馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

診療実績2021 外傷 そして、Qatar2022 Wcup

2022-11-23 | How to 馬医者修行

2021診療実績。

外傷縫合は、全静脈麻酔TIVAで6頭。意外に少ない。

その他の静脈麻酔で9頭。

無麻酔で35頭。

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これには、強力な鎮静剤が使えるようになったこと。

神経ブロックの技術が良くなったこと。で、立位で縫合できるようになったおかげかもしれない。

部位や程度が悪い外傷は縫合しても癒合しないので、癒合させるのをあきらめながら処置している症例もある。

逆に、完璧にデブリドして、丁寧に縫合すれば一期癒合が期待できるなら吸入麻酔してでも処置すべきかもしれない。

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2019年にくらべて、2021年の外傷縫合の症例は、2/3ほど。

たまたまか、

あるいは、往診に回っている獣医師の都合に左右されているのかもしれない。

7割が立位での処置だからね。

ただ、wounds management は馬医者の必須かつ重要技術だと思っている。

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Qatar 2022 World Cup が始まっちまった。

季節はずれのせいか、

歳のせいか、

日本代表のサッカーの質や代表選手のせいか、

あんまり個人的には盛り上がりはなかったのだが、始まってしまったら無関心ではいられない。

脚が痙攣し、数万人が見守る中で立ち上がることさえできずに倒れこむ。

一生後悔が残るほどの失敗に頭を抱える。

その姿に自分を問う。

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ウクライナの戦争は厳寒へ向かう中で続いているし、

イランでは反政府デモが続いていて、イラン代表は国家を歌わなかった。

Qatar開催で開催されたこと自体にも大きな批判と抵抗があるようだ。

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九州旅行の最終日、かつて「漢委奴国王」と刻まれた金印が見つかったという半島の先端を訪れた。

福岡の向こうは、大陸であり、朝鮮、そして中国なんだな、と実感した。

石碑があった。

訳文だけ張っておく。

 

 

          

 

 


診療実績2021 去勢 そして、「銀の匙」

2022-11-19 | 図書室

診療実績2021 去勢は76頭。

これもかつてより倍増した。

近年は、ケタミン・プロポフォールで全身麻酔して、追注することはあっても点滴麻酔はせずに済ませている。

手術手技は、ほとんどすべてが捻転式。

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健康手帳を必ず持ってきてください。

去勢証明を書き込み、去勢証明書を添付します。

去勢馬なのに、牡馬として競馬に出ていた、などという不祥事が起きているらしい。

うちは、もう20年以上前から、必ず健康手帳に去勢証明を書き込み、去勢証明書を2通添付している。

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玉(精巣)が二つあることを確認してから去勢の依頼をしてください。

まれに陰睾(隠睾)の馬がいます。

本当の腹腔陰睾だと、吸入麻酔して、手を腹腔へ入れる必要があります。

手術前の絶食も厳格にする必要があります。

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一般の去勢でも、半日~1日の絶食が望ましいでしょう。

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蹄鉄は外せるなら外してきてください。

着けておきたいなら、それでも構いませんが、ちょっとした手間がかかります。

去勢後は、多くの馬で、翌日から引き運動やマシン運動が可能です。

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今朝は出勤したら結腸捻転の手術中。

重症ではなかった。

私は、きのうの夕方、5回目のコロナワクチン接種を受けた。

BA4-5の二価ワクチンだそうだ。

昼ごろ、かなり倦怠感。夕方悪寒。

夕方36.8℃。この程度で治まりそうだ。

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新冠温泉の回数券を買った。

ら、期限付きだった;笑

がんばって入りにいかないと無駄になってしまう。

新冠温泉のロビーは、しゃれた図書館のようになっている。

「銀の匙」が置いてあったので、読んでみた。

帯広(大蝦夷)農業高校が舞台になっている。

主人公の二人は、隣の畜産大学へ進学する。

私の後輩になるわけだ;笑

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身近に感じられてとても面白かった。

北海道の農業・畜産の現実も楽しく紹介されていた。

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主人公は、肉にするために動物を飼うことに葛藤する。

しかし、手塩にかけた豚肉のうまさに驚きもする。

学生企業して、放牧豚の生産を始めたりもする。

それが、畜産というものだろう。

たとえば去勢だって、長い年月の中で人が動物を利用するために考案してきた技術なのだ。

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最終巻、主人公はロシアの大地での畜産に夢をかける。

・・・・・現実だったらどうなっていただろう。

事業を放棄して帰国しなければいけなくなっていたか・・・・・

 

 


診療実績2021 プレート固定、そして子牛の脛骨近位骨幹端粉砕骨折T-LCP固定

2022-11-15 | 牛、ウシ、丑

2021年度はプレート固定を13頭

プレート抜去手術は7頭を吸入麻酔で。

プロポフォール持続点滴麻酔で顔面骨骨折プレート抜去を1頭。

無麻酔、立位で尺骨骨折プレート抜去を1頭と、第三中足骨骨折プレート抜去を1頭、顔面骨骨折プレート抜去を5頭、下顎骨骨折プレート抜去を1頭。

牛のプレート固定が、橈骨1、中手骨1、TPC1。

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家畜高度医療センターでは、プレートを使って骨折を治療するのも、珍しい手術ではなくなっている。

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先週の日曜日、新生子牛が脛骨近位を粉砕骨折している、との連絡。

「必ず治せるとは言わないけど、治せる可能性は大いにあります。

給付外料金がかかりますけど、どうしますか?」

飼い主さんは、以前にも骨折した子牛を手術して治してもらった経験者だそうで、「やってください」とのこと。

確かに粉砕骨折だ。

近位側にプレートスクリューを入れる長さがないのが問題のひとつ。

骨端にもスクリューを入れて、成長板をまたぐプレート固定をするしかない。

しかし、ふつうのプレートでは骨端部にもスクリューは1本しか入らない。

脛骨近位骨幹端は割れてしまっていてスクリューが効かない可能性もある。

T-LCPを使えば、骨端に3本スクリューを入れられる。

LHSが効けば、体重を支えてくれる。

しかし、骨端の良い位置へ良い角度でスクリューを入れるのはなかなか難しい。

LCPはプレートの位置と角度が決まってしまうと、LHSの角度も決まってしまう。

近位骨端に1本LHSを入れることができた。

骨折の遠位部にはLHSが2本入っている。

47kgの大きな黒毛子牛だが、充分に体重を支えてくれるだろう。

骨折肢は、少し外反し、内向してしまった。

粉砕骨折なので、骨折部をぴったり合わせて完全な整復をすることはできなかった。

外反していることは悪くはない。

プレート固定が内側の成長を抑えるので、成長に伴ってこの肢は内反するだろうから。

新生子牛なので、骨癒合は速いかもしれない。しかし、粉砕骨折なので、骨癒合は遅れるかもしれない。

プレートは抜かなければならないが、6-8週間後だろう。

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新生子牛の骨折で問題なのは、赤ちゃんの重傷なので、他のダメージやリスクを抱えていることだ。

初乳製剤を飲ませて手術に連れてきてもらったが、低IgGかもしれないし、低蛋白血症かもしれない。

他の部位にも打撲や骨折があるかもしれない。

肺炎、下痢、臍帯炎、が多い日齢でもある。

母牛は、もう何産もしているのだが、興奮してしまって子牛を育てられるような状態ではない、とのこと。

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手術後、骨折肢の後膝は完全には屈曲しなかった。

関節近くにT-LCPを入れて、周りの筋膜をひっぱって傷を閉じなければならなかったせいだろう。

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子牛は5日目に立てるようになったそうだ。

最初は三肢歩様だったが、徐々に骨折肢も着けるようになったとのこと。

9日齢には他の子牛の元気と差がないそうだ。

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これは麒麟。

だめだな~ こんな直飛(まっすぐな飛節のつくり)じゃあ

繋が短くて、立ちすぎている。

尻の筋肉が乏しくて、腹ボテじゃん。

こちらは鷽(ウソ)。

 

 

 

 

 

 

 


診療実績2021 難産

2022-11-14 | 繁殖学・産科学

2021年帝王切開は4頭。多い年ではなかったようだ。

静脈維持麻酔による難産整復は13頭。

さして多いようには感じない数字かもしれないが、ほとんどが3月4月に集中し、夜中の重労働だ。

時間もかかる。

ワンショット麻酔による難産は2頭。

合わせて15頭が全身麻酔しての難産介助ということになる。

立位・枠場保定での難産介助・失位整復が16頭。

枠場が使えるおかげで「出せる」ということはある。

しかし、難産介助の途中で輸送時間を挟むのは、母馬にとっても、子馬にとっても良いことではない。

運ばれてくるような難産は、子馬は死んでいるか、腕節や球節が伸びないのが多いが・・・・

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総計35頭が帝王切開・難産介助・失位整復の件数。

            ー

私は獣医師になって38年。

馬の二次診療にたずさわって37年。

ひどい馬の難産をいちばん診てきたのだろう。

正解のない、とても難しい選択が必要な診療だと思う。

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きのう、日曜日は、前日に依頼された当歳馬の喉嚢真菌症。

2ヶ月前から頭をかしげ、左耳の位置が低かったらしい。

10日前にわずかに鼻出血した。

前日、大量に鼻出血し、喉嚢内視鏡検査をしたら大量の血餅と真菌病巣が左喉嚢にあった。

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来院して口粘膜を見たら貧血気味。

心拍66.

頭の傾きはわからないが、左耳が低い。動いてはいる。

右喉嚢から内視鏡検査したら、茎状舌骨の上側がやや太い。

左喉嚢は血餅がいっぱいで観察不十分だが、真菌病巣が内頚動脈部にあるのが確認できた。

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全身麻酔して、左の内頚動脈結紮とマイクロコイル栓塞術を行った。

この当歳馬、左耳の中が赤い粘液で汚れていた。

喉嚢(耳管憩室)から内耳、中耳を経て汚れがあふれてきたのだろうか?

喉嚢炎でも、側頭骨舌骨関節症でも、そんなことになった症例は診たことがないが・・・・

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血液検査、抗生剤治療、抗真菌剤治療、を提案しておいた。

重症だ。

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全国の天満宮で奉られている菅原道真公は、牛にも縁があったらしい。

蒔絵で牛車を引いているのは、黒毛和牛だよね。

肥育して食べたりはしなかったのだろうけど;笑

 

 

 

 

 


診療実績2021 喉頭形成術ほか

2022-11-12 | 呼吸器外科

2021年度は、喉頭片麻痺の喉頭形成手術(Tieback) 48頭

披裂軟骨切除(Arytenoidectomy) 2頭

これらは吸入麻酔で。

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ほかの「喉なり」の手術は、

プロポのTIVA(全静脈麻酔)でVCC声帯虚脱の声帯切除 1頭

ワンショット麻酔で声帯切除と披裂喉頭蓋ヒダ切除 5頭

声嚢声帯切除 1頭

無麻酔で、つまり立位でLaserで披裂喉頭蓋ヒダ切除 4頭

EE(喉頭蓋捕捉) 5頭

DDSP(軟口蓋背側変位) 11頭

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DDSPのTie forward はやらなかったんだな。

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からし蓮根を食べて、高速道路で福岡へ向かった。

途中、佐賀県をかすめたらしいのが嬉しかった。

私にとって未踏の県だったからね。

大宰府はにぎわっていた。

さすが学問の神様だ。若い人も多かった。

参道にはスウィーツもいっぱい。

これは紫芋のモンブラン。

ソフトクリームの上に乗せるのを実演してくれる。

賞味期間5分!