末つ森でひとやすみ

映画や音楽、読書メモを中心とした備忘録です。のんびり、マイペースに書いていこうと思います。

旧作覚書き:「ブレッドウィナー」

2021-08-28 22:48:04 | 映画のはなし
今月の旧作覚書きです。

*~*~*~*~*~*~*~*~*

  ブレッドウィナー / 原題: The Breadwinner
・製作国:アイルランド、カナダ、ルクセンブルク
・製作年:2017年(日本公開:2019年12月)

  早稲田松竹の「 カートゥーン・サルーン特集リターンズ! 」で、8月5日(木)に初鑑賞となりました。
   (ケルト三部作の鑑賞記録は、こちらに追記 しました)
  原作の児童書[ 邦訳版 ※さ・え・ら書房/2002年刊 ]は未読です。
  2001年(の恐らく9月~10月)、アメリカ同時多発テロ事件後のアフガニスタンの首都カブールを舞台に、
  父親をタリバンに連行された11歳の少女パヴァーナが、家族とともに苛酷な現状を生きのびるため、
  髪を切り、少年に扮して働き口を見つけ、日々の食料や水を調達し、父親の行方を探し求める姿を描いていきます。
  当時のアフガニスタンは国土の約7割を、1990年代半ば以降に台頭してきたタリバンに支配されていました。
  自分たちの思想実現のためにイスラームの教えを利用し、武力で民を圧する武装組織の統治下に、生きるということ。
  女性の人権がまったく認められない残虐性はもちろん、個人では情のある優しい人物であっても組織の掟に従わねば
  男性ですら無事では済まない苛烈さ。そして、私が一番ショックを受けたのは、劇中劇のように展開される
  パヴァーナの語る冒険物語の終盤で明らかになった、彼女の兄スリマンの最期でした。
  '全てを失っても心の物語は決して消えない' という彼女の父の言葉が示すように、本来、パヴァーナの希望を繋ぐはずの
  '物語' さえ、現実の哀しみが大きく影を落としているのだと気づかされた時、何とも言えない思いが残りました。
  映画は最後、希望を抱かせつつも、非常に厳しい状況下で幕を閉じます。
  この先のアフガニスタン情勢を考えれば、手放しのハッピーエンドにはなり得ないとわかりますし、
  パヴァーナと彼女の家族を待ち受けるだろう今後を思うと、苦しい気持ちになります。
  奇しくも、本作を鑑賞した2021年8月に、この20年間の戦争の結末をあのような形で目にすることになるとは... 。
  アニメ作品ながら、アフガニスタンに暮らす人々についてじっくり考えさせる力を持った映画「ブレッドウィナー」を、
  このタイミングで劇場鑑賞できたことは個人的にとても幸運で有意義であったと、思っています。

コメント