アメリカ獣医師会雑誌JAVMA 2021,258, 8, 865-869 にUSの獣医科大学を2020年に卒業した者の、雇用、初年度年収、教育のための借金、を男女別の分析が載っている。
Employment, starting salaries, and educational indebtedness analyzed by gender for year-2020 graduates of US veterinary medical colleges
Bridgette Bain, PhD
アメリカ獣医師会が調査した。3,243名の卒業生にアンケートを送り、2,874名(88.6%)から回答を得た。
回答した学生の、493(17.2%)は男性で、2,381(82.8%)は女性だった。
回答者がすべての質問に答えたわけではない。
30ある獣医科大学からの卒業生の進路は、
個人開業が、男性266(65.5%) 女性1,332(64.9%)
( )内は男性、女性の中でのうちわけ。
馬はなんと、男性4(1.0%) 女性26(1.3%)
小動物が男性も女性も50%以上を占めているのにあまりに少ない。
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公共と協同の団体、 男性12(3.0%) 女性70(3.4%)
進学が、 男性128(31.5%) 女性651(31.7%)
つまり、USの新卒獣医師は、約半数が小動物臨床へ行く。
男性の8%ほど、女性の2%ほどはFoood animal へ行く。
馬は、男性女性とも1%ほど。
残りの30%あまりはインターンシップ、レジデンシー(専門医過程)、へ進学する。PhDやMaster(修士課程)へ行く者も居るが少数。
馬の臨床では獣医科大学を出ただけでは使い物にならず、さらなる教育が必要なのかもしれない。
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USAでも獣医学科の卒業生は、男:女比は17:83。
Food animal practice へ進む率は男性の方が多い。
Mixed animal へは女性も9.2%進むのだけれど、Food animal 専業へ進む率がとても少ないのをみると、
Mixed animal practice の中でcompanion animal を担当するのだろう。
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これは初年度の収入。
Food animal臨床へ進んだ男性獣医師が85,000~89,000ドル。
Food animal臨床へ進んだ女性獣医師が79,000~87,500ドル。
Companion animal臨床へ進んだ男性獣医師が92,000~98,000ドル。
Companion animal臨床へ進んだ女性獣医師が93,000~96,000ドル。
馬臨床は、男性75,000ドル、女性56,000ドル。
これは何だ?
USAは1ドル100円計算でもかなり年収が高い。
Food animal 臨床は、Companion animal 臨床より(初年度の)年収が低い。
男女差はどの進路でも明確にある。
(下の方にあるのだが、さらに進学した場合はインターンシップでもレジデンシーでも男女差はほとんどない。
あるいはどういうわけか女性の方が少し高い。)
馬臨床、は問題外;笑
初年度年収は、他の臨床分野に比べてとても低い。
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USAは豊かな国だ。しかし、とても厳しい国でもある。
需要と供給の原理で経済が動くし、保護や法規制には慎重だ。
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そして、USAの新卒獣医師の借金。
男女とも中央値は150,000~200,000ドルだろう。
つまり1500万~2000万ほどの教育ローンを抱えて社会に出ている。
これもとても厳しい。
一生懸命に働いて稼がないと返せない。
年収にもこだわらなければならないだろう。
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こんなことで良いのか?と思わされるような調査結果だ。
調査さえ行われていない日本よりはるかにましか・・・・・
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ニリンソウ。
二輪ずつ咲く。