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おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

東京上空いらっしゃいませ

2021-06-26 08:38:05 | 映画
「東京上空いらっしゃいませ」 1990年 日本


監督 相米慎二
出演 牧瀬里穂 笑福亭鶴瓶 中井貴一
   毬谷友子 三浦友和 谷啓 出門英
   竹田高利 藤村俊二

ストーリー
キャンペーンの最中にキャンペーンガールの神谷ユウ(牧瀬里穂)は、スポンサーの好色な専務白雪恭一の魔手から逃れようと、自動車からとび出した瞬間、後続の車にはねられ、死んでしまう。
街にあふれる看板やポスターや写真や音楽をそのまま残してユウの魂は東京上空へと舞い上ってしまった。
広告代理店の担当雨宮文夫(中井貴一)や白雪(笑福亭鶴瓶)たちは、事故をひたすら隠してキャンペーンを続けることにし、後始末に奔走する。
一方、天国に昇ったユウは、白雪とウリ二つの死神コオロギ(笑福亭鶴瓶、二役)をしっかりだまして地上に舞い戻った。
しかも、事故の知らせを聞いて右往左往している文夫のマンションに現われたのだった。
唖然としてうろたえる文夫。
ユウはユウで戻ったものの、自分はもう死んでいることになっているので家にも帰れず、学校にも行けない。
文夫は、どこにも帰れないユウと同居しながら、ユウの事故死の後始末をするはめになってしまうのだった。
ちょうどそのころ、だまされたと知ったコオロギは、ユウに付きまといながら、あの世へ連れ戻そうと説得したり、おどしたりと奮闘するのだった。
それでもユウはけなげに、新しい自分として一から生きてゆこうと頑張るのである。
文夫はそんなユウがいじらしくなってきた。
このままユウを抹殺してしまうのが耐えられなくなってくるのだった。
文夫は、死んだはずのユウを白雪の所へ連れて、茫然とする白雪に、事故現場の写真と引き換えにユウのキャンペーンを続行させる取り引きをもちかけるのだった。
その夜、やっと自分を取り戻したことを感じたユウは天国に行くことを決心し、コオロギと共に東京上空を舞い上っていくのだった。


寸評
宮沢りえ、観月ありさ、牧瀬里穂をあわせてアイドル「3M」と呼ばれた時代があった。
これはその内の一人、牧瀬里穂を主人公に据えたアイドル映画であるが、相米慎二の演出は薬師丸ひろ子を撮っていたころに比べると大分と洗練されている。
牧瀬里穂のセリフ回しの下手さ加減はどうしようもないが、その下手さがアイドルらしいし、見ているうちに妙なリアリティを持ってくるから不思議だ。

あの世から帰って来て騒動を起こす映画は何本もあるし、ほとんどの作品がどこかメルヘンチックな要素を含んでいるのだが、本作もその例外ではない。
ユウのマネージャーである雨宮が住んでいる部屋そのものが男部屋にしてはメルヘンなものである。
舞台の一つとなっているが、雨宮に好意を寄せる女性が階下に住んでいて、縄梯子を垂らして行き来しているし、室内のインテリアもモデルルームのようだ。
カメラは室内の様子を描きながら間仕切り越しにベランダへとパンしていき、室内とベランダを一体化する。
流れるようなカメラワークは相米の得意とするところで、このカメラワークは随所で見られる。
ハンバーガーショップでのシーンも同様のカメラワークが見られ、店内のユウの姿を捉え続けたカメラは、そのままパンして店の外で語り合う雨宮とユウの姿を窓越しに捉える。
僕たちは何気なく見てしまっているが、振り返ると随分計算されつくしたシーンだった事に気づく。

相米作品の特徴でもある長回しも随所で行われており、その効果が一番発揮されたシーンは屋形船の上で打ち上げ花火を見ながら雨宮とユウが語り合う場面だろう。
カメラは語り合う二人を捉えて動かない。
打ち上げ花火が挿入されることもなく、少しパンしたりズームアップしたりしながらも二人を捉え続ける。
雨宮はユウに年の数だけ揃えた17本のバラの花束をプレゼントしたところ、ユウはその花をちぎって捨てながら自分の過去を語りだす。
それは紛れもなくユウが生きていた頃の生の賛歌なのだが、キャンペーンガールとして街中に張られた彼女のポスターも生の表現だったと思う。
雨宮とユウの心が通い合た印象に残るシーンだ。
ラスト近くのクラブでのシーンも長回しが用いられ、カメラは歌い踊る牧瀬を追い続ける。
トロンボーンを吹く中井貴一と、ダンスをする牧瀬里穂の姿が生きていることの素晴らしさを歌い上げている。

あちらの世界からやって来ているので、観客はやがてユウはこの世から消え去っていくのだと言うことを最初から暗黙の内に理解している。
従って話は、その間に繰り広げる幽霊の行動がメインとなるのだが、この作品では商業主義者たちが、ユウが生きていることにしてキャンペーンを続け、さらに死んだことを発表して盛り上げようとする身勝手さも描いている。
ドタバタになってもおかしくないような設定なのだが、上手にメルヘンな世界を描いていたと思う。
牧瀬里穂はこのころ「つぐみ」「幕末純情伝」などもあって期待されたが、その後はあまりパッとした作品に恵まれていないのは惜しいし、一番印象に残るのがJRのコマーシャルだったというのでは淋しい気がする。

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
なんか変な映画でしたね (指田 文夫)
2023-07-12 16:05:36
見ていて、牧瀬里穂ってどこがいいのって思いました、
山田太一で、どこか乗れなかった作品でしたね。
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牧瀬里穂さん (館長)
2023-07-13 07:48:25
牧瀬里穂さんの一番はJRのコマーシャルですね。
飯島直子さんの一番が缶コーヒーのコマーシャルなのと同じです。
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