朝、1歳馬の飛節OCDの関節鏡手術。
午後は、繁殖雌馬の歯の治療の予定が入っているだけだった。
まあ、繁殖シーズンだ。
そう穏やかに済むとは思っていなかった。
子宮穿孔疑いの繁殖雌馬の依頼。
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さらに新生子馬の鼠径ヘルニアの連絡。
疝痛症状があるという。
それじゃあ連れてきてもらうしかない。そして、子宮穿孔・腹膜炎は午後にずらしてもらう。
鼠径ヘルニアの子馬は、たぶん、開腹手術になる。
悪ければ腸管手術になる。
来たら、鼠径部がかなり腫れている。
こりゃダメだ。すぐ手術だ。
こんなに腫れているということは、陰嚢の総鞘膜が破れているのだ。
腹腔と連続している総鞘膜の中へと脱出した腸管を戻すことはできない。
手術するにしても開腹手術もして、腸管を引っ張り込まないととても腸管を鼠径から押し込むなんてできないだろう。
去勢もしなければならない。
そして、反対側も鼠径が広いなら去勢して鼠径輪を閉じてしまった方が良い。
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それが終わって・・・・・
午後1時からは繁殖雌馬の歯の治療の予定が入っていたが、黒毛和種牛の難産も帝王切開して欲しい、との依頼。
仕方がないので、二手に分かれて対応することにする。
私は、牛の帝王切開を担当することにした。
それが一番速いだろう。
ところが、来院した二産目の黒毛和種は興奮していて診療室へ入れられそうにない。
「こんな牛、立位で帝王切開できない」
「寝ちゃっても仕方がないから鎮静剤打とう」
鎮静剤投与したら落ち着いて、帝王切開を始められた。
しかし、すぐ伏臥してしまった。
そのまま帝王切開を続けて子牛を引っ張り出して、子宮を縫い閉じて、腹壁を縫って・・・・
皮下織は開業の若い先生に縫ってもらった。
私は追いかけるように皮膚を閉じた。
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なんとこの牛、開業の先生が鎮静剤の拮抗剤を投与したら立ち上がって興奮して、飼主さんを振り切って逃げ出してしまった。
飼主さんと獣医師3名で追いかけたが、捕まえられない。
逃げ回ったあげく、500mほど離れた砂利置き場へ逃げ込んだ。
そこで飼主さんが捕まえて、土木資材につなぎ、トラックをとって来た。
トラックに引っ張り込もうとしたが、牛は入らない。
私が後ろから追おうとしたら、私めがけて突進してきて、飼主さんが離してしまった。
走る牛のロープを私がつかんだが、とても止められない。
牛は今度は診療所の敷地へ戻った。
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忙しい日で、馬運車は4台停まり、畜主たちも居た。
「牛の方へ行かないで~!! 襲ってくるよ! 飼主以外が行くと牛逃げちゃうから~!!」
また飼主さんが牛を捕まえた。
たまたまトラクタ-が入っていた建物のそばだったので、シャッターを開けてトラクターの後ろへ繋いだ。
もう、牛の鼻環は壊れ、頭絡も切れかけている。
こんな牛が鼻環もなく、頭絡も無くなったら、どうしようもない。
国道まで逃げていったら人身事故になりかねない。
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牛をトラクターで引っ張り、なんとかトラックの後ろまで連れて来た。
しかし、牛はトラックには乗らない。
首に荷揚げ用のロープを掛け、さらにもう一本かけて左右に引っ張って固定した。
そうやっておけば鎮静剤をうちに近づける。
それでやっと牛をトラックに引きずり込めた。
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その間に、歯の治療は終わって、子宮穿孔・腹膜炎の手術が始まっていた。
子宮を閉じ、腹腔内を洗浄し、覚醒室へ運び出した。
新生子馬の胎便停滞疑いが来たので、私は別室で対応。
X線検査で胃も、小腸も、大腸も膨満している。
超音波で消化管がガスで膨満している。
潤滑剤で浣腸するが、浣腸液があまり入っていかない。
内視鏡を入れてみたが、20cmほど先から入っていかない。
・・・・・造影剤を入れて再度X線撮影したら、造影剤も行き止まり。
腸管の形成不全の可能性が高い。しかし、100%の確定診断ではない。
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あちらの覚醒室で大きな音がしたので走って観に行った。
子宮穿孔の馬が覚醒起立しようとして、左の腕節を脱臼してしまっていた。
これでは予後不良だ。
それでも暴れて立とうとするのを抑えて、安楽殺した。
残念だが、それ以外どうしようもない。
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新生子馬もとりあえず牧場へ帰ってもらうことにした。
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夜、寝ついたところを起こされた。
分娩5日目の繁殖雌馬の疝痛だと言う。
PCV57%。
きのうも疝痛、次の日も疝痛しフルニキシンを投与し、さらに再発したのでフルニキシンを再投与し、そして今度は手がつけられないほど痛くなった。
来院したが、痛くて検査もできなかった。
これは、ダメかな、と思いながら開腹したが、なんとかなりそうだ。
結腸を引っ張り出し、骨盤曲を切開して内容をできる限り捨て、捻転を整復し、元へ戻して、colopexyして、閉腹した。
片付けて、入院馬房に輸液を吊り、カルテを書いて・・・・帰って寝る。
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と、フトンに入ったらスマホが鳴った。
今度は難産だという。
両前肢の腕節が屈曲している失位。
それなら、全身麻酔して後肢吊上げすれば整復できる、だろう、と思って始めた。
が、産道がひどく狭く、とても整復できそうにない、という。
帝王切開するつもりもありますか? と尋ねたら、必要なら、との回答。
帝王切開する。
1人で執刀したのでたいへんだった。
1日に牛と馬の帝王切開をするなんて。
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終わって朝5時前。
私は帰って寝た。
いつもはもう起きている時間だが、眠れた。
ところが、さらに具合の悪い新生子馬が来た、とのこと。
鼠径ヘルニアの子馬は調子良さそうだ。
結腸捻転の繁殖も食欲があり、昼から制限給餌を始め、夕方には帰っていった。
帝王切開した馬は、オキシトシンの点滴と羊膜の血管への注水で胎盤を落とし、退院した。
long long hard Sunday
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冬の寒さがなくなり
すっかりあたたかくなった
そして・・・・繁殖シーズン真っ只中だ。