アンダンテのだんだんと日記

ごたごたした生活の中から、ひとつずつ「いいこと」を探して、だんだんと優雅な生活を目指す日記

「ゴミにまみれて」(坂本信一著)

2011年01月15日 | ピアノ
それで、私がバイオリンレッスンに遅れそうになった原因(電車降りそこない…)は、表題の本なんだけど。

(ピアノWeb発表会、開催中!! ← かーたん^^さん、おちゃさんを追加しました)

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これは、清掃作業員、つまり、ゴミ収集車に乗っている人が書いた本。その仕事についた成り行き、その仕事のきつさ(悪臭、危険含む)、その仕事についている人々の様子、お役所の体質、ゴミの問題、住民の意識、妻となる人の意識にいたるまで、詳細に赤裸々に語られている。

この仕事、絶対必要とされていることは明らかで、しかも非常にきつい仕事であることも容易に想像できるわけで、ならその仕事に従事している人がどう見られているかというと…??

結婚するといえば相手の親に反対され、道端の子どもたちにも蔑まれ、なにより作業員たち自身が自分たちのことを、あるいは仕事を、卑下している様子が身も蓋もなく描写されているのだけれど、特にやはり、自分たちが自嘲的気分に陥っているところがとても読んでいてつらい部分である。

たとえば、自分のことを、そのうち事務職に移らせてもらうつもりの仮の姿、ほかの作業員とは違うんです、という気持ちをこめて他作業員を「ゴミ屋だからしょうがない」みたいに侮蔑したり、あるいは自分は運転手をするから助手とは違う、というように作業員内部の階級差にしがみついたり。

著者は、そういった状況に疑問を感じつつも、作業も下手で、雰囲気的にも浮いており、事態をよくするために何ができるでもなく、肉体的にも精神的にも、もみくちゃになりながら、そして何度も「やめてやる」と思いながら結局その仕事を長く続けることになる。

その中で、ときどきはよい上司が回ってきて、作業環境の改善、安全性の向上、職場のコミュニケーションも良好になりかかるのだけれど、それが「心無い」異動で水泡に帰していく様子がまたまた非常につらい、もったいない。

まぁ役所の異動なんて「心無い」に決まってるんだけど、特に、劇的な改善が見込めそうな課長-係長の組み合わせになったときに、通常の異動よりめちゃくちゃ早いタイミングで常識外れの「課長・係長をいっぺんに挿げ替える」という暴挙に出られたりしたときは、読んでいてもえーーーっと思ってしまったものだ。

これは、役所の側が民間委託の話を進めようとしているところ、課長以下作業員までのコミュニケーションが円滑でうまく団結されたら面倒だということで異例の人事をしたもので、そうやって上が取り除かれると、せっかくうまくいきかかっていた関係がほんとうに脆く崩れていくのだ。

日々、使えるもの、食べられるものが大量に捨てられていく状況も「もったいない」。
生産的な職場になりかかっているものが、政治的理由(?)でつぶされる状況も「もったいない」。


この本はほんとうに、「もったいない」の塊なのだ。どこをどうとっても。

でもそんな状況の中で翻弄されながらも、著者が徐々にいろいろなことを学び、住民と協調してゴミ資源化(減量)に尽力したり、心ある同僚と団結して交渉したり、徐々に前向きに仕事と向き合えるようになってきて、そして自分と、自分の仕事に対するイメージも少しずつ上向いてくる。

その様子にじんとくる。機会があったらぜひ読んでみて!! この日本という国のあり方を考えるときには外せない一冊ですよ(大きく出たな)。

(著者は、大学を出たあと映画の仕事をしたくて四年ほど…そして芽が出ず挫折して清掃作業員になった人。だからなおのこと作業員の中で浮きやすかったということがあるわけだけど、こうやって語るべき言葉を持つ人が、この仕事をしたからこそ生まれた佳作である)

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コメント (6)
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