礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

敵機に遭遇した列車は長緩汽笛を発して徐行

2016-01-24 04:19:10 | コラムと名言

◎敵機に遭遇した列車は長緩汽笛を発して徐行

 本日は、情報局編輯集『週報』401・402合併号(印刷局、一九四四年七月五日)にあった記事を紹介する。この合併号の特集は「防空必勝の訓」。この特集のタイトルを見るだけで、戦局がすでに不利になっていることがわかる。
「空襲時の非常対策」という記事があり、「金融」、「衣・食・住」、「鉄道」、「通信」の四項目について説明がなされている。本日は、「鉄道」の項目を紹介してみる。

空襲時の非常対策□□□□□□□□鉄 道
 敵機空襲下における列車旅行はどうなるか。むろん情勢に応じて臨機の措置をとらなければならないが、機に応じ変に対処する万全の構へを用意してゐる。
一、列車の運行
 空襲警報発令中も、列車は原則として平常通りの運転を建前とするが、臨機の措置として旅客、貨物の輸送状況を睨み〈ニラミ〉合せ、その後の混乱が予想される場合は、予備車用にあてるため間引【まびき】運転を行ふ。
 空襲警報発令後、情勢緊迫した場合には、地域により一般旅客を降車待避させる(但し防空緊急要員の証明書所持者を除く)。
 同警報発令後にこの情勢がさらにつゞく場合には、運転を臨時変更して、途中区間までで打切り、定刻前の早発、通過駅の停車、停車駅の通過、経由線変更などを行ふことがある。
 列車運転中、敵機に遭遇した場合には、長緩汽笛〈チョウカンキテキ〉一声を吹鳴しながら徐行、車掌もこの旨を乗客に通告する。乗客は係員の指示に従ひ、決して単独行動をとらない。
 車内の退避方法はガラス戸を開け〈アケ〉、鎧戸〈ヨロイド〉を締めて、窓よりに手廻品などを集積、乗客は通路に低姿勢をとる。
 情勢によつては予定の経由線を通らず、迂回して輸送する場合があり、また敵機来襲中は原則として列車を駅構内に停止させない。
 車内や駅構内の退避は、必ず乗務員、係員の指示に従つて沈着敏速な行動をとること。
 なほ列車不通個所、事故など、駅への電話問合せには答へない。必要な事項は各駅毎〈ゴト〉に掲示する。
 省線は空襲警報発令下には、原則として運転するが、敵機来襲の場合には全部運転停止する。運転中の電車は最寄駅に入つて乗客を降車させ待避させる。【以下、次回】

「長緩汽笛」というのは、気笛合図に用いられる気笛のひとつで、約四秒鳴らすものを言う。約二秒のものを適度気笛、約〇・五秒のものを短急気笛という。これらを組み合わせたものが汽笛合図である。
「鎧戸」というのは、ブラインドのことである。昭和三〇年代前半までは、窓に木製の重そうなブラインドが付いている列車が走っていたと記憶する。
「省線」というのは、鉄道省線の略だが、ここでは「省線電車」の意味であろう(のちの「国電」、「E電」)。敵機来襲の際、省線電車の場合は、「最寄駅に入つて乗客を降車させ待避させる」。しかし、一般の列車の場合は、「敵機来襲中は原則として列車を駅構内に停止させない」ということになっていたようだ。

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