アンダンテのだんだんと日記

ごたごたした生活の中から、ひとつずつ「いいこと」を探して、だんだんと優雅な生活を目指す日記

和音の移り変わりを楽しむショパン前奏曲No.4(録音有)

2010年07月31日 | ピアノ
いよいよ、ショパン前奏曲を次々練習して録音していこうという壮大な計画に乗り出しました。

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何曲くらい手がつけられるでしょうね?? …ぶっちゃけ半分として12曲!?

最初は一番簡単そうな(音を並べるのは、という意味です、もちろん)ゆっくりでシンプルなのにしました。

しかし弾いてみると、シンプルすぎると難しいというのはこのことですね。どうにもサマにならない。お指の都合でどこか無意味にごつごつしちゃうと台無しですし、ただ無難に弾こうとしてもつまらない。

そこで、この曲におけるマイ・テーマは
「和音の移り変わりを聞く」
に決定。和音をきれいに響かせるための指の独立とか、そんなの急にできるわけがないですからね。まずは自分が鑑賞する、楽しむ。

出だしの和音は「ソシミ」ですからこの調(ホ短調)の主和音の展開形です。そしてその「ごくふつう」だった和音がじりじりと下がりながら響きを変えていきます。二つ目の「フ#ァラミ」は7thがついて5thが抜けた、まぁ「ふつうに毛が生えた」程度の和音ですが、その次の「ファ#ラミb」になるとちょっと変わった感じの、不安になる響きです。

そうやってじっくりと和音を聴きながら弾いていくと、わりと変な和音のところでは「不安…さびしい…あきらめ??」とかいろんな想像がふくらんできます。そして、三段目に入ると、ここまで下がる一方だった和音が上がり下がりで揺れて、これは、「迷い」??

そして、四段目に入ると、いったんこの流れがとぎれて、気を取り直したようにまた最初の和音から始まります。でも今度はさっきより「先を急ぐように」ずかずかと下がっていったかと思うと、いったん崩れ落ちるように落ち込んでから盛り上がり、激しい旋律の動きがあったあと、また静かに戻っていく。

ここまでずっと、7thの和音でも5thを抜いた、三個で弾いていたんですけど、クライマックスのところでは初めて、四個をベタッと弾く和音になります。そして、旋律が「平常心」に戻る直前の和音は「シミシ」と、三音でも空虚な感じです。

でも最後、素直に小さくなって消えていくのかと思いきや、旋律が主音になったところで左手は「ドソ」と二音だけになります。左手が二音だけになるのは、ここと、クライマックスでドンと落ちたベースの音の二個所だけです。つまりすごく何か主張することのあるポイントのマークなんでしょうね。

ここの「左手: ドソ」「右手: ミ」の響きは、なんというか、多少は決意した部分があるのかな的な印象を受けるのですが、フェルマータ前の和音は結局のところ「シbドソ」と不安というか絶望というか、落ち着きとは程遠い感じがします。もっとも、この和音、右手と合わせれば「シbドソミ」つまり「ドミソシb」というふつうの和音なのに、並べ替えただけでどうしてこんなにただごとじゃない感じになっちゃうんでしょう。

そして最後はいわゆる「お辞儀和音」で決着ですが、凝ったつくりです。いろんな感情が交じり合いながら、結局なんとかやっていくのかな、どうかな、みたいな想像がかきたてられます。

さて、そんなふうにいろいろ想像して弾きながら何度も弾いていくと、多少はまとまった雰囲気が出て来ました。少なくとも、弾いていて楽しめるようにはなりました。でも、録音して聞いてみると、なんとも平板な感じです。アウトプットの技術がなければ、下手な考え休むに似たりってとこでしょうか(-_-;;

私が携帯プレーヤーに入れているソコロフさんの演奏をあらためて聴いてみると、私の演奏よりずっと「幅」(テンポの揺れも、音量も)があって、でもそれが全体として完璧な調和を保っています。しんとした強さが感じられる音の流れです。涙が出るくらい美しい。

そして、ソコロフさんの演奏を聴くと、その時々の和音の響きだけではなくて、横の音のつながりがとても重要だったことに気づかされます。「ミ」が「ミb」になって…とか、そういう隣の和音との、近くて違う音がこの曲の特徴ですからね。そういう、横のラインがくっきり、きれいに浮き出たりするところが自在にコントロールされていて、うっとりします。

無駄とは思いますがいちおう、そのへんを意識して弾きなおし、今回の仕上げとしました。→ショパン前奏曲No.4 2010年7月28日録音

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バイオリンとギターのボケツッコミ!!

2010年07月30日 | バイオリン
平日夜のおでかけというのはなかなか敷居が高いもので、しかもまたろうが週明けからテストなのよねぇ。

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しかし、何の偶然か、昨日はまたろうが小学校の同窓会でお好み焼き屋に行くというので、そうならどうせ監視はいらないし、じゃあいってきちゃおうかしら。

そもそも、家を空けるのは「敷居が高い」なんて感じているのはこちら側だけで、子どもたちは総じて歓迎ムードである。はなひめは、「やることちゃんとやっておくからね(^^)」などとウマいことを言う。

そのようにしてどうしても行きたかったのは、ayucoさんのライブである。今回は、ギターとのデュオ。そりゃ聞いてみたいよ!! お店はメキシコ料理屋とのことで、写真によればなかなか雰囲気よさそうなので、これも気になる。

どうせ行くならということで、開店時間の六時を目指していく。一番乗りなので、席は取り放題。当然ですが最前列の「ギター手元ガン見席」をキープ。

そして、開演の七時半まではゆっくりメキシコ料理を食べながら…と思ったのだが、これは思い通りにいかず、ドリンクはさっと出てきたものの(テキーラとオレンジジュースのカクテルが美味)、食べるもののほうが突き出し(タコスチップとディップ)のあと、待てど暮らせど出てこない。一時間過ぎてもでてこない。これはいったい??

私が催促とかしてたら、別のテーブルにいたVNYOさんがサラダ恵んでくれた(^^;;

後でわかったのだが、ここの店のご主人がこの日、大怪我をして病院に運ばれ、お連れ合いも当然病院に行っていたしで、ふだん二時くらいから開店準備するところ、ぎりぎり開店の六時に戻ってきたくらいだったとか。そりゃたいへんだ。

まぁ、早く行ったおかげでリハの様子も見られたし、友だちともゆっくりしゃべれたからいいんだけどね。おなかすいた。

バイオリンとギターという組み合わせのデュオを聞いたことがない人は多いと思うが(私もなかった)、なかなかよい相性の音色だ。アコースティックギターのやわらかい響きが、ayucoさんのバイオリンのくっきりした歌いっぷりを支えるところも素敵だし、ギターのほうが盛り上がって激しくかき鳴らしているところ、バイオリンで伴奏的な弾き方をするのもまたおもしろい。

それにしても、ayucoさんのバイオリンを聞くたびに思うのだが、音の始まりと終わり、音のつながりなどの「エッジ」部分の表情にものすごくバラエティーがあって、それがまた曲の中でとても魅力的に生きている。そういうことにかけてayucoさんはめちゃくちゃうまいと思うのだが、これはタンゴなどをよく弾くからうまいのか、それともそういうところがうまいからタンゴを弾いているのだろうか!?

ライブが始まってからはぼちぼち料理も出てきて、なるほど煮込みものは、この日準備が遅れていたためできるのが遅かったということなのだろうけど、ほんと待ったよ…。モツと豆の煮込みとかメキシカンな料理と、トルティーヤ? 薄いパンみたいなの。味はとてもよかったです。

曲のほうは、タンゴあり、ジャズあり、オリジナル曲ありで幅広く、しっとり系の曲も多かった。ギターを弾くところをこんな間近で見たのは初めてで、鮮やかな手さばきにうっとり見とれてしまった。ギターはもちろん基本的に弦をはじいて音を出す楽器だけれども、そのはじき方も一様ではなく、位置によって?? はじき方によって多彩な音が出る。そのほか、キュッと弦をこするニュアンスとか、胴を指で叩くとか、いろんな裏技もあるらしく、こんなに雄弁な楽器だったのね~音も柔らかくて押し付けがましくなく、響きがきれい。

曲解説のマイクはayucoさん先行、その後は交代しつつ握っていたんだけど、ayucoさんがしゃべってるときにギターでポロリンとかき鳴らすのがなんかもうおかしくて、ayucoさんが「それいったい何の曲ですか??」とかいちいちつっこむの(^^;; その他、口でも演奏でもギターの愛川さんは大小さまざまなボケをかますので、そこにayucoさんがつっこんでるわけ。なかなかよい調子のコンビである。

ただ、ayucoさんが「ハウるから」といってマイクを外したときに、愛川さんが「ハウルの動く城?」とかあんまりにベタなボケをかましたりすると、ayucoさんはつっこみように困っていたりしたんだけど(^^;; そのうち何度もペアを組めばこなれてくることでしょう。

客席に来ていたバイオリニスト(タンゴ奏者で、ジャズもやりかけてるらしい)の飛び入りセッションもあり、これがもう、現場合わせで、エキサイティングだったんだけれども、二言三言あーやってこーやって…と打ち合わせてえいやと進めていく。目配せしてソロを移しながら演奏していくわけだけど、このゲストバイオリニストがものすごい暴走していくので収拾がつかなくなり、ayucoさんが刻みだけ弾きながら「誰か責任とって~」と叫んでいるシーンなどもあったが(^^;; 最後はayucoさんが弓で楽譜のポイントを示すとみんな一致してまとめに向かっていった。

それにしても、あそこまで原形をとどめなくなっても、ちゃんとリベルタンゴらしさが残ってるのってすごいなーと変な感心をしてみたり。

演奏が終わってから、愛川さんにいくつかギターについて質問したら、すごく丁寧に説明してくれた。まず、気になっていたのは演奏中しょっちゅう触っているダイヤル?? みたいなの。胴体の横っ腹のところについている。

ギターは音が小さいので、こんな小さな会場でやる場合でも、アンサンブルのバランスからいっても電気的な増幅を避けて通れないものらしい。ギターの穴のところにマイクがついているのだが、その音をどのくらい増幅するかを調節しているのがそのダイヤルなんだって。

「弾き方でぜんぜん音量が変わるでしょう…(いくつか弾いてみて)…これを同じように大きくしちゃうと聞きにくいんで、曲の途中でもその都度調節するんですよ」

それと、弦を止めるクリップみたいなのの活用方法についても聞いてみた。
「そう、調を変えるというか、よく出てくるベース音を、これつけて開放弦で弾けるようにしておくと楽なんですよ。特に今日みたいに、別途ベースを担当してくれるような楽器がいないときにはね…(実演)…これつけとかないとほら、これとこれ、両方弾けないでしょう。ジャズとかではもうどの音がベースとかいってられないから関係なくなっちゃうけどね」

なるほど!! どうもありがとうございました(^-^)


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またろう、読書の時間

2010年07月29日 | 高専生活
昨日は午後半休を取って、はなひめといっしょに図書館へ行った。

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えっ、図書館に行くのに午後半休…って、別にそのために取ったわけじゃないんだけど(^^;; 他にいろいろやりたいことがあって。というか、土曜日曜の両方でかけちゃった週って、金曜までもたなくって、中休みを入れたくなるのだ。

図書館でのはなひめのチョイスは「おなかがヨジヨジ わらい話」。ちなみに、返した本のほうは「飼育と観察」(子ども向けの図鑑)。この本で、うちでは飼えない犬やねこの写真をながめてはうっとりしていたというわけだ。

はなひめは、なにしろ文章を読むのはスムーズだし、なにがしか本ということでよければたくさん読んでいるのだが、読書で触れる物語世界の深みでいうと、小学校入学したてのころの、怪傑ゾロリ、忍たま乱太郎あたりからあんまり進歩していないように見える。

それで今回は、「お母さんのお奨めも借りてみて」といって、
「悪者は夜やってくる」マーガレット・マーヒー作 岩波書店
を渡してみた。

つい先日、夏休みの宿題の「読書紹介文」のために「書きやすいのを推薦してほしい」とはなひめに言われ、渡したのは「やかまし村のこどもたち」。これはとてもおもしろかったといっていたので、そろそろヒットするかなと思ったのだ。

何がそろそろかというと、この一冊は、またろうを読書の世界に強力に引きずり込んだ思い出の本で、いってみれば、我が家では「またろうがマーヒーを読んだ」というのはひとつのエポックメイキングな出来事なのだ。

またろうはこの本をみて、「なつかしい~、これ、ぼくが小学校二年生のころ夢中になって読んだ本だよね」…違う違う。またろうの記憶には大幅な歪曲があるようで、今でこそ、毎日の本屋通いと図書館通いを欠かさないまたろうだが、そのような本好きになったのはそんな昔の話ではない。

小学校二年生といえば、今でもはっきり覚えているが、担任のS先生との個人面談のとき、文字を読む能力がちっとも上がって来ないことを嘆き、「コロコロコミック程度のものでも自分で楽しめるようにならないんですよ。ときどき『読んで~』とか持ってこられるんですけど、『ドガーン』とかそういうの音読したくないじゃないですか」とこぼしていたくらいだ。そういえば、「おやすみ前の読み聞かせ」とかやっていたっけ。

「早く、『漫画ばっかり読んでないで!!』と怒れるくらいにはなりたいです」とそのときの私は言った。その願いは数年経ったころには行き過ぎなくらい成就されたのだが(-_-;;

S先生はそのとき、「いやー、またろうくんは、いったん文章がすらすら読めるようになったら、案外、本の虫になりそうな気がしますよ」とおっしゃった。慧眼である。

過去の記録を確認したところによると、またろうが「ルドルフとイッパイアッテナ」にハマったのが小学校三年生の年末。「こたつむり」状態になったまたろうが「ルドルフは、たのしいな~(^-^)」といいながら毎日まいにちルドルフを読んでいたのだが、どうして毎日かというと、読むのがおそいから。

楽しんでだいぶ時間かけて、それで一日10ページとかしか進まない状況だったようなので、ルドルフきっかけで本格的に読書に入っていくというわけにはいかなかった。確かに、本好きの素質は見えたかに思ったが…

さらに時が経って高学年になっても、またろうのソーシャルスキル的な部分が立ち上がってこなかったこともあって、自分で図書館に行って本を選ぶというようなことがなかなかできなかった。で、そのころ、私が代わりに図書館に行っては、適当なものをみつくろってまたろうに渡していたのだ。

その中で、またろう的大ヒットだったものが、ルドルフシリーズを始めとする、斉藤洋もの。さらに大・大ヒットだったものが、マーヒーものである。

マーヒーのときに、同じ作者づたいに探していくと、好みの本が芋づる式に見つかるということをしっかり理解し、親に頼らないで本選びができるきっかけをつかんだ。マーヒーつながりでいけば、「フォーチュン団となかまたち」シリーズも読めるしね。

さて、「悪者は…」は、はなひめ的にどうだったかというと、これはなかなかイケたらしいですよ。どのくらいかというと、昨日の夜ごはん直前に読み始め、読んだら止められなくて夜ごはん済んでまた読んでいて、お風呂洗い(はなひめの役割)をするようにいわれて読書を中断したくなくて母ともめ、お風呂洗いをせずに読み続け、一冊読み終わってようやくお風呂を洗ったというくらい。じゃ、この先も芋づるでいってみたら。この道はいつか来た道。

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ショパン、リスト時代のミーハーアマチュアピアニスト

2010年07月28日 | ピアノ
ピアノの、そしてピアノ曲のファンであれば、ショパンやリストに直々に稽古をつけてもらったり、さらには自分の演奏を褒めてもらったり、それどころか音楽的な考察について助言を求められちゃったりするシーンを想像してほしい。天にものぼるくらい、舞い上がっちゃうんじゃないだろうか。

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「パリのヴィルトゥオーゾたち」
ヴィルヘルム・フォン・レンツ著 中野真帆子訳


という本がある。これは、一介のアマチュアピアニストであったレンツ氏が、リストの、そして引き続きショパンのレッスンを受けたときの話をエッセイ風につづったものだ。

ショパンはともかく(レッスンが重要な収入源だった)、リストは基本的に弟子を取らなかったようなのだが、レンツ氏がうまいことピアノを教えてもらえることになったいきさつはこんなふうに語られている。

当時、レンツ氏は19歳。留学のためパリにやってきて(といっても専門は音楽ではない。音楽は趣味らしい)、最初はカルクブレンナーの教えを受けようとして来たのだが、ベートーベンのピアノ協奏曲変ホ長調を弾くリストのコンサートのポスターを見て気が変わる。

どうしてそのポスターを見ただけで気が変わるのか、ベートーベンのピアノ協奏曲は別に聞いたことがあったわけではないらしいが、とにかくベートーベンのピアノ協奏曲なんてものがあって、それを弾く人があるんならスゴイだろう、というように思ったらしい。当時、カルクブレンナーのほうは確固たる名声を築いている大家には違いなかったが、その作品の少なくとも一部は取るに足らないものであることをすでに感じていた、とある。

ともかく彼はそれからリストの家に突然押しかけたわけなのだが、リストが実際に会ってくれたこと、そして「ピアノを弾いて御覧なさい」までいってもらえたことはかなり幸運なことだったようだ。レンツ氏がポスターを見て気を変えたいきさつについて語ったのがかすかにお気に召したようでもあった。

複数あるピアノのうち、リストに指定されたピアノは、触ってみてびっくり、えらく鍵盤が硬くて、ふつうに弾いたのではまったく鳴らなかったのだ。しかしそれにめげずにウェーバーの「舞踏への誘い」の冒頭を弾くと、「なんだったのですか?なかなかよい始まりでしたよ!」とリストが止めた。

リストはウェーバーがピアノ曲も書いていることを知らなかったようで、いたく興奮する。それで、レンツ氏が持ってきたスーツケースに「ポロネーズとロンドが二曲、ヴァリエーションが四冊、それにピアノソナタ四曲」があるのを知ると、それに目がくらんだか(笑)レッスンをしますと申し出てくれた。

先ほどの「弾けないピアノ」は、リストが指のトレーニング用に置いていたもの。それからまともなピアノのほうに移動して「舞踏への誘い」を弾いてみると、「これを持って来てください。これについてお互いに話し合わなくては」とノリノリのリストさんだった。

このエッセイ風の本が書かれたのは、このときから四十年以上の歳月が流れてからのようで、ということはつまり、美化された記憶や、脚色も含まれているというのは大いにありそうなことではある。でもともかく、リストにもショパンにも教えを受けたことは確からしく、それぞれの直筆からなる異稿(←こう弾いてもいいよという楽譜断片)も残っている。

レンツ氏が見たものは、これまで知らなかった優れた作品群を目の前にして興奮するリストである。レンツ氏がピアノを弾いていると突然リストが「待って、ちょっと待ってください! 何でしょう? 自分で弾いてみなくては!!」と彼を押しのけたり、どんどん熱中してアナリゼを進め、「あなたのおかげでこのソナタに出会えたことを私は決して忘れないでしょう。今度はあなたが私から学び取る番です、我々の楽器について知っていることすべてをあなたにお話ししますから」…レンツ氏がどれだけ舞い上がったかは想像に難くない。

だいたい、この本はとても読みづらく、仰々しく飾り立てられた文章が、あまり整理されずにごたごたと並べられているし、ちりばめられている言葉の数々も、その時代の文化がよくわかっていなければ解釈不能、翻訳不能なものが多いようだ。しかも、レンツ氏は語学堪能だったとはいえ母国語でない言語で文章を書いているので、よくわけがわからないところも多いらしい。そんなわけで、この本をしっかり読み通すなんてことは(もちろん日本語版を読むのだが)、非常に疲れることなのだ。

決して本としてよくできたものではないのに、これを処分することができないのは、やっぱり舞い上がったレンツさんのミーハー魂が、時代を超えて心をつかむからだと思う。

レンツさんはこのあと、リストからもらった「通行許可証-フランツ・リスト」という名刺を手にして、ショパンの住処を訪ねる。そしてショパンの気難しさに何度かひやっとしながらも、なんとか首尾よくピアノを弾くところまでこぎつける。

ショパンのマズルカをショパンの前で弾いてみせた。ショパンは、「あのパッセージはあなたの考えじゃないでしょう。リストが教えてくれたのですね。あの人ときたら、あたりかまわず自分の爪あとを残したがるのですから」といいつつ、レッスンを引き受けてくれる。

かの有名なプレイエル婦人に献呈されたノクターンop9-2は、レンツ氏のお気に入りというか十八番だったらしく、ショパンに「満足マーク」をもらう。ショパンは生徒の演奏に満足したとき、細くとがった鉛筆で楽譜の下に×印をつける習慣があるのだが、レンツ氏が初めてこの印をもらったのがこの曲。そしてさらに二つ目を獲得し、三度目にこの曲を弾こうとしたときは「もう勘弁してください! 私はこの曲が嫌いなのです」とショパンに言われる。

このとき、ショパンはノクターンの分野でもっと進んだ着想を得ていて、ある意味「ベタな」自分の過去の作品をしつこく聞かされたくはなかったらしい。

まだまだ魅力的なシーンはたくさんある本、そして、全体を読み通そうとしてもはねかえされる本なのだけれど(それにたぶん、読み通すことにあまり意味はないだろうし)、妙に心ひかれる本である。ショパンに、リストに、生で会った気分を味わって、ミーハー心がちょっと満足する、というような。お奨め度は…微妙!?

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マッチポンプ! こじろうの無駄に熱い夏

2010年07月27日 | 中学生活
宿題はポイント制で管理することにしたので、所定のポイントをこなしつつ、ふだんの日に少しずつ溜めていき、溜まったら遊びに行く、というように日々を過ごせばたんたんと平和な毎日になるはずなのだが。

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ないドラマとスリルを自ら作り出すのがこじろう。

部活に行く日は、ポイントをこなすべき日の勘定に入っているわけではない。だから、夕方に家へ帰ってきて、シャワーでも浴びておやつでも食べてちょいと休憩したら、公文やって夜ごはんを食べ、基礎英語やってごはんの洗い物をして一時間くらいでも勉強すれば(=1ポイント相当)、ポイントは溜まっていく。

しかし、何もやらずにごはん時間になり、まずはペッドに潜ってごろごろ…何度も声かけられてようやく基礎英語と洗い物をしてまたごろごろ…もしくはまたろう(←試験前!!)とカードゲーム。気がついたら寝る時間。

これでは、ポイントの貯金どころか、公文の借金が溜まっているだけである。

ところがそこへ、お友だちから遊びの誘いがかかると、「明日の午後遊びにいっていいっ??」…キミ、まったくポイント溜まってないじゃん。

明日の午前中までに溜めるからっ!!

ここ数日のていたらくから類推したらにわかには信じがたいことではあるが、あくまで「溜まってたらいいよ」という。

すると、こじろうは猛然と宿題に取り組みだし、母が寝る時間(11時)になってもようやくモーターのコイルがあったまってきたところだぜ的な雰囲気を漂わせている。今日のうちに寝なさいよ、といって先に寝る。どうしてこの子は深夜にならないとエンジンがかからないのかねぇ。

翌日も、多少は寝坊をしていたが、まぁまぁの時間に起きてきて、宿題をやっている。「間に合わなかったらキャンセルだよ」「わかった」
母は会社へ行ってしまったのでその後のことは知らないが、帰ってきたらこじろうはいなくてリビングのテーブルにノートやらなんやらが溢れ返っている。

自ら作り出したピンチとはいえ、追い詰められたあとのこじろうの瞬発力はすごい。「この調子で(!)宿題をやってもらおう。遊びの予定はだいじだね」とよしぞう。

さて、遊びほうけて帰ってきたこじろうではあるが、聞いてみると、ポイントの件は約束どおりでも、公文の借金はそのまま。その借金を返さないと次はないよ~ゴゴゴゴ(-_-#

外出が済んでしまうと、またいつもどおりの腑抜けに戻ったこじろうだったが、ちょっと公文の借金かえしなさいよ、明日はどうなってるの?? と聞くと、あ、明日?? 駒ヶ根(宿泊研修)。という。

あーーっ忘れてた~(忘れている母のほうもどうかしている)、っていうか、まったく荷造りの「に」の字もしていないように見えますが!? 時は夜9時を回ったところ。

いや今からちゃんと準備するよ、とこじろう。さて「しおり」はどこにいったかな?? えっ、これからしおり捜索かい。それで、こじろうはあちらを探し、こちらを探し、ふらふらふらふら…ちょっと、あんたさっきからうろうろしてるだけでまったく実質的な捜索は行っていないように見えますが!?

そこで、とにかく時間の有効活用ってことで、こじろうには夜ごはんの洗い物をさせておき、母が探してみることにした。こじろうの部屋に行き少なくとも山(机の上、床の上にそれらはある)の表面にはないことを確認すると、リビングに戻ってきて、こじろうが通学に使うバッグを開けてみた。するとそこに、逃げも隠れもしない、堂々としおりが乗っているではありませんか。

こ~じ~ろ~う~(-_-##

「かばんの中、見なかったの??」「だって、まさかかばんの中にあるとは思わなかったもの。」

それでまぁ、それからようやく支度が始まったんだけれども、着替えやタオルの支度をする前に、なんか地図やらなんやらのプリント類になんか貼ったり閉じたり…延々と事務的作業をしている。それって前夜にするような作業には見えませんがね。なんか間違ってるんじゃ??

というわけで、いかにも宿泊の支度らしい部分は、母の起きている間には目撃できなかった。母は(またもや)先に寝てしまったのだが、そして翌朝、弁当作りの時間に起きていくと…こじろうがソファーで寝ている。「支度は済んだの??」と声をかけると、「しまった!!」と飛び起きて…

そこからが本格的な支度開始(^^;; これがもぅ、いつもの学校より早い電車に乗らなきゃいけないというのに、たいへんだ。朝ごはんを食べる時間もないよ。「こめいちごう!!」こじろうが何を叫んだかと思った。母も弁当をいつもより早く作り終えなきゃいけないわけで手が離せない。自分でやって、というとこじろうは、パニックになりながら(間の悪いことに、ちょうど米びつに米がなくなって、次の5kgを開けなきゃいけなかったんだ)米を入れ…

「ちゃんとそろってるか自信ないけど」といいながらあたふたと出かけていった。やれやれ。

しかし話はそれでおしまいにならない。次に、またろうが出かけようとすると昨晩支度したはずのプールバッグが見当たらない。焦ってあちこち探し回り、母もつきあって必死で探したけどない。いくらうちの中がわけわからん状態になっているといっても、バスタオル・ゴーグル・水着・帽子が入ったバッグが丸ごとみつからないというのはどうしたわけだろうか。

思い余って、これだけ探してみつからないということは、こじろうが持って行ったのではないかという珍説まで飛び出したが、いくらなんでもねぇ…

ところが、真実は案外それに近いところにあった。今朝になって、洗濯物のかごから、またろうの水着が出てきたのだ。どうも、またろうが支度したバッグを使用済みと勘違いしたこじろうが夜中に、中身を出してしまいその入れ物(ナップザック)を自分の荷造りに使ったらしい。なんと人騒がせな(-_-###

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若鶏甘酢から揚げ、ピーマン、カレーコロッケ、こんにゃくきんぴら、プチトマト、ひじき煮
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