ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

1億総活躍、それから

2016-05-20 17:23:46 | 日記
これまで、「1億総活躍社会」に関する社説を二本とりあげ、それに
ついて論じてきた。この項を書き終えたのと時を等しくして、同じテ
ーマについて論じた社説が、他の新聞社からも発信された。

朝日は、前回とりあげた社説とは別に、「1億総活躍 具体化への道
筋示せ」というタイトルで、再びこのテーマについて論じている。ま
た毎日は、これも前回とりあげた社説とは別に、「1億総活躍プラン 
実現への確証はあるか」というタイトルをかかげ、新たにこのテーマ
について論じている。
他には、読売が「1億活躍プラン 保育と介護の不安なくしたい」、
産経が「1億総活躍プラン 画餅に終わらぬ財源示せ」、東京が「1
億活躍プラン 実行、実現への道筋は?」といった具合である。

これだけ似たり寄ったりの社説が出そろうのは、政府の動向が関係し
ている。「1億総活躍社会」に関する政府のまとめ文書が、やっと公
表されたのだ。

このブログでも、「1億総活躍」のテーマにもう少し付き合ってみた
いが、今回はなるべく簡単に済ませたい。これらの社説を一つひとつ
精査するのは、書く方にとっても読む方にとっても、時間の浪費にな
るから、それはやめにしたいのだ。これらはタイトルだけでなく、内
容も似たり寄ったりで、いずれも新鮮味がないからである。

これらの中では、朝日の社説がいちばん分かりやすいので、とりあえ
ず代表として、これをとりあげることにしよう。タイトルからも分か
るように、朝日は、政府のプランが「具体化への道筋」を示せていな
いと批判している。どういうことか。プランにかかげられた政策の一
つひとつが「財源の問題から」、実行されるめどが立たず、「検討項
目にとどまっている」のが問題だというのである。産経がタイトルで
言うように、「1億総活躍プラン 画餅に終わらぬ財源示せ」という
ことである。

この主張は他紙にも見られるものだが、有り体に言うと、これは前回
の朝日社説の焼き直しにすぎない。「1億総活躍社会のプランを実現
するためには、財源が要る」というのが、前回の朝日の主張であった。
これは裏を返すと「財源がなければ、プランは実現できない」という
ことにほかならず、これが今回の朝日社説の主張なのである。
「だからこそ、財源を確保するために、消費増税を」というもう一つ
の主張が、前回には、朝日独自のものとして加えられていた。だが今
回は、この主張が撤回されている。朝日は方針を転換したのか、と思
ったが、さにあらず。消費増税を行っても、プラン実現の財源にはま
だ足りない、という事情があるようなのだ。朝日は言う。

「そもそも子育て支援は、「税と社会保障の一体改革」で充実を約束
している。しかし消費税率を10%にしても財源がなお3千億円足り
ない状態だ。いまだにめどが立たず、保育士の配置を厚くするなどの
施策が置き去りにされている。」

これは、その方面の事情に明るい人ならば、だれもが知っている国家
財政の内情だろう。こんな事実をことさらとりあげて、政府批判を行
うでもなく、さらりと前言をひるがえす朝日の態度も困ったものだ。
――いや、困っているのはこちらよりも、朝日の側なのかも知れない。

「まずは消費税率を予定通り10%に上げる。それでも財源が不足す
る現状を直視し、国民が納得できる確保策を示した上で、一つずつ着
実に実行していく。それが責任ある態度である。」

え?これが結論なの?・・・・・・と肩透かしを食らった感じをいだくのは、
私だけではないだろう。この当たり障りのない、まるで牙を抜かれた
飼い犬のような、朝日らしからぬ朝日の社説には、執筆者の困惑ぶり
が透けて見える。

まあ、他の新聞の社説も、似たり寄ったりなんだけどね。

コメント
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