おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ガキ帝国

2019-03-05 09:33:40 | 映画
「ガキ帝国」 1981年 日本


監督 井筒和幸
出演 島田紳助 松本竜介 趙方豪 升毅
   紗貴めぐみ 渡辺とく子 夢路いとし
   上岡龍太郎 國村隼 大杉漣

ストーリー
少年院から出てきたリュウは一緒に出院した高を連れ友達のケンとチャボのいる母校へ行った。
二人の話によると、大阪一の繁華街・キタには北神同盟、ミナミにはホープ会などが勢力を広げ、ゴーゴーホールや喫茶店に自由に出入り出来ないという。
数日後、リュウ、ケン、チャボの三人は、仲間がカツアゲされたことから、北神のガキ十人を襲った。
その頃、高は北神に入会、上部組織の暴力団、神竜会の小野から、入会の儀式として凄惨なリンチを受けた。
小野は根性のある高を気に入り、打たれ強いことから“明日のジョー”と名付けた。
ジョーは小野の後ろだてにメキメキ頭角をあらわし、会長を倒しその座を奪った。
縦横無尽に暴れ、ホープ会も傘下にした北神の噂に、リュウたち三人は自由に遊べる街にしなくてはと思う。
ケンの友人がホープ会のガキに改造ガンで射殺された。
三人はホープ会を徹底的に叩きのめし、ケンは会長に重傷を負わせたことで、高校を自ら退学した。
会長を失ったホープ会の残党はリュウとチャボに新グループの会長になって欲しいとやって来る。
最初は渋った二人も、申し出を受け、ピース会と改名してミナミに繰り出すようになった。
ケンは、俺達は自由を愛し、集団化を嫌ったはずだと、二人から離れていく。
その頃、北神同盟は梅田会と改名、大阪全域の不良グループを吸収、暴力団予備軍と化していた。
そして、とうとうリュウ達と梅田会の戦いの日がやって来た。
無数の相手に凄絶な戦いの中で、リュウがフォーク・リフトでジョーを殺害した。
血迷ったガキがチャボを蹴り続けて絶命させてしまう。
数年が過ぎ、夜の街を歩くケンは、今や、機動隊員となったかつての敵と出会う。
したたかに殴りとばすと、追いすがる機動隊員たちをフリ切って飲み屋に飛び込んだ。


寸評
同類の作品を何本も撮っているので、ここで描かれる世界は井筒監督の心の奥底にある源流のようなものなのかもしれない。
作品的には未熟な点を感じるが、「ガキ帝国」 ⇒ 「岸和田少年愚連隊」 ⇒ 「パッチギ!」へと流れていったのだなあと感じさせる作品だ。
その意味でも井筒監督の源流中の源流といえる作品ではないか。
ストーリーはあってないようなもので、不良高校生たちがケンカに明け暮れる毎日の様子を描いているだけ。
漫才コンビの紳助・竜介がメインとあってギャグはあちこちにあって笑える。
特にチャボを演じた松本竜介がなかなかいい味を出していた。
若くして亡くなった松本竜介だが、竜介は漫才人間ではなく役者人間だったのだと思わされた。
強いリーダの影でえらぶっている小さい奴って、いたよなあ~という感じがよく出ていた。
不良の群像には本物を感じないが奇妙なリアリティがある。
凶暴でいて、哀しくて、どこか滑稽で純粋な青春だ。
大阪人の僕は、「大阪の人間でないとわからんやろうなこの映画は」という雰囲気が好きだ。

当時の大阪ににまだ根強く残っていた在日朝鮮人の差別問題にも触れられていて、ケンの友達・ゼニが同胞のコウを日本人にシッポ振ってると言って罵る場面がある。
今や二世・三世であまり話す人がいなくなったと思われる朝鮮語での会話シーンも衝撃的で、彼らが朝鮮語で会話する場面では日本語の字幕が流れる。
在日の問題は解決されたとは言い難いが、ここでの彼らはそんな差別とは関係なく、悪ガキ仲間として交流しているのは民間交流のハシリなのかもしれないな。
政治の世界などはどこ吹く風で、若者たちは心と心でつながっているのだと思わされる。
しかし彼らの行動が正当化されるわけでは決してないのだが。

昔の女友達がポルノ映画に出てるのを知ったときの会話、「懐かしゅうて二回も見てしもうたわ」にはホロリとさせられる。
青春時代、知り合いの女性が「三時のあなた」なるテレビ番組で、日活ロマンポルノ新人オーデション3位となって出ているのを見て、思わずフジテレビに電話して「お前、なにしてんねん・・・」といった事を思い出したシーンだ。
島田紳助が描かれているほど強く見えないのと、喧嘩シーンの殴り合いが学芸会みたいで迫力に乏しいのがこの映画の最大の欠点で、オイオイそこまでやったら死んでしまうでという迫力が欲しかった。

チャボは繰り返されるピストン攻撃で絶命するが、そのピストン攻撃をやているのが工藤とかいう若者で、竜神会の上岡龍太郎が「オイ、あの工藤とかいう奴、よう見とけ。出てきよったら組員にしたろ」などという会話は、こうやって不良少年たちは暴力団員になっていくんだと思わされた。
サラリと描いているが怖いシーンだ。
ラストではケンが機動隊員となっている昔の喧嘩仲間に会って「逮捕したろか」と言われ昔のような殴り合いが始まってしまうい、機動隊に追われたケンが飲み屋に飛び込んで言う「ビール1本!」はスカットする締めだった。


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