馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

子宮体背側の穿孔

2016-04-29 | 繁殖学・産科学

前日の朝に分娩した繁殖雌馬が、元気食欲不振、発熱で診察を受け、超音波で腹部を観たら腹水増量しているとのこと。

朝に来院し、腹膜炎を超音波と腹腔穿刺で確認した。

直腸検査して子宮を触ると痛がる。しかし、孔はわからない。

陰部からも手を入れて膣と子宮を触診したが、後産停滞しているせいもあり、穿孔はわからない。

結腸捻転の馬が開腹手術中だったので、昼間で待ってもらって開腹手術した。

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子宮体背側の穿孔だった。

右が尾側。後産が裂孔から見えている。

子宮体背側の穿孔は普通は開腹手術では縫えない。

乳房の前まで切開しても、そこまで子宮を引張り出して、背側を露出させられないのだ。

しかし、この馬は分娩から27時間ほどだったので、なんとか開腹手術創から縫合できた。

膣から手探りで縫合するより、細かく正確に縫えるし、二層縫合できる。

漿膜が裂けている部分から、筋層、粘膜などが外反して出てきているので縫合には苦労した。

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縫合して閉じることさえできれば、あとは腹腔を洗浄し、ドレインを留置して閉腹するだけ。

手術前、PCV56%、腹水の白血球数5万超だったが、翌日には平熱だった。

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ミステリーやサスペンス小説は読まないようにしているのだが・・・・

アウトロー [Blu-ray]
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BSでトム・クルーズ主演の「アウトロー」をやっていたので、たまたま録画して観た。

「ミッションインポッシブル」より好みだな。

ロザムンド・パイクも良かった。

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リー・チャイルドという作家の、退役軍人ジャック・リーチャーが活躍するシリーズ。

主人公の造形にチョット魅かれて、原作シリーズの第一作も読んでみた。

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なかなかよろしい;笑

かなり暴力的だし、御都合主義の部分は多いけれど、時間つぶしにはとても良かった。

夜中に手術すると、家に帰ってフトンに入ってもすぐには眠つけない。

そんなときは静かな音楽なんか聴いてもダメだ。

ジャック・リーチャーはなかなかよろしい;笑

 


卵巣腫瘍・・顆粒膜細胞腫

2016-04-28 | 繁殖学・産科学

卵巣腫瘍である顆粒膜細胞腫の治療については以前にも何度か書いている

ずっと以前は膁部(けん部)切開で行っていたが、術後に傷が開き易いとか、痛みが強いとか、大きな卵巣は出しにくいとか、問題が多かった。

ここ10年以上は膝ヒダの内側あたりを開腹していて、それが良いと考えている。

まあ、あまりにデカイと苦労する。

引っ張り出すのも以前は悪戦苦闘していたが、最近はためらわずに鉗子を刺して、指を突っ込むことにしている。

その前に針を刺して内部の液を吸引して小さくすることを試すこともあるが、「蜂の巣状」なのでたいして小さくならないことが多い。

術創から出たら、あとは念入りに結紮止血して切除するだけ。

ハンドボール、バレーボール、サロンフットボール・・・さて近い大きさはどれでしょう??

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オラなら空中キャッチもできるゾ

 

 

 


千客万来

2016-04-27 | 急性腹症

夜、9時ちょうどに難産の依頼。

と思ったら、1分後に繁殖雌馬の疝痛の依頼。

どちらが先に来るか、難産はどの部屋で処置して、疝痛はどの部屋で診察するか・・考えながら準備する。

難産は来たら途中で生まれましたなどということは絶対ない。しかし、疝痛は来たら治まっているということもある。

とりあえず職員獣医師2名+研修獣医師1名+現場からの獣医師で対応できるだろう。

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難産はすぐ全身麻酔した。

破水からすでに1時間以上経っている。仔馬が生きているならできるだけ無理なく早く出した方が良い。

両前腕節の屈曲だったらしいが、片方はすでに整復されていて、残りの片方を整復して・・・あとは引張るだけ。

腕節も球節も屈曲変形がある仔馬だったが、程度はひどくないのでなんとかなるかもしれない。

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その間に、疝痛馬を枠場へ入れるが、痛みで立っていられない。

倒馬室は難産で使っているので、診療棟の反対側の倒馬室で全身麻酔を始めることにする。

しかし、そちらへ入れたらなんとなく落ち着いたかもしれない、と言うので、また診察室の枠場へ入れる。

超音波で体表から診たら・・・肥厚した結腸らしき腸管が観えた。

疝痛は鎮静剤と鎮痛剤で一時的に抑えられているだけ。

開腹手術することにした。

もう一人の当番獣医師を呼ぶ。

かなりひどい結腸捻転だった。

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手術が終わって、午前0時20分。

たいていは1時間ほどで立ち上がるが、この馬はなかなか立てなかった。

ひどい痛みで、発汗し、苦悶する時間は、体にかなりのダメージを与えるのだろう。

もちろん結腸もかなり傷んでいた。

ようやく立ち上がったのが午前2時頃。

それからもしばらく歩けるようにならなかった。

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3時にはフトンに入って眠ったと思ったら、5時7分に起こされた。

別な牧場の繁殖雌馬が疝痛とのこと。

近くの牧場なので急いで準備する。

夜中の手術の後なので、手術台も麻酔器も輸液も用意していない。

洗濯器の前は洗濯モノが溜まっている。

来院したら、「前日からの疝痛で、ひどくはない」とのこと。

しかし・・・・やはり超音波検査でひどく肥厚した結腸らしき腸管を確認できた。

右肋部で肝臓の横に結腸動脈。180°あるいは180+360°捻れている。

右内股部では小腸の膨満も見えた。

開腹したら、結腸便秘のあげくの結腸捻転だった。

「仔馬が調子が悪く、しばらく放牧できなかった」とのこと。

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午前中に予定していた3関節を処置しなければならない「大」手術は延期してもらう。

この4月は暇だ;笑

延期するにしても、「再来週にしてください」、なんてことはないから。

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裏山のコブシの樹を観にいった。

まだ満開じゃないな。

 

 


ハミで切った舌の縫い方

2016-04-25 | その他外科

きのうは、

当歳馬の肢軸異常のスクリュー抜去。

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急患で、舌と飛節の裂傷。

縫合前。

ほとんどちぎれかけてる。でも腹側にある血管は大丈夫そうだ。

縫合後。

筋肉の塊である舌は、しっかり深いところで縫うことが大切。

近影。

ヨダレや食べ物が染みこまないように細かく留めることも大切。

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続いて、colopexy創の化膿の処置。

全身麻酔した。

プロポフォールは覚醒が良いので、全身麻酔のリスクを減らしてくれる。

非吸収糸で縫ってあるので、抜糸した。これで化膿は治まるはず。

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午後、当歳馬の肢軸異常の診察。

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今日は好い天気だった。

オラは日陰で寝てた。


子宮穿孔による腹膜炎の外科治療

2016-04-21 | 繁殖学・産科学

今日は、

当歳馬の臍ヘルニア。

準急患で初産4日後の腹膜炎。子宮角の穿孔だった。

開腹手術して、子宮穿孔創を閉じ、腹腔洗浄して、ドレイン留置した。

午後は、

1歳馬の肩跛行のX線撮影。異常所見なし。

当歳馬の角膜炎。真菌性かどうかの診断。

黒毛和種の子宮捻転。分娩予定日までまだ1ヵ月半ある。

開腹手術して、子宮を押して捻転を整復した。胎仔は生存していたので、帝王切開せず。

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手術後、熱も下がり、水も飲み、食欲も出て、尿もしている。

乳は仔馬が満腹になるほどは出ていない。

初産にしては落ち着いた賢いお母さんだ。

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今日は、とても暖かだった。

ウグイスの声を今年初めて聴いた。

えへへ~

とうちゃん、いい季節になったな~

青草の新芽はオラも食べるゾ