Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

2016-02-19 01:00:00 | 雪3年4部(二度目の闇~線の中)
「うわっ‥先輩!!」



雪は思わず声を上げた。

傷ついた彼の手から、だんだんと血が滲んで来ている。

その血を見て、今まで固まっていた健太も遂に口を開いた。

「ひぃっ!血が!だだだだ大丈夫か?!」



「後にして下さい!」



しかし雪は厳しい口調でそう言って、健太の介入を許さなかった。

「先輩、怪我してるんです。とりあえず病院行くんで、後で話しましょう」

「え?いやその‥あ‥おぉ。いや‥」



健太はタジタジと狼狽えながら、一応「俺が連れて行こうか‥?」と聞くも、

「結構です。後で連絡しますので」



と雪にバッサリと断られ、ただその場に立ち竦むことしか出来なかった。

「本当に大丈夫ですか?ちょっと見せて下さい」「おいおいおいおいおい!」



すると向こう側から、柳楓と佐藤広隆がこちらに向かってバタバタと駆けて来た。

柳は淳のケガを見て、目を剥きながら憤慨する。

「ぎゃっ!血が!おい、早く病院連れてけ!」「はい、今行くところで‥」

「マジでありえねぇ!!」「キャアアアッ!」



すると今度は聡美と太一が駆けつけ、先程起こった出来事に対して大騒ぎを始めた。

「おいアンタなぁ!絶対何かやらかすと思ってたよ!」

「ああもう!あたしも一緒に行けば良かった!雪、大丈夫?!先輩大丈夫ですか?!」

「うん、大丈夫」「聡美、とりあえず先行くわ」「うん、うん!」

「福井、車のドアを閉めといてくれないか?」「ハイ!」



聡美は厳しい形相で、健太の方を振り返る。

「結局血を見る結果かよ!」



文句を言う柳を押しのけ、聡美は健太をポカポカと叩きながらその巨体を叱責した。

「もうっ!またですか?!またやらかしたんですかっ?!

もう!いい加減にしてよ!この極悪人!」
「いやその‥」






すると太一は聡美の手を掴み、幾分強引に健太から彼女を引き離す。

「ええ?!何よ?!離してよ、ちょっと!ねぇ!」



健太は何も言うことが出来ないまま、真っ青になって俯いた。

突然巻き起こったこの事態に、未だ頭がついていかない。

「あ‥くそっ‥」



だんだんと小さくなる、青田淳と赤山雪の背中。

健太は呆然と二人を眺めながら、こう口にするのがせいぜいだった。

「やべー‥」







そして二人は寄り添いながら、病院を目指してゆっくりと進む。

「せ、先輩、大丈夫ですか?」



雪は自身のセーターの裾で彼の手を包みながら、辺りを見回している。

「早く大学病院に‥」

「雪ちゃん、雪ちゃん、落ち着いて」



遠くで健太を責める皆の声がしていた。お前らには関係ないだろという健太の言葉も。

けれど雪の耳には何一つ入って来ない。早く大学病院に行かなければと、ただそれだけが彼女を支配する。

しかしそんな雪とは対照的に、彼は至極冷静だった。

「病院‥病院‥!」

「大学病院にまで行く必要は無いよ。血が沢山出てるから深刻に見えるだけ。

寒いから服捲るの止めな」




彼はそう言って、雪の手から自身の手を外した。

いつものように微笑みながら、雪に向かって声を掛ける。

「俺は大丈夫だから」









じわりと、彼女の目から涙が滲む音が、今微かに聞こえた気がした。

淳は目を丸くしながら、そんな彼女の瞳を見つめる。



そしてケガの無い左手を、彼女の瞳に向かって伸ばした。

その指先に、彼女の心の欠片が触れる‥。



‥と思われたのだが、次の瞬間雪は、彼の傷ついた右手の手首を凝視して声を上げた。

「あっ!これもダメになっちゃってるじゃん!!」



雪の視線の先には、彼が付けている腕時計があった。ガラス部分が割れている。

「手首にガラス刺さってませんか?!」






そのヒビの入った腕時計を見た時、彼の目が諦めに近い色を帯びて沈んだ。

けれど彼はすぐに平静を取り戻し、狼狽える彼女に向かって優しく声を掛ける。

「大丈夫。刺さってないよ。今日は雪ちゃんがくれた時計をしてなかったのが幸いだったな」

「でもこれ‥先輩のお母さんからのプレゼントじゃなかったですか?」



「ど‥どうしよ‥」

「これ、外してポケットに入れてくれる?」「は、はい!」



彼が大切にしていたその時計を、雪はゆっくりと外して彼のポケットに入れた。

未だに向こうでは、健太を責める皆の声が聞こえる。

「それじゃ一旦保健室へ急ぎましょう。この近くだから‥」



そう言いながら、雪が後ろを振り返った時だった。

そこに佇む、彼の姿が見えたのは。



河村亮が、こちらを見ながらその場に立ち尽くしている。

雪は亮の方を見ながら、思わず目を丸くした‥。







・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<滲>でした。

泣きそうな顔で先輩を見上げる雪の表情が印象的でした。

先輩の「泣いてる?泣いてる?」攻撃はおあずけでしたが‥。

そして先輩のブルガリの時計、壊れちゃいましたね。それでも雪がくれた時計が壊れてたら‥と思うと、

健太の行く末が恐ろしすぎるのでちょっとホッとしたような‥残念なような‥


次回は<呪縛>です。


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二度目の闇

2016-02-17 01:00:00 | 雪3年4部(二度目の闇~線の中)


河村亮は肩で息をしながら、両脇に縋り付いた柳楓と佐藤広隆の手を振り解こうともがいていた。

焦れる亮達の向こう側には、地面に倒れ込んだ雪と淳、そしてその目の前に立ち尽くす柳瀬健太が居る。







駐車場に停まった淳の車は、運転席側のドアが開けっ放しになっていた。

現状を理解した亮は、いつしか彼らの元へ向かう足を止め、その場で成り行きをじっと見つめる。

「‥‥‥‥」







「怪我は無いよね?」



淳はそう言って雪の髪に手を伸ばした。

雪は混乱と動揺の中で、彼に向かって口を開く。

「先輩?!どうして‥」「ん?怪我は無いんだよね?」

「いやいや、問題は私の方じゃなくて‥!」



「ケガ、無いですか?!頭は?!」



雪は彼の頭に手を伸ばし、そこにケガが無いかどうかを確認した。

雪を庇うようにして、自分もろとも地面に倒れ込んだのだ。流血していても不思議じゃない。

けれど今のところ、どうやら頭は大丈夫そうだった。

「他には‥」



そう言って、雪が彼の手に視線を移したときだった。

思わずサッと雪の顔が青ざめる。



「先輩!先輩、手が‥!」



自身の肩に添えられた彼の手の甲は、痛々しく擦り切れ血が滲んでいた。

雪は真っ青になりながら、バッと彼の顔を見上げる。

「先‥!」「先輩‥」



しかし彼の視線の先は、心配そうに彼を見上げる彼女の方ではなかった。

瞬きもしないままただじっと、目の前に居るその相手を見つめている。






雪の視線もまた、彼の視線の先を追った。

そこには、呆然として立ち尽くす加害者の姿がある。



「え‥え‥?」



二人から凝視され続ける柳瀬健太は、汗をダラダラと流しながら狼狽した。

そんな健太に向かって、淳が静かに口を開く。

「雪に何するんです」



彼女の肩を抱く、その傷ついた手に力がこもる。



「ねぇ」



「限度というものがあるでしょう。どうして、」



雪は彼の顔から、目を逸らすことが出来なかった。

見据えられている健太は、「いや‥その‥」と口ごもる。




だんだんと彼の瞳から、光という光が消えて行く。

そしてそこに残ったのは、何もかもが剥ぎ取られた後の、彼の核心だった。


「どうして線を越えるんだ‥」




ーAcross the lineー

その線を越える者には、それなりの報復が必要だ。

今目の前に居るこの男にも、等しく罪を償わせる必要がーーー‥。









瞬間、目の前が真っ暗になった。

雪は咄嗟に彼に向かって手を伸ばし、その瞳を柔らかな手で覆う。



ふと時の狭間に入り込んだような、静寂が三人を包み込んだ。

雪はその手を外さぬままゆっくりと、柳瀬健太の方を振り返る。






雪の脳裏に、あの夏の終わりに目にした、彼の闇が蘇った。



恐る恐る覗き込んだ路地裏で見た、彼の姿。

普段からは想像もつかないその姿に、思わず背筋が凍った。



泥棒を執拗に蹴り上げる彼の瞳には、暗い闇だけが写り込んでいた。

何の感情も読み取れないような、憐憫一つも赦さないような‥。






足が痛むからではなく、雪はその彼の姿が恐ろしくて、足が竦んで、その場から動けなかった。

ああこれが「青田淳の本性」なのだと悟った、あの暗い夜ーーーー‥。








雪は彼の瞳を手で覆い続けながら、再び目にしたその闇が去るのを待っていた。

淳は何も口にせず、ただその場でじっとしている。



その沈黙を破ったのは健太だった。真っ青な顔で動揺している。

「あ、あおあおあお‥青田、大丈夫か?てかどうしていきなり‥!うう‥!」



「ス‥スマンかった。大した怪我じゃないんだろ‥?」



目を閉じた淳の耳に、健太がたたらを踏む足音が聞こえた。

適当に言葉を濁しこのまま去るつもりなのかもしれない、

そう思った淳は、ピクリと身体を動かし、雪に向かって口を開く。

「雪ちゃん、これちょっと‥外して。雪ちゃん」「!」



そう言いながら、淳は雪の腕を解こうと身を捩った。

瞳からは手が外されたが、身体はまだ押さえられていた。淳は俯いたままこう繰り返す。

「ちょっと雪ちゃん、ね?ちょっと‥」

「先輩」







雪は彼の瞳を見つめながら、ゆっくりとその首を横に振った。

彼の目には、まだ微かに闇が揺れているのだ。



ふぅ、ふぅ、と小さく喘ぐように息をする淳。

しかし静かに彼を見つめる彼女を見ている内に、いつしか淳の呼吸は落ち着いて行った。

「‥‥‥‥」







・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<二度目の闇>でした。

今回ここの淳の台詞、意訳しました。

直訳だとこういう感じです。

「どうしてほどほど(適当)に出来ない‥」



ですね。本気で怒ってんな~先輩‥。

「ほどほどに」というと、この辺りを思い出しますね。

高校時代、岡村泰士と亮の喧嘩の辺りです。



この時も「ほどほどに出来なかった」=「線を超えた」岡村に対して、同じような目をしていました。



そして今回、その目を手で覆った雪ちゃんの存在がなんと大きいこと!!

以前下着泥棒を蹴り飛ばしていた先輩を見た時は、恐ろしくて震えていた子が‥。

雪ちゃんが先輩の人間性を受け入れた今だからこそ、出来ることですよね。


しかし今までのストーリー展開が「健太直美健太直美過去問健太直美‥」だったからか、

尚の事心に迫る感じがします‥!笑


次回は<滲>です。しん、と読みます。


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ブログ開設1000日!

2016-02-17 00:00:00 | 日記
こんばんは~。Yukkanenです。

実は今日、2月17日で、ブログ開設1000日なんですってよ‥ビックリ‥

今現在記事の更新は一日置きですし、出産で二ヶ月休んだりもしたので、

継続して1000日ってわけじゃないんですが‥

まぁせっかくなので、久しぶりに不定期更新です


それを記念して(?)、久々にムービーも作ってみました。

Yuki's song

今まで雪ちゃんだけにスポットを当てたものって作ったことないな~と思っていた矢先、

良い曲に出会えたので作成してみました

良かったら観てみて下さいね~


しかし本家も4部に入り、ドラマも始まり、ブログ開設時からは想像もつかない展開でビックリです。

そして開設一年の時の記事に、「本家はこの夏最終回を迎えるらしいです」とか書いてあってそれにもビックリ‥。

あれから二年近く経ちますが‥結構まだまだな感じとは‥誰も予想し得なかったですね

いや嬉しい誤算なんですけどね!

これからも続けられる限り続けて行きますので、どうぞよろしくお願いします~~


この後一時に記事更新です。そちらもよろしくです


健太との対決(3)

2016-02-15 01:00:00 | 雪3年4部(彼との対話~健太との対決)


またしても両手をぶらんと下げたまま、健太は固まった。

雪は厳しい表情を崩さぬまま、キッと健太のことを見据える。



「その反応を見ると、間違いないようですね」



そう言ってから、雪は徐々にこの場を後にする準備を始めた。

これ以上健太を刺激すると、きっと厄介なことになる‥。

「ですからもう、何度も変な弁解をするのは止めて、

今回の件、事の収拾を試みて下さい」




このままソロソロと健太の前から姿を消せば良い。

そう思って、一歩踏み出そうとした時だった。







「おいっ!!」



突然、凄まじい力で腕を引っ張られた。

その大声と力の強さ、そして何よりその剣幕に、雪は思わずサッと顔が青ざめる。



見上げたその先には、荒々しく肩で息をする健太の姿があった。

怒りのあまり顔にも首にも血管が浮き出ている。



固まる雪。

そんな彼女の上方から、健太の大きな手が伸びてくる。

 





すると次の瞬間、雪の視界がグルングルンと回り始めた。

「何回言わせんだっ?!俺じゃねーっつの!

証拠あんのか?!ねーだろ?!どうしてこんな仕打ちすんだよぉ!おらぁ!」




健太は必死の形相で、力加減も無しに雪の身体を前後に揺さぶる。

「俺がやったって言い張りやがって!次はどうしようってんだ?!

マジで学科長に言いに行くつもりか?!

俺が卒験の為に、教授達に良い顔しようとどれほど努力してると思ってんだっ!」




「あ!てかお前学科長に言いに行くって嘘だったんだろ?!このクソがっ!」



回り続ける視界。「ちょ‥待っ‥」と呟いた雪の声は、健太には届かなかった。

「んなナンセンスなことやるなら、他のヤツ探してやれよ!」



「俺に絡んで来んじゃねぇ!!」



そして健太は雪を揺さぶり続けた挙句、バッと強引に突き放した。

雪の視界はグラグラと揺れ、気持ち悪さを覚えた雪は思わず嘔吐く。

「おえっ‥」「クソが‥何てヤツだ‥!」



しかし健太はそんな雪の様子に気付かず、怒りにまかせて更に大声で捲し立てた。

「おいお前!ちゃんと考えて行動しろよ?!」



「どっかで俺が泥棒だなんて言ってみろ!マジでぶっ殺‥」



健太がその先を口にしようとした時、雪に異変が起こった。

揺れる視界のせいで、地面がグラリと歪む。



「あ‥」



平衡感覚を失くした雪の足元がフラフラともつれ、重心が後ろへと傾いた。

徐々に天地がひっくり返る‥。







その時、後方から彼女に走り寄る人物があった。

スローモーションのように倒れて行く彼女に向かって、その人物は両手を差し伸べる。







後ろへと傾いで行く彼女の後方に、その人物が重なって倒れて行く。

咄嗟に振り向いた視線の先には、みるみる迫り来る地面があった。



そして倒れる瞬間、そこにあったコンクリート杭が、その人物の手の甲を掠める。







ドサッ、という音と共に、雪とその人物は同時に地面に倒れ込んだ。

健太はその場で手を伸ばしながら、突然の出来事に面食らうばかりだ。








駐車場には、見覚えのある白い車がいつの間にか停まっていた。

そこから出て来たその人物が、雪と共に倒れている。








突然の大きな衝撃。雪はただ目を閉じていた。

そして彼女が薄目を開けると同時に、聞き覚えのある声が掛かる。

「大丈夫?」







見上げたそのすぐ傍に、今ここに居るはずのない人物の顔があった。

青田淳。

思わず雪は目を見開く。






「先‥」



青田淳は、ふと右手の手の甲に痛みを感じて、そこを眺めた。

しかしやがて、痛むその手を、守り切った彼女にそっと被せる。



嵐の前の静けさのように、不気味な静寂が三人を包み込んだ。

しかしそんな彼らの元へ、大声を上げながら近づいて来る三人組の姿がある。

「おいっ!」



「ストップストップ!おいっ!」



「何だよこのヤバイ男は!!」「止めろ止めろ!!落ち着いてくれぇぇ!!」



そこには、凄まじい形相で木の棒を掴み、こちらへ向かって来る河村亮の姿があった。

しかし彼を止めるべく、両脇に柳楓と佐藤広隆が必死になって縋り付いている。



亮は大汗をかきながら、はぁはぁと肩で息をしていた。

混乱の嵐が、皆を巻き込んで吹き荒れるーー‥。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<健太との対決(3)>でした。

なんとここで主要人物達が一同に会すると‥!

今まで平行線だったストーリーが、ここを境に動き始めますよ!


次回<二度目の闇>です。

次回更新の2月17日は、0時ちょうどに日記もアップします~。そちらもよろしければどうぞ~^^


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健太との対決(2)

2016-02-13 01:00:00 | 雪3年4部(彼との対話~健太との対決)


両手をぶらんと下げた状態のまま、健太は雪の言い放った言葉を聞いていた。

”私に謝らなければならないのはあなただ”と、六つも年下の後輩からキッパリと言われたのだ。



握り締めた健太の拳が、ブルブルと震えている。

健太は俯きながら、まるで怒りを溜めているかのようにじっと押し黙った。






雪の今までの経験値と本能が、これはマズイとシグナルを送る。

その証拠に、健太がぐっと歯を食い縛っているのが見えた。



‥そろそろ爆発するか?



柳瀬健太の物事を受け止めるキャパシティが、そろそろ限界を迎えようとしているのだ。

今にも暴れ出すのではと危惧する雪だったが、次の瞬間、健太は意外にも静かに口を開き話を始めた。

「赤山」



「前のグルワん時、お前が俺の名前をレポートから消した時も感じたが‥」



「お前、俺に何か恨みでもあんのか?」



言葉を続けるほど、健太の形相はだんだんと凄まじいものになっていった。

しかし今言われたことは、雪にとっては心外である。

「はい?違いますよ、そんな理由じゃなくて‥」



その正当な理由を続けようとした雪だったが、遂にここで健太が爆発した。

「恵ちゃんの紹介の件だってわざとなぁなぁにしやがって!!」



「それでも可愛がってる後輩だから我慢して来たってのによぉ!

弟まで連れて来て俺をコケにするわ、今度は泥棒の濡れ衣まで着せようってのか?!」




「ひどすぎるだろうがよ!!あぁ?!」

「いつ私がそんな‥!」



その大声とオーバーアクションが、雪をどんどん後退させる。

しかし健太は本能のままに、その巨体を揺らして主張を続けた。

「俺は四年でしかも復学生だぞ?!今就活でストレスMAXだっつーのに、

お前は俺に汚名まで着せようってのか?!良心ってもんはねーのかよ!」




「あぁ?!」



あれほど固く決意していた心は、いとも簡単に崩れそうだった。

健太の前に立っている自分の足が、震えているのが分かる。

ぶっちゃけ‥話を始めてみたものの‥



さっきから本当に‥



コワイ‥!






190センチを越える巨体が、目の前で暴れている。

雪はぐっと唇を噛んで、今にも崩れ落ちそうな心を奮い立たせていた。

昔からこの人の前では、本能的に萎縮してしまう。この人が熊なら‥



私はリス



雪の脳裏に、ここ最近の自分と健太の関係性を象徴する場面が浮かんだ。

最近になってちょっと流せるようになってきたものの、

いつも頼まれれば拒めなかったのは事実だ。すぐに卒業するだろう、するだろうと思いながら




このまま頷いてしまえば、私は最後まで、この人に対して正しい事は何一つ言えないだろう



そして‥これからもずっと私は‥



雪の拳が、徐々に強く握られて行く。

健太に対する恐怖心よりも、それに屈する自分への抵抗が雪をこの場に留まらせていた。

「あん?!赤山ぁ!何か言えよ!赤山!赤山!赤山ってばよ!!」










雪は一度、大きく息を吸った。

そして自身を奮い立たせながら、自分の中にあるその正義を信じる。

「卒業試験にも落ちて、成績も芳しくなくて、ストレスを感じているのはよく分かりました」



「だからといって、いつまでそれを配慮しなくちゃいけないんですか?」



真っ直ぐに、前を向く。

もう”お人好しバカ”になるのは、懲り懲りだった。

「お願いですからもう止めて下さい。金輪際、こういったこと全て!」











さっきまで暴れながら大声で喚いていたその巨体は、雪の反撃を受けて暫くフリーズした。

今までの赤山雪ならば、ちょっと大声で脅せば頷いていたはずなのに‥。

「なっ‥?なっ‥な‥」



動揺する健太。目の前に居る後輩は、そんな自分に対して厳しい視線を送ってくる。

「今何て‥」

「それにしても残念でしたね」



「あんなことまでしたのに、結局何も手に入れられなかったんですもんね。

青田先輩の過去問だと思ってたものがー‥」




「結局直美さんの過去問だったんだから!」



三連打、と心の中で叫びながら、雪は遂にこの事件の真相を口にした。

健太はぐっと言葉に閊えながら、思わずその場で固まる‥。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<健太との対決(2)>でした。

今回健太が雪に大声で迫る部分は、

作者さんのブログで、とある箇所のパロディになっていると明かされました。



亮さんとの対話の場面‥!ブログには「誰も気が付かなかった‥」と記してありました(^^;)

なんか‥亮さんのイケメンが際立ちますね(そこ)


さて次も<健太との対決(3)>です!


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