アンダンテのだんだんと日記

ごたごたした生活の中から、ひとつずつ「いいこと」を探して、だんだんと優雅な生活を目指す日記

引きこもりピアニスト!? グレン・グールド

2012年10月17日 | ピアノ
私は別にグレン・グールドの熱烈なファンというわけでなし、グールド関連の本を読んだのはこれが初めて。

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グールドといえば、コンサート嫌いで早々と引退しあとは録音しかしなかったとか、妙に低い椅子とか、常識外れのテンポ設定とか、そんな話ね。聞いたことがあるのは。

そういう状態で、お初のグールド本として、この本「グレン・グールド 孤高のコンサート・ピアニスト(中川右介、朝日新書)」を読むのってちょっと偏ってるのかもしれないけど、とにかく、グールドがなんだかんだいって数多くのコンサートをこなしたということはわかった。数多くのキャンセルもしたみたいだけど。

この本の後書きには「(これまでに出版された)ほとんどの本がグールドのレコード、つまりは演奏について語っているので、コンサート・ピアニストとして活躍していた時期のグールドの奮闘ぶりを描くことにした」とある。

だから、グールドのコンサート活動については最初から最後まで、どこで何を弾いたとかいっぱい書いてあった。とはいえ、コンサート好きでなかった(無難な人付き合いを重視する人でもなかった)ということもよくわかった。

なにしろ、「自分の生涯にとって何の役にも立たない」とかいって、高校もやめたし音楽院でのレッスンもやめてしまったころ、コンサート活動は多少やっていたんだけれども、年四回とかありえない(経済的に自立できない)ペースで、結局のところ親のすねかじり。
「親の別荘があるから、グールドは引きこもることもできるのだ」(^^;;

ま、そののち、変人ぶりをプロモーションして「ゴールドベルク変奏曲」のレコードが売れてからは、世界各国を回って数多いコンサートもこなすようになる。そのころの活躍を読んでいくと、あちこちで熱狂的な賞賛も受けているし、大物指揮者との出会いその他、グールド自身にとってもイイコト(や、得るもの)はたくさんあったんじゃないかと想像するのだが、それでもやっぱりコンサートは好きじゃないらしい。

二十二歳のころは、「二十三歳で引退したい」(←はやっ!!)といっていたのが、ゴールドベルクのヒットで延び延びになり、その二十三歳が過ぎてしまってからは「三十五歳までに引退できればいいと思っています」などといっている。

「これがかなわなかった場合、自分に失望して、保険の外交員かなにかになりますよ。とにかくピアノをやめられる身分になりたいのです、少なくともおおやけの場では、きっぱりと。もちろん自分のためには弾き続けますし、レコード作りはやめたくありません。本当に楽しくできるのはレコードだけですから」

彼が外交員向きとはとても思えないけれど。でも、株の才能はあったようで、そのインタビューのころには引退できるくらいの(つまりコンサート収入に頼らなくても生活できるという)目星は立っていたらしい。それにしても…ねぇ。

突き詰めて、とことん突き詰めて音楽を創っていく意思はあり、才能もあり、それでレコードはいいけどコンサートは嫌というピアニストは?? アマチュアであってさえ、「生」で誰かに聞いてもらう体験を通して、次に進んでいきたいと思うものなのでは。

アルトゥール・ルービンシュタインはグールドとの対談で、
「君は本当に、聴衆が発する、あのきわめて特殊な気といったものを、ほんの一瞬でも感じたことがなかったのかね」と質問した。
ところがグールドはきっぱり「本当になかったのです。実際、聴衆がいるせいでいつも演奏がよくなかったんです。」

いやほんとに筋金入りだね。どうも緊張癖が抜けなくて、プロなのにステージが重荷とか、そんなレベルじゃなくて、「生」の中毒性そのものに感作されないというのだから。こんな引きこもりのピアニスト、ほかにはいないでしょう。コンサート回数はともかく、その発想がね。

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コメント (6)
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