末つ森でひとやすみ

映画や音楽、読書メモを中心とした備忘録です。のんびり、マイペースに書いていこうと思います。

NTライブ/リア王 (2018)

2019-07-16 08:04:20 | PJ版:役者のはなし
鑑賞済み作品のレビュー第7弾は、
今年のナショナル・シアター・ライブでいちばん楽しみにしていた作品、
サー・イアン・マッケラン主演の「リア王」です。

非常に感情を揺さぶられる「リア王」でした。

観劇する習慣が無い人なので、戯曲作品に触れる機会と言えば、
映画化された時と、ライブビューイングものの上映時に限られるのですが、
そうした折に見るシェイクスピア作品は、不慣れなこともあって、
頭で考えながら鑑賞する ・・ という状況に近くなります。

そのため、今回かなり感情面で大きく反応しながら見たことは、自分でも驚きで、
このプロダクションが日本のNTライブに登場して鑑賞できたことが、本当に嬉しいです。

幕開きの、王国を分割する場面。
軍礼装姿のリアに、サー・イアンが以前演じた「 リチャード三世 」を思い出し、
地図をハサミで切っていく等の演出には、4年前に同じくNTライブで見た
サム・メンデス演出 & サイモン・ラッセル・ビール主演の「リア王」 とは、
似たような現代風のアレンジでも、趣向はだいぶ違うな、と感じたり。

メンデス & ビール版のリアは、認知症のイメージがより強かったけれど、
サー・イアンのリアは、老いによる耄碌から逃れられずに狂っていく印象でした。

例えば、長女ゴネリルの居城で、彼女に向かってリアが呪いの言葉を投げつける件りは、
その内容と、そこまで己の感情をコントロールできなくなっているリアの姿とに、強い衝撃を受け、
この後に展開するゴネリルの行動にも納得するしかないほど、インパクトがあります。

そして、私の好きな「リア王」の二大名台詞!

 ■'Thou shouldst not have been old till thou hadst been wise.'
  (知恵をつける前に年を取ってはいけない)

 ■'When we are born, we cry that we are come to this great stage of fools.'
  (赤子が泣きながら生まれて来るのは、阿呆ばかりのこの世に生まれて来たのが悲しいから)

それぞれ、道化と、正気を失ったリアから発せられるのが、とても興味深いです。
特に後者は、両目を抉られ屋敷を追放されたグロスター伯爵と、リアが再会する場面での台詞ですが、
「リア王」は、グロスター伯爵と乞食のトムとの道行きが登場する物語の後半がすごく好きで、
この再会シーンも素晴らしい名場面だと思っているので、サー・イアンの演技で見られて満足です。

ところで、サー・イアンの「リア王」は、オリジナル公開劇場の一つだった シネ・リーブル池袋 で、
4月19日(金)~5月30日(木)までの約1ヶ月半にわたるロングラン上映となり、
'ナショナル・シアター・ライブ・ジャパン=1週間限定上映' という、従来の縛りを覆して、
好評な作品は劇場スケジュール次第で期間延長も可という、喜ばしい前例を作ってくれました。

私は残念ながら、このチャンスを活かすことができず、本作の鑑賞は1回きりだったのですが、
NTライブのファンとして、少しでも上映機会が増えることに繋がるよう、
今後も同シリーズを鑑賞するために、映画館に足を運び続けたいと思います。

また、一昨年の夏 と、昨年の に、アンコール祭りがありましたが、
今年も是非、開催してほしいです~。 本家による上映権管理がだいぶ厳しいようですが、
過去の未見作品はもちろん、やはり、サー・イアンの「リア王」はもう一度見たいので!

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   NTライブ 『リア王』

  ◇原題:National Theatre Live: King Lear
  ◇関連サイト:公式サイト( 日本版 )、IMDb( 関連ページ
  ◇鑑賞日:2019.4.26. 映画館にて
       ♪Sir Ian McKellen / King Lear

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