馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

関節鏡手術納め

2018-12-30 | 日常

29日。

今年最後の関節鏡手術。

当歳馬の飛節OCDなので急がないが、やってしまおう。

年明けも、来年は本格始動は7日からになる。いろいろ混み合うだろうから。

正月休み中も、急患はあるだろう。

でも、関節鏡手術は緊急ということはないだろうから、”関節鏡”手術納めだ。

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この12月は診療室の床や、

倒馬室・覚醒室の床と壁を修理したし、

 

診療が途切れなかったせいもあって大掃除がほとんどできなかった。

北海道で厳寒期に大掃除をするのは無理もあるのだが、

1年このときしか掃除しないような箇所は清掃しておきたいのだけど。

たとえばエアコンや暖房のファンとか、ふつうの掃除では手の届かない天井近くとか、ホイストのレールの上とか、etc.

いつか、暖かくなったら大掃除日を設定するか・・・・

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なにわともあれ、年の暮れも押し詰まった。

皆さん、良いお年を。

 

 


颶風の王

2018-12-27 | 図書室

文庫本になって本屋に並んでいたので・・・

颶風の王 (角川文庫)
河崎 秋子
KADOKAWA

颶風とは強く激しい風のことだそうだ。

雪崩に馬と埋められて、互いの血をすすり毛をかじり、肉をくらって生き延びた母。

気のふれた母を置いて、北海道に渡った息子。

祖父に馬の扱いを教えられたその孫娘。

孫娘は、孤島に置き去りになった馬を気にする老女となり、その孫娘は・・・

なんと”十勝”畜産大学の学生になっている。

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東北から北海道へ続く、人と馬との生活の歴史。

かつてはいくつもあちこちにあったのだろうと思う。

馬という人ともっとも密接に生きてきた動物への思いと歴史を感じさせてくれる小説。

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最後のパートは、ユルリ島の馬がモデルになっているのだろう。

オヨバヌトコロ に居る馬達も、維持されるようだ

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ひどく風が強い。

これから年末年始にかけて冷え込んで荒れるらしい。

ふるさとへ家族連れで帰るひとも多いだろう。

ひどいことになりませんように。祈ってる。

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先日、肩甲骨骨折を内固定したLCPを抜きに来た当歳馬。

四肢の蹄の蹄冠近くはへこんで段差がついていた。

折れた肢だけではなく、対側肢も、後肢もなので、運動しなくなったこと、痛みのストレスによるものなのだろう。

吸入麻酔中、眼が開いているので、角膜は乾燥してでこぼこ。

しかし、凹むのではなく膨らんでる。

上瞼が動かなくなると、こうして乾燥性角膜炎が起こるのだ。

THO(舌骨側頭骨関節症)の馬を診たときには注意しなければならない。

(麻酔中は、ひどくならないように点眼している)

この馬、涙を流している。

身動きできない深さで吸入麻酔されている。

痛くて、あるいはおびえて泣いているわけではない。

下瞼は涙を溜める作用をしている。

涙を鼻涙管へ汲み出す作用についても馬眼科学の成書に記載がある。

麻酔と横臥させていることで、涙を鼻涙管へ流す機能が働かず涙があふれているのだ。

通常は、この鼻側の鼻涙管開口部へ涙は抜ける。

この当歳馬はもう300kg弱ある。

前回内固定手術の後は覚醒起立に苦労したこともあって、今度は前躯に吊起帯を着けた。

この吊起帯の着け方は、私が以前からさんざん考えた方法。

先日来日されたMadigan先生たちがLoopになったロープを使う方法を紹介してくれたことが背中を押してくれた。

 

 


ボヘミアン・ラプソディー

2018-12-24 | 日常

とてもヒットしている、と聞いても、ただの音楽映画、サクセスストーリーかなと思って観に行かなかったと思う。

若い獣医さんが3回観ました。泣きました。と、言っていたので。

私たち世代は、現役のロックバンドとしてクイーンが好きだったという人も多いのだろう。

クイーンの曲は、CMやBGMや、それから挿入歌としてもよく使われていて、聞きおぼえのあるパートも多い。

しかし、それとは別に、フレディ・マーキュリーとして生きて死んだ一人の”パキボーイ”の生き方と苦悩に涙した。

生きることはたいへんだ。しかし、素晴らしい。たとえ短くても。苦悩に満ちていても、だ。

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今日は、肩甲骨骨折のLCP抜去。

歩きはとても良い。

馬もかなり大きくなった。

しかし、肩甲軟骨あたりにプレートが飛び出ている。

肩甲骨がいくつかのピースに割れていたのだ。

よく治った。

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網嚢孔ヘルニアの腸管手術のあと、Post Operative Ileus が続いていた繁殖雌馬はあきらめた。

Mama・・・・・just killed the horse・・・・・・

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午後は、2歳競走馬の腕節骨折の関節鏡手術。

つづいて、1歳馬の傍直腸膿瘍の切開手術。

 

 

 


有馬!

2018-12-23 | 競馬

手術しているのでなければ、重賞レースくらい観たいと思っている。

珍しく今日は家で観てた。

オジュウチョウサンは、これまでを知ってうちの奥さんが応援している。

レイデオロは、そのキャップを私はかぶっているのだし(ジャンバーは息子が気に入って持って行った;笑)。

キセキだって応援したい。

そして・・・・

ブラストワンピース、おめでとう!

大竹正博先生、おめでとう!!

やったね!

 

 

 

 

 


忙しくて

2018-12-23 | How to 馬医者修行

先日、若い獣医さんたちとの懇親会で、

「仕事が忙しくて、こなすのがたいへんで、仕事が楽しくない」

と聞いた。

ただの愚痴ではないし、頑張ってるんだなと思った。

疲れてもいるのだろうから、普通にアドバイスするなら、

「休みの日に温泉でも行って、リラックスして心と体を休めたら良いよ」

となるのだろうが・・・・・

そんなアドバイスは私らしくないので;笑

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仕事は追われるのではなく、追いかけるものだ。

鬼ごっこのようなもので、逃げるとより追われるようになる。

逃げようとすると仕事はつまらなくなる。

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自分のことで手一杯の時は人のことを手伝ってやると問題解決できることがあるよ。

嘘みたいな話だし、どうしてそうなるのか論理的には説明できないけど。

私は修士論文の作成で煮詰まっているときに、ほかの人の修論を手伝ったら自分の論文作成が進んで驚いた。

そんなもんだ。

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仕事が忙しい、たいへんだ、そいうときは休まないで働くのも方法だ。

休日を自主返上して仕事してはかどるとすっごい気持ちいいよ。

収入のためにだけ働いているなら仕事がつまらなくて当たり前。

能動的に働いてこそ仕事は楽しくなる。

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当たり前のことだけしていては褒めてはもらえない。

最低限のことだけしていては、最低限の評価しかもらえない。

人に褒めてもらえるのは喜びになるし、自分で自分を褒めたいなら、そうできるような仕事の仕方をすることだ。

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仕事を離れてリラックスしても、仕事に戻ればすぐまた元通りだ。

仕事を離れるなら、仕事に役立つことを他所へ観に行ってみると良い。

自分のホームグラウンドの仕事を新しい目で観ることができるようになる。

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サッカーで攻撃している側は走れるものだ。能動的に動いているからだ。

攻められ続けると走れなくなる。受身で走らされるからだ。

能動的に、自主的に動くことで、楽しくなるよ。

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今は、サッカー選手も、走った距離、パスを出した回数、パスの成功率、もちろんシュート本数、アシスト数など数値化されて評価される。

野球選手は以前からだ。打率、本塁打数、出塁率、得点圏打率、盗塁数、進塁打数、etc.

でも、そんな数値の評価じゃなくて、自分のことは自分がいちばんよく知ってわかっている。

自分に甘くなるのが人間だけど、自分を客観してみると良い。

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説教くさかったらごめんなさいよ。

勤めるなり、「7月まで休みはないよ。」と言われた時代に、

そんなことは知った上で望んで就職した者が、振り返って思うことだ。

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人もうらやむ才能をもちながら、多くを台無しにした男が語ったこと。

清原和博 告白
清原 和博
文藝春秋

あまりに純粋で、幼かったのかもしれない。

試合の勝ち負けがかかっていない打席ではどうしても集中できなかった。それでタイトルを何一つ取れなかった。

そんなところを多くの人は愛したのかもしれない。

私も江川や桑田なんかよりずっと清原の方が好きだ。