青春とは、奇妙なものだ。 外部は赤く輝いているが、内部ではなにも感 じられないのだ。
これはサルトルの言葉だが、「外部は赤く輝いている」というのは、歳月を経て外側からそれを眺めれば、という意味であろう。「内部ではなにも感じられない」というのは、その只中にいる当人にとっては、という意味に違いない。けれども青春の只中にいた当時の(17歳の)私の心の内部には、不安に似た黒い鬱々としたものが巣くっていた。私は「青春は楽しい」などと思わなかったし、「自分は今、青春の只中にいるのだ」という実感も意識も持たなかった。ただ重たい心を引きずりながら、毎日を深い霧の中にいるみたいに生きていた気がする。
当時の私は、無性に友人が欲しかった。とりわけ異性の友人が……。ガールフレンドが欲しいのに、男子だけの校舎と自宅の間を往復して、女性とは全く縁のない毎日を送っている内向型高校生の自分が、私は嫌でたまらなかった。私はドラマや映画に描かれる、精悍で屈託のない外向性の若者のようでありたかった。
(つづく)