「チェ 28歳の革命」 2008年 アメリカ / フランス / スペイン
監督 スティーヴン・ソダーバーグ
出演 ベニチオ・デル・トロ
デミアン・ビチル
サンティアゴ・カブレラ
エルビラ・ミンゲス
ジュリア・オーモンド
カタリーナ・サンディノ・モレノ
ストーリー
1955年7月、メキシコ。
持病の喘息を抱えながらも、ラテン・アメリカの貧しい人々を救いたいと南米大陸の旅を続けるアルゼンチンの医師エルネスト・ゲバラと、独裁政権に苦しむ故国キューバの革命を決意するフィデル・カストロは、フィデルの弟ラウルを介して運命的な出会いを果たす。
キューバで革命を起こすことを決意した二人は翌年の11月、わずか82人で海を渡りキューバに上陸するが、壮絶な緒戦の末、生き残った仲間は12人。
一方、迎え撃つ独裁者バティスタ将軍の軍隊は2万人であった。
しかし、カストロ率いるゲリラ軍は、次第にキューバの人々に受け入れられていく。
その中心にいたのは、チェという愛称で呼ばれ、軍医としてゲリラ軍に参加したチェ・ゲバラだった。
彼は、山中にあっても農民たちに礼節を尽くし、女性と子供には愛情を持って接し、若き兵士に読み書きを教え、裏切り者には容赦ないが、負傷兵には敵味方の区別なく救いの手を差しのべた。
やがてその類まれなる統率力を認められ、司令官として部隊を率いるチェ・ゲバラ。
後に妻となる女性戦士アレイダ・マルチにも支えられながら、彼の部隊はカストロからキューバ革命の要となる戦いを任せられる。
それは、大都市サンタクララを陥落しキューバを分断せよ、という指令だった。
そして1959年1月1日、チェ部隊がサンタクララを占領。
バティスタ独裁政権は崩壊する。
彼らはこの瞬間、強者の圧制がまかり通る世界の現実を変えたのであった。
寸評
エルネスト・ゲバラ、通称チェ・ゲバラの名は革命家として僕の脳裏に刻まれているが、それが何故なのかよく分からない。
ゲバラは日本にも来ているが、それは1959年のことで子供の僕はそのことを知るよしもなく、日本歴訪によって彼の名が植え付けられたものではない事は確かだ。
思い起こせば彼の名を忘れさせないのは、20世紀において最も多くの複製が行われた写真とも言われるアルベルト・コルダが撮影した「英雄的ゲリラ」と題されたチェ・ゲバラの写真だったのではないかと思う。
あるいはそれを基にしたポップ・アートかイラストだったのかもしれない。
エルネスト・ゲバラがいかなる人物なのか、キューバ革命はどのようなものだったのかも知らずにチェ・ゲバラの名前だけは記憶された。
この映画では軍医としてゲリラ軍に参加したゲバラが革命軍の司令官となって進軍していく様が描かれている。
モノトーン映像が挿入されるがそれは革命後にキューバ主席として国連総会に出席している姿である。
進軍の様子は過去を振り返るような形を印象付けながらカラー映像で描かれていく。
見ている限りにおいては、革命軍はたいした戦闘もせずに戦いの分岐点になるキューバ第2の都市サンタ・クララに突入している。
それまでは森や山中を進んでいく姿や、野営地での様子などが描かれ続けるが至って平穏だ。
時に政府軍の爆撃などもあるが、学校を開いたり識字が出来ない兵士に勉強を進めるゲバラの人となりが描かれている場面が多い。
裏切り者には厳しいが、農村部の人々や味方は勿論、敵にも慈悲を見せるゲバラだが、画面から伝わってくるのは土や草の匂いで、ドキュメンタリー風な映像は観客である僕を彼らと同じ場所に導いてくれる。
彼らが存在している場所の空気を感じさせる映像が迫ってくるのだが、それでもやはり前半は間延び感がある。
間延びを感じてしまうのは多分僕がキューバ革命にそれほどの興味を抱いていないせいかもしれない。
後半に入り、ゲバラが率いる部隊がサンタ・クララに近づいてくると、市街戦の模様が俄然迫力を出してくる。
当時の市街戦はこの様なものだったのだろうと思わせる描き方がとてもリアルに感じる。
砲弾が飛び交う派手なものではなく、銃撃によって路上で一人がバタッと倒れるのがリアリティをだして、銃撃戦の恐怖を感じさせる。
作中にキューバを率いることになるフィデル・カストロと弟のラウル・カストロも登場するが、深く描かれておらずゲバラとの関係はよく分からなかった。
ラウル・カストロは2021年4月、共産党トップの第1書記から退任すると明らかにし、キューバ革命以来60年余りにわたって兄のフィデル・カストロと共にキューバを率いてきたカストロ兄弟による統治が終わることになった。
サンタ・クララを制圧した革命軍はハバナを目指すが、途中で赤いスポーツカーを奪ってきた兵士と出くわす。
ゲバラは敵のものでも盗んではいけないと言い、引き返して返却するように命じる。
ゲバラが「なんてことだ・・・」とつぶやくが、革命が成功したときからすでに革命軍の中にゆるみが生じていることを示していて興味深いし、スポーツカーの赤い色は革命の成就を感じさせ強烈だった。
第2部として「チェ 39歳 別れの手紙」がある。
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