末つ森でひとやすみ

映画や音楽、読書メモを中心とした備忘録です。のんびり、マイペースに書いていこうと思います。

遥かなる勝利へ

2013-12-10 21:44:43 | 映画のはなし
ロシアの巨匠ニキータ・ミハルコフが手がける、
戦争スペクタクル三部作の完結編。
第一部、第二部ともDVD鑑賞だったので、
第三部はスクリーンで見ようと、映画館まで行ってきました。

  *~*~*~*

第一部「 太陽に灼かれて 」は、
1994年にロシア・フランス合作で製作され(日本公開は1995年)、
カンヌ国際映画祭審査員特別グランプリ、
アカデミー賞外国語映画賞を受賞している名作です。
描かれるのは、1936年夏の、ある一日の出来事。
陽光が燦々と降りそそぎ、ゆったりとした時間が流れる、
別荘地の美しい情景 ・・ にも関わらず、
画面からは、不安と、緊張が、静かに、絶えず伝わってきて、
ロシア革命の英雄だったコトフ大佐の運命は、終盤、一気に暗転。
大粛清の犠牲者となります。

何より、コトフ大佐とは深い因縁関係にある、
ドミトリ(ミーチャ)の存在感が素晴らしい!
地平線より現れた気球から垂れ下がる、
スターリンの巨大な肖像に向かって敬礼した表情と、
彼が最後にとった行動からは、
時代に翻弄されつつ生きなければならなかった、
人間の痛ましさが余すところなく表現されていて、
見る者の心に、深く刺さります。

ドミトリの虚ろな瞳と、愛らしい少女ナージャの姿が、
ロシアン・タンゴの名曲「疲れた太陽」
(映画では "偽りの太陽" と訳されています)
の印象的なメロディーと共に、鑑賞後も強く心に残りました。

  *~*~*~*

個人的には、「太陽に灼かれて」は続編など作らず、
この一本で完結してくれれば良かったのに ・・ という思いが、正直あります。
何故なら、第二部「 戦火のナージャ (2010年ロシア製作/2011年日本公開)」は、
かなりテイストの違う作品になっていたので。

そもそも、衝撃を受け、重く余韻を残した、前作のラストを覆してまで作られた続編
・・ という時点で、鑑賞側のハードルは上がるものですが、
そうした要素を除いても、前作で秀逸だった、美しい映像で、繊細に、
けれど、鋭く抉るように描かれていた人間ドラマが、薄れてしまっていたのは残念。

一方で、第二次世界大戦、独ソ戦の苛酷な戦場を舞台に、
戦時下では如何に、無意味に人が殺されていくのかを、容赦なく描いていた点では、
かなり凄まじいものがありました。

  *~*~*~*

さて、肝心の第三部ですが、
まずは、物語の完結が見られた事に感謝。
「戦火のナージャ」は、本当に、"途中" の話として構成されていて、
宙ぶらりんな状態で終わっていましたから。

主人公たちの "ドラマ" も、第二部よりは踏み込んだ描写が見られました。

とは言え、第一部に較べると、
大味になってしまった感は、やはり否めず、
ストーリー的には「太陽に灼かれて」の最終章でも、
作風としては「戦火のナージャ」の続編という印象になりました。

第一部 → 第二部、第三部と進むうちに、
映画の主軸がシフトしてしまった、ということなのかなぁ。

それにしても、父娘の再会が、あのような形で果たされるとは。。

映画の幕切れの、一瞬前に、雲間から姿を見せた太陽は、
激動の時代をひたすらに生き抜いたコトフが、
最後に掴んだ "真実の光" の象徴なのでしょうか。


*~*~*~*~*~*~*~*~*

   映画 『遥かなる勝利へ』

  ◇関連サイト:公式サイト ( 日本版
  ◇鑑賞日:2013.12.6. 映画館にて