外壁に使われている石の落ち着いた色合いと、 切り妻屋根の姿が美しいこの洋館は、 英国貴族の邸宅にならった、古典様式の造りだそうです。 ところで、旧古河庭園の特徴と言えば、 “ 洋 ” と “ 和 ” の調和した庭の趣きですが、 実は洋館も同様で、この外観からはまったく想像できないものの、 扉を開けると、そこには巧みに配された < 和の空間 > が広がっています。 *~*~*~*~*~*~*~*~* |
◇ 階段 ◇ 古い建物にも関わらず、階段の勾配が緩やかで、 ステップの前後の幅も広めで歩きやすいのは、 和装でも洋装 ( ロングドレス ) でも、裾捌きの大変な女性が 昇り降りしやすいように、配慮されてのことだそうです。 ◇ 2階ホール ◇ 1階同様、いかにも洋館らしいホールで、 確か、天窓もあった気がします ( 既に記憶があやふや ・・ 汗 ) 。 ぐるりは漆喰塗りの白い壁と、各々の部屋に続く洋風の扉で囲まれており、 この先に < 和室 > があるとは、微塵も感じさせない造りになっています。 ◇ 仏間 ◇ 扉を開けると、まず、板敷きのスペースがありますが、 ホールからいきなり、目の前に畳が現れたら違和感を覚えるだろうと、 視覚的に、ワンクッション置いているのだそうです。 これは、邸内のすべての和室 ( 但し1室を除く ) に共通した配慮とのこと。 当時、仏間として使われていたこの部屋の壁のデザインは、 四方を黒い枠で縁取ってあり、襖のように見える造りとなっていますが、 これにより、空間に奥行きを感じさせる効果があるようです。 ◇ 客間 ( 洋室 ) ◇ この洋間自体は、特に何の変哲もない普通の造りですが、 部屋の北東にある扉をくぐると、 ホールからは見えないようになっている板敷きの廊下と、 和室の客間に出ることができます。 |
<写真手前より> 2階部分 客間 ( 和室二間 ) ↓ 居間 ( 和室二間 ) |
◇ 客間 ( 二間つづきの和室 ) ◇ 手前 ( 北側 ) が十二畳で、奥 ( 南側 ) が十五畳だそうです。 床の間は、最も格式の高い 「 真 」 の造りで、 角柱と書院造りの本床による、きっちりとした厳格な雰囲気のなかにも、 すべての木材を丁寧に面取りすることで、程よい柔らかさを有しているとのこと。 天井は格子状で、杉板の木目が縦・横と互い違いになるような市松模様の配置。 また、2つの和室の間には 「 筬欄間 」 があります。 ところで、十二畳の部屋の北側と、十五畳の部屋の東側には、 それぞれ、板敷きのスペースと窓がありますが、 ここの窓枠を、外壁と内壁とで少しずつ左右にずらして造ることにより、 遠近法のトリックが生まれ、板敷きの部分がこの先にも続いていく、 “ 長い廊下 ” のように見えます。 ◇ 居間 ( 二間つづきの和室 ) ◇ ここより先、本館2階の南側の部分は、 家族のプライベート・スペースとして使われたそうです。 2つの部屋を仕切る欄間は、当時、この土地からよく見えたという、 “ 富士山 ” をモチーフとしたデザインになっています。 この居間の特徴は、茶室でもないのに、南側の和室に 「 炉 」 がある点で、 洋室の暖炉からヒントを得て、部屋の暖をとる目的で造られたそうです。 ( ちなみに、畳の敷かれた向きや、炉の位置はうろ覚えなので、 間取図での描き方もかなり怪しいです。 ごめんなさい ・・ 大汗 ) |
<写真右奥より> 2階部分 居間 ( 和室二間 ) ↓ 居間 ( 和室・子供部屋含 ) ↓ 主寝室 ( 洋室 ) |
◇ 居間 ( 和室×2部屋 ) ◇ 露台に面して作られている、2つの和室ですが、 東側の部屋は、子供部屋として使用されていたそうです。 そう言えば、屋内から露台へ出るための扉が 見あたらなかったように思うのですが ・・ たんに、見落としただけ? この解説付きの見学会は、約1時間ほどかかるので、 この辺りは、丁度、集中力が途切れかかってきたところなのでした (>_<) ◇ 主寝室 ( 洋室 ) と手水の間 ( 和室 ) ◇ 虎之助夫妻の寝室だった部屋で、 マントルピースには、二人の写真が飾られていました。 ( 奥さんは、西郷隆盛の姪にあたる人だそうです ) 主寝室の北側には、身支度を整えるための小部屋が続いていますが、 邸内で唯一、扉を明けてすぐの位置から畳が敷かれている和室になります。 当初は、この小部屋 ( 手水の間 ) の造りも洋室だったそうですが、 和装で過ごすことが多かったため、着替えをしやすいよう、 後から畳を敷き詰めたことで、こうなってしまったのだとか。 クローゼットの中には、和箪笥をまるまる収納していたそうです。 *~*~*~*~*~*~*~*~* |
この後、トイレと浴室を見て、見学会は終了しました。 現在公開されていない、本館の屋根裏部屋と別館は、 当時、使用人の人たちが使っていたそうです。 ( 古河家の家族3名に対して、常時、50名の使用人がいたとのこと ) それにしても、贅沢な建物でした。 たんに “ 豪華 ” ・・ というだけでなく、 遠近法とか、いろいろな視覚効果を取り入れた造りになっているところが、 非常に面白いですよね。 J・コンドルの最晩年の設計になるのだそうです。 なお、館内は撮影禁止です。 記事中に記憶違いの誤り等があった場合は、ご容赦ください。 |