運命のゆくえ(その4)

　不幸のどん底にいる人たちは、運命を克服するために激励の言葉を欲している、と書いたが、本当はすこし違っていて、彼らが欲しているのは、実はその先にある具体的な指針にほかならない。彼らが欲しているのは、我が身の不幸な運命を克服する指針になるような、具体的な方法を教えてくれる言葉なのである。
　世にある名言は、だが肝心のそこのところを示してくれない。その点で何か物足りない、歯痒い感じを禁じ得ないが、この点はひとまず良しということにしよう。というのも、それを書けば、つまり運命を克服する具体的方法を書けば、それは宗教の言葉、もしくは詐欺師の言葉に限りなく近くなってしまうからである。
　「何も考えないで、神さまにお祈りしなさい。あなたのその熱意が大事なのですよ。毎日お祈りを欠かさなければ、きっとあなたは今の不幸から抜け出せます」
　「ちょっと高価ですがね、決して無駄にはなりませんよ。最先端の技術で特別な処理をしたこの金のネックレスをお買いなさい。いつもこれを身に着けるようにすれば、きっとあなたは今の不幸から抜け出せます。嘘ではありません。この私が保証します」
　こういった誘い文句が、不幸のどん底にいる人にはなぜかどうしようもなく魅力的に見えてくるものなのである。(あなにも心当たりがおありですか？　つづく)