末つ森でひとやすみ

映画や音楽、読書メモを中心とした備忘録です。のんびり、マイペースに書いていこうと思います。

チャイルド44 森に消えた子供たち

2015-07-19 08:39:57 | 映画のはなし
There is no murder in paradise.

舞台は1953年、スターリン政権下にあるソビエト連邦。
9歳から14歳の子どもたちの変死体が、相次いで見つかるも、
「殺人は資本主義社会が生み出した病気」であり、理想国家ソ連には存在しえないという、
強制的な国家理念の偽りにより、すべては事故として処理。
国家保安省(MGB)のエリート捜査官レオ・デミドフは、自身が追われる立場と
なりながらも、連続殺人事件として危険な捜査に着手します。

映画サイト等で紹介されていた「あらすじ」は、大体こんな感じでしょうか。
そして、原作は2009年版「このミステリーがすごい」海外編第1位に輝いた、
Tom Rob Smith 著「チャイルド44()()」という煽り文句!
出演陣も何気に豪華で、特に、トム・ハーディー、ゲイリー・オールドマンの共演と、
時代背景的な面から、「 裏切りのサーカス 」みたいだったら良いな、と
結構期待しつつ、一方で、期待し過ぎは禁物だからと自制しつつ、鑑賞しました。

感想を一言で表すならば、「もったいない作品」といったところ。
子どもを狙った猟奇殺人の謎を追う要素と、独裁政権下で生きるしかない恐ろしさと、
この二つがストーリーを牽引する両輪である筈なのに、編集バランスが良くないのか、
残念ながら、どちらも何だかボヤけてしまっておりました。

前者については、きっと、宣伝からの推測とのギャップも影響しているように思います。
後者は、独裁体制を支える恐怖政治密告社会の過酷さ を描いた既存の名作
(リンク先は、あくまでも一例として)と、つい比較して見てしまうためでしょう。

不用意な演出なのか、普段はそれほど気に留めない点でも、引っ掛かりを覚えました。

例えば、妙なロシア語風(?)訛りでの英語の台詞まわし。
舞台となっている国や地域と、映画で使われている台詞の言語とが違っても、
あまり神経質にはならない方ですが、今回はさすがに、ロシア語で喋らないなら
何故、潔く、ふつうの英語にしない? と首を傾げたくなるほどでした。

また、ライーサの闘いっぷりには、やはり、どこかで訓練されたスパイなのでは?
とツッコミを入れたくなり、シリアス系作品で、これはないかな ・・ と。

あまり入り込めなかったのも、物語の輪郭を曖昧に感じた原因かもしれません。

ただし、集中できなかった一因は私の方にもあり、現時点で原作は未読ですが、
映画冒頭、プロローグ的に挿入された "ホロドモール" や "赤軍のベルリン制圧" を見て、
スターリンが政権を掌握していた期間と、主要な出来事をさらっておくのを忘れたな
―― と、妙なところが気になってしまったのです。

結論から言うと、さらっておいた方が、おそらく、
ラストでの、レオの処遇に対する理解度の深さが違ったでしょう。

なお、原作既読者によれば、映画の犯人は、原作とは設定が異なる(!)そうで
(原作だと、"ホロドモール" がもっと重要な意味を持つのだとか)
映画版に限れば、スターリン時代をさらわずとも、さほど支障は無いようです。

映画だけを見た場合、レオが自身を窮地に追い込んでしまうターニング・ポイントには、
必ず "子ども" が絡んでおり、その都度、エリート捜査官としてではない、
一人の人間であるレオ・デミドフの素顔が見え、"孤児" というバックグラウンドを
示すために、あのプロローグが必要だった、という作りになっていたのかな?

ちなみに、原作「チャイルド44」には続編があり、「グラーグ57()()」
「エージェント6()()」で、"The Child 44 Trilogy" なのだそう。
続編も、国家体制に翻弄されながら、事件に巻き込まれ、
家族との絆を問われながら、過酷な状況下を生き抜く構成のようです。

映画よりも、寧ろ、TVドラマ向けのシリーズなのかもしれません。

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   映画 『チャイルド44 森に消えた子供たち』

  ◇原題:Child 44
  ◇関連サイト:公式サイト ( 日本版 )、IMDb ( 関連ページ
  ◇鑑賞日:2015.7.17. 映画館にて

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