その育成牛は11ヶ月齢。
ロープで繋いでいたら暴れたらしく、右前肢を負重できなくなった。
X線撮影で橈骨骨折が判明して相談された。
手術する気があるなら、副木を当てて運ぶよう指示した。
「考えさせてくれとか、明日とか言うならやめておいた方が良い。開放骨折になるし、整復できなくなる可能性大。」
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コンパネに乗せられて、キシラジンを投与されてトラクターで運ばれてきた。
そのまま倒馬室へ引きずり込んだ。
気管挿管して、手術台で仰臥にして、プロポフォールとキシラジンの点滴で麻酔維持。
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橈側手根伸筋上を橈骨の全長にわたって切皮した。
橈側手根伸筋の外側をできるだけ鈍性に剥がして、橈骨に到る。
整復はなかなかたいへんだったが、なんとかなった。
橈骨の頭側へ橈骨の全長に近いブロードDCPを当てる。
しかし、近位と遠位にある成長板をまたぐ内固定はしたくない。
できれば、プレートは抜かないで済ませたい。
11穴DCPを使うことにした。
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頭側から観て骨折線が斜めに見える斜骨折なので、頭側のDCPを通すプレートスクリューは骨折線を圧迫するラグスクリューにはできない。
橈側手根伸筋を外側にずらせて、今度は内側に10穴のブロードDCPを当てることにする。
DCPは骨にできるだけ完璧に沿わせることが大切。contour.
double plate fixation には特有の注意が必要だ。
2枚のプレートへのスクリューが互い違いになるような位置に2枚を置かなければならない。
2枚のプレートはお互いに90°の関係になるように置く。
2枚のプレートの端が同じ位置で始まったり終わったりしないようにしたい。
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と言っても、プレートは湾曲させているのだし、先のプレートへのスクリューの間を通すようにドリリングするのは難しい。
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で、こういうことになった。
斜骨折を圧迫するラグスクリューを、内側のDCPのプレートスクリューとして少なくとも2本しっかり決めたかった。
骨折部近くで、スクリューを入れられない穴が4つもできてしまった。
2枚とももう少し近位でも良かった。
近位骨幹部骨折なので、近位部に1本でも多くしっかり効いたスクリューを入れたい。
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日曜日の夜8時に手術終了。
それから結腸捻転の手術をすることになったのだった。
立てないまま運び込まれたこの牛は、歩いて帰っていった。
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爽やかな季節を楽しむには・・・忙しすぎる。