めた。

胃カテーテル stomack tube を入れたらガスが抜けたが、胃内容はほとんど固形のようだった。

開腹したら空腸重積だった。

引き抜いて、傷んだ空腸を切除して吻合した。

空腸上部には大きな回腸がいるのが手触りでわかった。

回虫寄生で蠕動がおかしくなり、空腸が空腸を飲み込んだのだ。

もうイベルメクチンだけで子馬を駆虫していては危険、とこのブログで何度も書いているし、地元で講演もしたんだけど、なかなか普及しないね。

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手術室から運び出すとき、子馬を吊り下げたら鼻から胃液が流れ出た。

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胃カテいれよう! 胃破裂しちまうぞ!

と思う私はおかしいですか?

 

 

 


1歳馬の回腸閉塞

2021-08-26 | 急性腹症

早朝、オンライン学会のための発表ファイルを録画・録音していた。

事務所が無人の時間でないと雑音が入るし、集中できるから。

が、「はらいた」来ました。と、呼ばれる。

「・・・・・・では、はらいたが来たようです。このへんで」、と発表を閉めたらうけるかも;笑

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1歳馬が前夜からの疝痛。

前夜はひどく痛くはなかったが、今朝はかなり痛い。

しかし、PCVは30台。乳酸値は高い。

回盲部の重積だろう、と予測して開腹する。

手を入れて、膨満した小腸に邪魔されながら盲腸を探り当て、

背側紐をたどって回腸を触ると、

回盲部も重積はしておらず、回腸内に乾いた内容が詰まっている。

じゃりじゃり。砂だ。

できたら切開したくない。

もみほぐして、空腸の方へ移動させ、空腸に溜まった液状内容と混ぜ合わせ、それを回盲部を通過させられないか推送してみる。

なかなか通過しなかったが、何度かやっているうちに通過した。

空腸下部は液状内容で膨満しているので、それもすべて盲腸へ推しこむ。

盲腸は液で膨満した。

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コンサイナーに預けられている馬で、馬房の掃除の間に砂のパドックに出されていたらしい。

そこで、砂混じりの草というか、草についた砂を食べてしまったのだろう。

「砂疝」は春先に診ることがあるが、こんな青草豊富な盛夏に診た記憶はない。

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何かが消化管に詰まるのをimpaction と表現する。

便秘もimpaction と呼ばれることがあるのだが、日本語では本来の食べ物が詰まるのが便秘だろう。

異物閉塞までを便秘とは呼ばない。

だから、今回のは回腸閉塞であって回腸便秘と呼ぶのはおかしいと思う。

なんでも食べたらだめだよ

経験者・談


コロナの影響

2021-08-26 | 麻酔学

馬の麻酔薬がいよいよ手に入らなくなった。

人工呼吸器につないだコロナ患者に使うので在庫がないらしい。

動物用も手に入らない。

製造ラインは共用なんだろうか。あるいは、原料がないのか。

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麻酔に使う睡眠誘導剤も手に入らなくなった。

やはりコロナ医療に使われるかららしい。

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手術用の手袋もかんたんに破れるのが納品された。

苦情を言ったら、どうやら原料が手に入りにくくなり品質を落としているらしい。

コロナ禍で、衛生用品、医療消耗品が大量に消費されているからだそうだ。

こちらは手術用ではない手袋。同じ製品のサイズちがいなのだが、明らかに色が違う。

黄色が濃いのは伸縮性が劣る。

しかたがない、コロナのせいだ。

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きのう午後に来たのはブルトンの種雄馬。

包皮に数ヶ月前から腫瘍らしき塊ができた。

種付けにも影響する。

立位でできるかと考えていたらしいが、ぶら下がった塊だけでなく、包皮内にも塊状の増殖がある。

全身麻酔して摘出・切除することになった。

高齢ではないが、肥満で、運動不足で、サラブレッドより心臓や肺は小さい。

そして使いたい麻酔薬はない。

覚醒は問題なかったが・・・・・


結腸捻転つづき

2021-08-22 | 急性腹症

土曜日の夕方、帰ってきて・・・

昼は3時ころに補給するように食べたので、さして空腹でもない。

軽く夕食をとったら・・・相棒がかまってくれ、と遠吠えしている。

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昼間、繁殖雌馬の疝痛の依頼。

来院したら立っていられないほど痛い。

血液検査では、PCVは46%。しかし、乳酸値6.6mmol/l。

家畜共済非加入だが、開腹しなければならないだろう。手術希望。

結腸捻転だった。

捻じれ方はひどくて、結腸全体を引張り出せない。

中途半端な引き出し方で結腸を切開して内容を捨てたが、結腸基部・右背側結腸に内容が残っていて捻転を整復するのにも手間取った。

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前夜も、午後10時に繁殖雌馬の疝痛の依頼。

痛がりかたはひどくないが、結腸壁が「むくんでいる」との連絡だった。

来院したら、痛くて立っていられなかった。

PCV41%、乳酸値2.3mmol/l。

超音波検査している余裕もなく、開腹。

結腸捻転だった。

結腸の色調も良くなかったし、切開した骨盤曲部の粘膜はかなり傷んでいた。

午前零時半に手術は終わって、1時間経っても馬は立ち上がれなかった。

それでもなんとか起きて、入院厩舎へ入ったのが午前2時。

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朝には馬の活力もあって、血液検査所見も悪くなかった。

水も飲んだし、食欲もあった。

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そんなこんなだから・・・・・・・相棒の相手をしてやる元気はない。

さっさと寝る。

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休みの日。作っていたのは・・・・

2×4の杉板に金具を取り付けて、

覚醒室外の物掛け、でした。

こんなことをしている暇があるなら、オンライン学会の準備をしなければいけないのだけど;笑

 

 

 

 

 


8月というのに忙しい

2021-08-18 | 急性腹症

早朝、17歳の繁殖雌馬の疝痛の依頼。

来院したらPCV40%、身をよじるほど痛い。

結腸捻転だろうと思いながら開腹したら網嚢孔ヘルニアだった。

空腸を引き抜くのに苦労した。

結腸を創外へ出したら網嚢孔へ入り込んだ空腸を引き出すことができた。

結腸が肝臓や空腸に乗っかっているより抵抗が減ったのだろう。

しかし、小腸の2/3ほどが損傷してしまっている。

あきらめた。

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午前中は、12歳繁殖雌馬の側頭骨舌骨関節症の角舌骨摘出手術。

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午後、私は血液検査業務。

そのあいだに去勢。

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当歳馬の臍ヘルニア。

倒馬室で。

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覚醒室で1歳馬のclub foot の深屈腱支持靭帯切断術。

すっかり狭窄蹄になり、跛行をするようになっていた1歳馬。

そうなったら外科的介入をしないと跛行を治すのも無理だろう。

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繁殖雌馬の疝痛が来院。19歳。

2ヶ月ほど前に結腸捻転の手術をした繁殖雌馬で、結腸固定colopexyを引きちぎって再発していた。

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手術が終わる頃、当歳馬の疝痛も来院。

胃拡張があり、十二指腸も腫れている。

胃十二指腸潰瘍か?

胃カテーテルを入れたらガスが抜けた。出血したような胃液も少し。

オメプラール; プロトンポンプ・インヒビターを注射し、帰って様子を観てもらうことにした。

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疝痛rushはまだ続いている。

馬は夏バテだったり、食いすぎだったりしている。

考えて飼養管理を!

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91歳のじいちゃん。

孫のひとりよりはスコア上回りました;笑