子馬が突然具合が悪くなり、あるいは死んで見つかることがある。
口などの可視粘膜を見ると、貧血と黄疸がある。
これは、劇症の新生児溶血性黄疸だと判断しがちだが・・・・・・
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(次の写真は子馬の解剖の写真です。ご覧になりたくない方はクリックしないで下さい。18歳未満、心臓の悪い方、血圧の高い方はご注意ください<笑>。)
解剖して見ると肝臓に異常があることがわかる。
これらの経過や、もし生前の血液検査所見があっても確定診断は難しいのだが、Tyzzer's Disease (ティザー病)と呼ばれる致死性の子馬の病気がある。
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病原体はかつてはBacillus だとされていたが、今はClostridium pilliformis となっている。細胞内寄生菌であり、壊死桿菌と呼ばれたりもする。
以下、Knottenbelt のEquine Neonatology の記載を要約する。
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8日~42日齢の子馬が侵されることが多い。
1頭だけが発症することがほとんどだが、同じ牧場で複数頭発症したことも報告されている。
恐ろしいことに、最も栄養状態が良く、成長も最も早い一番良い子馬が発症しやすいと言われている。
発症子馬は通常死んで発見される。あるいは生きて見つかっても、ひどい沈鬱、虚脱、高熱である。下痢をしていることもある。
黄疸が認められるかもしれないが、軽度かもしれない。
痙攣と虚脱の後、死に至る。
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生前診断は困難である。非特異的だが肝細胞由来の酵素が劇的に上昇する。
他の非特異的な生化学的、血液学的所見は低血糖、重度の代謝性アシドーシスとビリルビン血症である。
肝生検は学術的には役立つ。肝細胞あるいは糞便のPCRによる病原体の同定が可能かもしれない。
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生きて見つかった子馬も通常は集中治療・抗生物質治療にかかわらず死亡する。
しかし、Tyzzer's病が疑われた子馬の回復例がごく最近報告されている。
治療は集中治療と抗生物質治療にTPN Total Parenteral Therapy 非経口的完全栄養給与を加えたものである。
ペニシリン(44000iu/kg)とメトロニダゾール(15mg/kg)と積極的輸液治療。
鎮静剤と抗痙攣薬が必要かもしれない。酸素吸入が役立つかもしれない。
予後はきわめて悪い。確定診断は死後にのみ可能かもしれない。
同居子馬のために調査・診断しておく必要がある。
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子馬が真っ白になって、黄疸もあって具合が悪くなっても、死んでしまっても、簡単に溶血性黄疸だと考えない方が良い。