おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

風の谷のナウシカ

2022-05-05 07:32:22 | 映画
「風の谷のナウシカ」 1984年 日本


監督    宮崎駿
超えの出演 島本須美 辻村真人 京田尚子
      納谷悟朗 永井一郎 宮内幸平
      八奈見乗児 矢田稔 吉田理保子

ストーリー
かつて人類は自然を征服し繁栄をきわめたが、「火の7日間」と呼ばれる大戦争で産業文明は壊滅した。
それからおよそ千年、わずかに生き残った人類は巨大な蟲類が棲み、有毒な瘴気を発する菌類の広大な森・腐海に征服されようとしていた。
腐海のほとりに、海からの風によって瘴気から守られている小国・風の谷があった。
その族長ジルの娘ナウシカはメーヴェにのって鳥のように飛び、人々の嫌う巨大な蟲・王蟲と心をかよわせる自然との不思議な親和力を持っていた。
ある夜、風の谷に巨大な輸送機が墜落し、翌日巨大な血管のかたまりのようなものが発見された。
それは、「火の7日間」で世界を焼き尽くしたという兵器・巨神兵だった。
ペジテ市の地下から掘り出され、それを奪い取ったトルメキア王国が輸送中に墜落したのである。
墜落を知ったトルメキアの皇女クシャナは、大編隊を風の谷に送り込んで来、ジルを殺しナウシカを人質として連れ去った。
ナウシカは腐海の樹々は汚染された世界を浄化するために大地の毒を自らに取り込み、きれいな結晶にかえて砂となっていて、蟲たちは自然を破壊するものから森を守っていたことを知る。
やがて巨神兵をめぐり闘争が勃発し、風の谷の王妃ナウシカも陰謀渦巻く戦乱に巻き込まれてゆく・・・。


寸評
1997年の「もののけ姫」や、2001年の「千と千尋の神隠し」などによってアニメの巨匠としてすっかり偉くなってしまった感のある宮崎駿だが、それらの作品の原点と言えるのがこの「風の谷のナウシカ」だと思う。
「風の谷のナウシカ」が象徴しているものは容易に想像がつく。
“火の七日間”は核戦争であり、“巨神兵”は核兵器そのものであり、トルメキア軍はその巨神兵という核兵器を持っている核保有国だろう。
田子の浦のヘドロ、水俣湾の水銀汚染などの公害も想像できる。
しかもそれらの汚染された海に牡蠣や魚が戻ってきたことも背景にあるのかもしれない。
生き物のたくましさでもあるのだが、同時に人間の愚かさでもある。

僕は子供の頃に夏休みになれば毎年のように昆虫採集をしていた。
文房具を取り扱っている店では昆虫採集セットを売っていて、プラスチックの注射器、殺虫用のアルコール、防腐液などが入っていた。
トンボ、セミ、バッタ、クワガタの類が空き箱を利用した標本箱を賑わしていた。
あの頃はバッタの種類も多くいたし、タガメやタイコウチ、水スマシなどの水生昆虫もたくさんいた。
昆虫たちをイジメている感覚はなく、むしろ昆虫たちとは友達感覚であった。
そう思っているのは僕だけで、昆虫たちにすれば随分と迷惑な友達であったろう。
僕が腐海の森近くにいたなら、きっとオウムに襲われる運命だったように思う。

作画は後年の作品の方が凝っていると思うが、訴えかけるテーマはシンプルで、それ故に力強いものがあり宮崎駿作品としてはこれが一番だと思っている。
ナウシカは自然を愛する風の谷の姫様で人々の忌み嫌う腐海の蟲達とも心を通わせることができる。
腐海の浄化作用に気付くが、現実の森もCO2を吸収し酸素を生み出し、そして腐葉土となった森の栄養は海へと流れだし海の生き物を豊かにしている。
森と海は一体なのだ。
同じ女性でもトルメキア帝国の司令官であるクシャナは過去に蟲に襲われて左手を失ったことから腐海や蟲に恨みを持ち、自軍の危機に際して再生途中の巨神兵を使う決断をする。
巨神兵が核兵器だとすれば、クシャナのような人物にそんな兵器を持たせれば危険極まりない。
我が国の近くにもそのような指導者がいるが、巨神兵を保有することで他国を制圧しようとするトルメキア帝国の野望は核保有国でもある安保理の常任理事国の思惑と大同小異であろう。

クシャナが率いるトルメキア軍にはクロトワという参謀がいる。
彼は平民出身で出世欲の強い野望家なので、クシャナを退け自分が司令官になる謀反を起こしても良さそうなものだが、そのような行動はとらずストーリーを滑稽にする役目を負っている。
ナウシカに従う面白いおじいさんや、無邪気さを振りまく子ども達も登場して物語を楽しいものにしている。
それらのキャラクターによって、配慮が行き届いた良質なアニメ作品に仕上がっていると言える。
僕はアニメはあまり好きではないのだが、これはいい!



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