「セプテンバー5」 2024年 アメリカ / ドイツ

監督 ティム・フェールバウム
出演 ピーター・サースガード ジョン・マガロ
ベン・チャップリン レオニー・ベネシュ
ティム・フェールバウム ジヌディーヌ・スアレム
コーリイ・ジョンソン マーカス・ラザフォード
ベンジャミン・ウォーカー
ストーリー
1972年9月5日、ミュンヘンオリンピックでパレスチナ武装組織「黒い九月」によるイスラエル選手団の人質事件が発生した。
事件の発生から終結まで、その一部始終は当時目覚ましい技術革新が進んでいた衛星中継を通して全世界へと生中継された。
だが、全世界が釘付けになったこの歴史的な生中継を担当したのは、ニュース番組とは無縁のスポーツ番組の放送クルーたちだった。
エスカレートするテロリストの要求、錯綜する情報、機能しない現地警察。
全世界が固唾を飲んで事件の行方を見守るなか、テロリストが定めた交渉期限は刻一刻と近づき、中継チームは極限状況で選択を迫られる。
寸評
ミュンヘンオリンピックにおける「黒い九月」が行ったテロ事件を扱った作品として、スティーヴン・スピルバーグ監督の「ミュンヘン」がある。
「ミュンヘン」は当時のゴルダ・メイア首相と上級閣僚で構成された秘密委員会がイスラエル諜報特務庁(モサド)に対して、ミュンヘンオリンピック事件に関与した者の情報収集を行なわせ、これに基づき委員会は暗殺の対象者を決定して、アヴナーという工作員をリーダーに暗殺計画を実行していく、ミュンヘンオリンピック事件の後日談であった。
本作はテロ事件を現地から生中継した人々の視点から描いたサスペンスである。
シーンのほとんどがオリンピック中継のための現地コントロールルームを主な舞台とする放送スタジアムに限定されている。
あの狭い空間だけのやり取りで緊迫感を生み出したのは立派だ。
スタジオはテロ現場ではなく、彼らが襲われることはないのに緊張感が途切れない。
政府、警察の対応の不手際もあったようだが、そのことは描かれず彼らの実況中継で警察の動きが犯行グループ側に筒抜けだったことだけが取り上げられている。
実行犯の再現シーンなどを盛り込まず、あくまでもテレビクルーの判断や行動に絞り込むことで、ドキュメンタリーのような効果を生み出している。
1時間半ほどにまとめ上げているのもよい。
本当にあったことだと分かっていると、殺人などが起きなくても、狭いスペースでも、サスペンスが描けると言うことを証明した作品だ。
最後に事件の結末がテロップされるが、その後に起きたイスラエルによる報復は示されなかった。
いつも思うことなのだが、民族と宗教による対立の根深さは僕の想像を超えるもので、すべての人が平和を望んでいるはずなのになぜ紛争は起きてしまうのだろう。
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