馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

第一趾骨翼の骨片骨折

2007-04-30 | 関節鏡手術

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矢頭に骨片が飛んでしまった育成馬。

球節が腫れて、X線撮影して骨片が見つかった。

このままでも調教、競走できないほどの跛行にはならないだろう。

しかし、強い調教、競走をするたびに球節が腫れ、ときには跛行するようになる可能性がある。

激しい負担がかかる球節の骨片で、種子骨靭帯に引っ張られてちぎれた骨片だからだ。

この骨片は関節鏡手術でとってしまうことができる。

しかし、球節の掌側、足底側に関節鏡を入れるのは近位側から入れるので、種子骨頂部の骨片より、種子骨底部の骨片が難しいし、種子骨の骨片より、第一指骨、第一趾骨の骨片が難しい。

P1wingchippostope P1wingchippostope2

こういう風に、水平方向での斜め、近位遠位での斜めに撮ると指骨、趾骨の翼の骨片を描出しやすい。

ただ、関節鏡手術の適応かどうかは、関節面の骨片かどうかが問題になるので、手術適否の判断のためには、完全に真横からのX線写真も必要になる。

関節鏡で見た関節内の写真は・・・・・・・

撮り忘れた。

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Photo_231 メイショウサムソン!

おめでとう!

3200mはサラブレッドの運動能力の本当のすごさを見せてくれる。

そして3km競争しての鼻の差。それも抜かれて、抜き返して。

良いレースだった。


馬の死因

2007-04-27 | 疫学

 日高の馬の死亡、淘汰理由をご存知か?

第一位 骨折

第二位 腸捻転

第三位 分娩事故

これに死亡事故ではないが、若い馬の腰痿が加わって四大死亡・廃用原因となっている。

(家畜共済の死亡・廃用データによるので、保険加入前の新生児死、子馬の病気は除く)

Practitioner 臨床家、実践者としては、これらの数の多い病気・事故を何とかしなければならない。

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 私が骨折の治療にこだわり、腸管手術に執着し、分娩事故の診断・治療に拘泥する理由がここにある。

って言うか、必要に駆られるだけなんですけど。

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P4270345 きのうは寒さが戻り、霰(あられ)も降った。P4270346

朝は、山が白くなっていた。

放牧地はかなり緑になって来たのだが・・・・

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明日から「ごーるでんうぃーく」。

日高へ来て間もない頃、先輩獣医師に「世間ではゴールデンウィークだと言ってますよ」と言ったら、

「あれはかたぎの世界の話だ」と言い返された。

俺達は何なんだ?

 


Tyzzer's Disease 

2007-04-26 | 新生児学・小児科

P4160029 子馬が突然具合が悪くなり、あるいは死んで見つかることがある。

口などの可視粘膜を見ると、貧血と黄疸がある。

これは、劇症の新生児溶血性黄疸だと判断しがちだが・・・・・・

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(次の写真は子馬の解剖の写真です。ご覧になりたくない方はクリックしないで下さい。18歳未満、心臓の悪い方、血圧の高い方はご注意ください<笑>。)

P4160030 解剖して見ると肝臓に異常があることがわかる。

これらの経過や、もし生前の血液検査所見があっても確定診断は難しいのだが、Tyzzer's Disease (ティザー病)と呼ばれる致死性の子馬の病気がある。

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病原体はかつてはBacillus だとされていたが、今はClostridium pilliformis となっている。細胞内寄生菌であり、壊死桿菌と呼ばれたりもする。

以下、Knottenbelt のEquine Neonatology の記載を要約する。

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8日~42日齢の子馬が侵されることが多い。

1頭だけが発症することがほとんどだが、同じ牧場で複数頭発症したことも報告されている。

恐ろしいことに、最も栄養状態が良く、成長も最も早い一番良い子馬が発症しやすいと言われている。

 発症子馬は通常死んで発見される。あるいは生きて見つかっても、ひどい沈鬱、虚脱、高熱である。下痢をしていることもある。

黄疸が認められるかもしれないが、軽度かもしれない。

痙攣と虚脱の後、死に至る。

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 生前診断は困難である。非特異的だが肝細胞由来の酵素が劇的に上昇する。

他の非特異的な生化学的、血液学的所見は低血糖、重度の代謝性アシドーシスとビリルビン血症である。

肝生検は学術的には役立つ。肝細胞あるいは糞便のPCRによる病原体の同定が可能かもしれない。

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 生きて見つかった子馬も通常は集中治療・抗生物質治療にかかわらず死亡する。

しかし、Tyzzer's病が疑われた子馬の回復例がごく最近報告されている。

治療は集中治療と抗生物質治療にTPN Total Parenteral Therapy 非経口的完全栄養給与を加えたものである。

ペニシリン(44000iu/kg)とメトロニダゾール(15mg/kg)と積極的輸液治療。

鎮静剤と抗痙攣薬が必要かもしれない。酸素吸入が役立つかもしれない。

予後はきわめて悪い。確定診断は死後にのみ可能かもしれない。

同居子馬のために調査・診断しておく必要がある。

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 子馬が真っ白になって、黄疸もあって具合が悪くなっても、死んでしまっても、簡単に溶血性黄疸だと考えない方が良い。

 


H-Farm Clinic

2007-04-25 | 日常

ハラマキ先生のブログを紹介しておこう。

http://h-farmclinic.justblog.jp/hfarm_clinic/

軽種馬生産、強い馬づくりのコンサルタントはハラマキ先生以外に日本にいるのだろうか。

ブログでも役に立つ、しかも面白い話を聞けそうだ。

往診の呼び出しに伴うドタバタも面白い話だ。

私も経験がある。

留守電に録音されていたのだ。

「・・・・大至急お願いします。もしもし・・・・・もしもし・・・・・・何だコリャ!」

留守電の使い方を知らない人が電話してきたのだろう。急ぎのようだ。しかし・・・・誰だ? この声は?

結局わからずじまいだった。

  P4210311                           -P4210314

  これも季節ものかな?

種馬の精液検査。

左が顕微鏡でそのまま見たもの。

ピチピチ泳ぐオタマジャクシが見られる。

右上は染色したもの。

P4210315 左は強拡大。

命の元はオタマジャクシ。

その辺の水溜りにカエルの卵が産み付けれられている頃だ。


季節もの

2007-04-24 | 日常

P4220319 子供の頃住んでいた家に、イチジクとビワの木があって、おいしい実がなったそうだ。

私自身は幼稚園にあがる前で、ぜんぜん覚えていない。

しかし、記憶のどこかに染み付いているのか、イチジクやビワが食べたくなることがある。

ところが、北海道ではイチジクもビワもほとんど見かけることはない。

スーパーで売られてはいるようだが、だいたい食べる習慣がないようだ。

うまいんだけどな・・・・

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P4240341 今日は競走馬の関節鏡手術に、分娩後の母馬の疝痛の開腹手術。

手術を終えたばかりのお母さんのおっぱいにしゃぶりつく子馬。

みなしごにならずに良かったネ。