年末、前日難産で生まれた黒毛子牛が中手骨を開放骨折している、との連絡。
あいにく疝痛馬が来るのを待っているタイミングだった。
ざっと様子を聞いて、応急処置をしてもらって、翌日午前中に診療することにする。
手術しても治せるかどうかわからない、それでもやってみるかどうか畜主に確認しておいてもらう。
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開放骨折は、その程度によってグレーディングされる。
Gastiloの分類として有名。
・ 汚染の程度がひどくなければプレート固定もできるだろう。
しかし、感染部に異物(インプラント;プレートとスクリュー)を入れることになり、インプランを除去するまで感染を抑え込みにくい。
感染がプレート沿いに波及し、スクリューがゆるみ、プレート固定が崩壊するとか、
骨折部の感染が制御できなかったり、成長板や関節へ感染が及ぶと予後が懸念される。
・ 開放骨折部から離れた部位に貫通ピンを入れて、創外固定することもできる。
ただ、これはこれで皮膚を貫いているピンが感染しやすい。固定に安定性がない。これらが欠点。
・ 創外固定としてではなく、骨折部より近位に貫通ピンを入れ、貫通ピンキャスト(TPC; Trancevers Pin Cast )を巻いて免重する方法もある。
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周囲の毛を刈り、傷の汚染を洗浄し、骨折を整復し、包帯とバンデージを巻いて、副木を当てて外固定されて子牛は運ばれてきた。
応急処置としては完璧。
もちろん抗菌薬の全身投与も始められている。
開放骨折としてはGastilo分類のⅡだろう。
1cmより大きい穿孔だが、汚染はひどくない。
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骨折は中手骨骨幹遠位の横骨折。
破片はあるが、粉砕というほど大きなピースはない。
切開して傷を広げ、傷の中を洗浄した。
開放骨折ではあるが、キャストで治る可能性大、と判断した。
ストッキネットを二重に履かせ、キャストトップと腕節にエバウールシートを巻き、
キャストライト4と3でフルリムキャストを巻いた。
皮膚の傷の部分には当て物をしながら巻いて、開窓キャストにしてある。
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翌日、子牛は自力で立ってミルクを飲んだそうだ。
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昼、繁殖雌馬の疝痛の依頼。
開腹したら回腸の閉塞だった。
絞められていた痕があったが、どうなっていたかはわからない。
疝痛の常習馬というわけではないので、癒着があったり、ヘルニア孔があったりする可能性は低い。
分娩まであと3.5ヶ月の馬で腹腔内の完全探査をするには開腹手術創を広げなければならない。
膨満している部分の小腸内容を盲腸へ送り込んで閉腹。
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午後に予定していた「あがり馬」の第一趾骨骨折を夕方から。
これは延期するわけにはいかない。
thankfully ; 恩賜 透視装置も使ってscrew固定とキャスト固定。
危ない状態だった。
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翌日は、前所長と現所長で大掃除。
日頃掃除しないところを掃除したい。
壁を塗りなおしたペンキ屋も見えないところは見事に放っておくんだな;笑
むこう、拭き掃除後、こちらこれから。
暖房ファンのフィルターも掃除しないと・・・・これを通った空気の下で診療しているんだから。
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私はこれにて仕事納め。
コロナ禍が続き、しかしワクチンで安心と希望が見え、
ウィズコロナで少しずつ活動が再開され、
日本は状況が落ち着いたかと思ったら、オミクロン株がたちまち世界に広がった今年。
良くも悪くも大晦日。
みなさん、良い歳をお迎えください。