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おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

椿三十郎

2017-12-28 13:51:34 | 映画
12/31 BSプレミアム 17:21放送

「椿三十郎」 1962年 日本


監督 黒澤明
出演 三船敏郎 仲代達矢 小林桂樹
   加山雄三 団令子 志村喬
   藤原釜足 入江たか子 清水将夫
   伊藤雄之助 久保明

ストーリー
薄暗い社殿で密議をこらしていた井坂伊織(加山雄三)をはじめとする9人の若侍。
それを図らずも聞いていた浪人は、権謀に疎い彼らに同情し一肌脱ぐことに……。
その浪人者・椿三十郎(三船敏郎 )は、城代家老(伊藤雄之助)が本物で、大目付の菊井(清水将夫 )が黒幕だといって皆を仰天させた。
その言葉の通り、社殿は大目付輩下の手の者によって取りまかれていた。
あおくなった一同を制してその浪人者は、九人を床下へかくし一人でこの急場を救った。
その時、敵方の用心棒室戸半兵衛(仲代達矢 )はその浪人者の腕に舌をまいた。
城代家老は屋敷からはすでにどこかへ連れていかれた後であり、夫人(入江たか子)と娘の千鳥(団令子)が監禁されていた。
浪人者はこの二人を救い出し、若侍の一人寺田(平田昭彦)の家にかくまった。
皆は、城代家老の居場所を探すに躍起だ。
黒藤(志村喬)か菊井か竹林(藤原釜足)の家のどこかに監禁されているはずだ。
三十郎は敵状を探るため、室戸を訪ねていった。
室戸は三十郎の腕を買っているので、即座に味方につけようと、菊井、黒藤の汚職のことを話し、自分の相棒になれとすすめた。
やがて家老は黒藤の家に監禁されていることが判明する。
三十郎は、黒藤の警固を解かせるため、一味が光明寺に集っていると知らせに行くが、嘘がばれてしまう。

寸評
前作「用心棒」の桑畑三十郎が椿三十郎と名前を変えて登場。
「もうすぐ四十郎だがな・・・」と前作同様の台詞を言っている。
この作品の歴史的功績は、リアル志向を追求した結果の立ち回りのシーンで、刀がぶつかり肉が切れる激しい効果音を入れたことと、飛び散る血しぶきが描かれたことだ。
それまでの時代劇にはなかった演出で殺陣のシーンが俄然迫力を帯び、これ以降の時代劇では用いられるのが当然のことになった。
三船演じる椿三十郎は前作の「用心棒」に比べると野性味にかける浪人振りだが、凄腕は相変わらずで、ラストシーンで仲代達矢さんの室戸半兵衛を一太刀で倒す所に凝縮されている。
「それはないだろう」と言いたくなるぐらい、ドバッと血が噴出する。
一瞬の低血圧で即死状態だ。
公開時は果たしてあれだけの血が噴き出すものだろうかと医者を交えた論争が起きたというから面白い。

しかし、この映画の面白い所は、登場人物がすべてどこか浮世離れしていてとってもおかしいところだと思う。
その筆頭は、入江たか子さんと団令子さんのコンビだ。
誘拐された城代家老の奥さんと、娘さんなのだが緊迫感がまるでない。
人の良さがにじみ出ている城代家老の伊藤雄之助さんがまったくの昼あんどんで・・・。
捕らえられた敵方の侍である小林桂樹さんも、時々押し込められている押入れから出てきては意見したり、かえって味方したりしてしまう。
三十郎は奥方を実の母親とでも思っているのだろうか、ふてくされながらも何かと親切にする。
そんなやさしさが今の世の中にも欲しいものだ。

さらにこの映画の構成として、自分は切れ者だと思っている人間がことごとくその皮をひんむかれる。
加山雄三の井坂伊織は一味のリーダーではあるが、最後に「お見事!」と大人びた掛け声をかけたことを三十郎に一括されている。
大目付の菊井は次席家老などを小馬鹿にしているような所があるが、自分の力を過信したプライドから切腹して果てる。
その菊井を手玉に取っていると思っている室戸半兵衛は、実はコケにされていたのだということに我慢がならず結末を迎える。
逆に全く頼りないと思われていた伊藤雄之助の城代家老が一番分別があり、素浪人の性格も扱いの難しさもお見通しだった。

兎に角、斬って斬って斬りまくる娯楽色の強い作品で、三船敏郎の体力もなかなかのものだ。
それまでが大乱闘の斬り合いが続いていただけに、ラストの一撃で決まる決闘は効果倍増の演出だった。
三船の素浪人はハマリ過ぎるくらいのハマリ役で、この後勝新太郎の「座頭市シリーズ」にも登場して勝新の座頭市と対決している。
結果は大スターの両雄だけに・・・。

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