ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

計算高い老人の 恋は盲目

2018-10-01 17:45:02 | 日記
人は時折、自分でもよくわからない感情にとらわれる。この感情を、トランプ
米大統領は「恋」という言葉で表現し、次のように語った。この「恋」の相手
は北朝鮮の若きドン・金正恩委員長だというから、なんとも驚きである。

トランプ米大統領は29日、ウェストバージニア州ホイーリングで開かれた選
挙集会で北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長について語り、
「恋に落ちた」などと冗談めかしながら良好な関係を強調した。
トランプ氏は集会の演説で北朝鮮が核実験やミサイル発射を自制していること
に触れ、「私は彼(金氏)が好きだ。彼も私が好きだ。こんなことを言っても
許されるかな?」と述べた。
                (朝日新聞DIGITAL 9月30日配信)

自分でもよくわからない強い親愛の情、ーーそういう感情にとらわれたからと
いって、この老大統領を咎めることはできない。懸念すべきだとしたら、彼が
自分でもよくわからない激しい嫌悪の情、つまり敵対感情にとらわれたときだ
ろう。彼は中国の習近平国家主席に対して、そういう敵対感情を抱いたのでは
ないか。だがら彼は、何かと中国を目の敵にし、貿易問題をとらえて、執拗に
関税の制裁措置を課したりするのではないか。

そうに違いない、と私は考えてきた。そう考えないと、トランプ米政権が中国
に仕掛けた貿易戦争のしつこさ・執拗さが理解できないからである。数日前、
トランプ大統領は「習主席はもう友人ではないかも知れない」と語ったという
が、こう語ったとき、彼は習主席に対する自分の敵対感情を見すえていたのだ
ろう。

だが、きょう新聞で、以下の記事を目にして、私の認識はガラリと変わった。
彼の対中政策は、米国内の利害関心を踏まえた、緻密な計算に基づくものだっ
たのだと、理解を新たにしたからである。

米国は長らく「中国の発展を支援し、国際秩序に組み込めば、改革や民主化も
進む」と期待し、対中関与に基軸を置いてきた。だがここ数年、習近平(シー
チンピン)体制下で進んだ軍事力の増強や国内統制の強化に、オバマ政権終盤
から失望が広がった。
さらに失望を懸念に一変させたのが、習政権が打ち出したシルクロード経済圏
構想「一帯一路」と、21世紀半ばには経済・科学技術・軍事で世界トップレ
ベルを目指す「強国路線」だ。
国家統制に重きを置く中国モデルで米主導の国際秩序に取って代わろうとして
いるのでは。ハイテク分野で覇権を奪おうとしているのでは――。党派を超えた
脅威論に、知財侵害や国有企業優遇に不満を募らせる米産業界も同調。昨年12
月に発表された指針「国家安全保障戦略」は中国を「(秩序変更を試みる)修
正主義勢力」と定義。軍事的にも「封じ込め」に踏み出す姿勢が鮮明になった。
一方、巨額の対中赤字解消はトランプ氏にとって大統領選以来の公約だ。「貿
易赤字=悪」の固定観念が強いうえ、国際競争で鉄鋼業などが衰退した「ラス
トベルト(さびついた工業地帯)」で固い支持を得てきた。
                      (朝日新聞10月1日付)

合理的な計算と、非合理な感情。対北政策に関しても、この2つのベクトルは
働くのだろうか。それとも、キム委員長の北朝鮮に対しては、「恋は盲目」の
ままなのだろうか。「可愛さ余って憎さ百倍」となったとき、大掛かりな軍事
攻撃が始まる。キム君よ、恋に狂った老人を手玉に取るのは、やめたほうがい
い。危険な火遊びになりかねませんぜ。
コメント
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