A大学の皆さん、こんにちは。
もう試験も二日目ですね。皆さんが努力した分、良い結果が出ることを願っております。
構内に、そんな内容の校内放送が流れた。
先ほどまで外に居た雪、聡美、太一はバタバタと教室へと移動する。
「!」
しかし教室へと一歩足を踏み入れた途端、雪は立ち止まった。
視線の先に、彼の姿が見えたのだ。
久しぶり、と彼は色々な人から声を掛けられていた。
向こう側に座る四年の先輩と、一番こちら側の柳に挟まれて、青田淳は座っていた。
インターンのことについて聞かれている。彼が大学に来るのは、随分久しぶりだからだ。
あちらを向いているのでその表情は窺えないが、雪は複雑な気持ちになる。
彼とは、あの言い合いの日以来顔を合わせていなかった。
あれからまだほんの数日、心の中にあるわだかまりはまだ随分固い‥。
雪は彼の方を見ることなく、少し離れた席へと向かった。
雪から少し事情を聞いている聡美と太一は、目配せをして沈黙を守る。
雪が席に就いてノートを広げる間にも、彼の席の周りでは幾度も声が上がっていた。
「久しぶり」「先輩おはようございます」「私のことご存知ですか?一年生なんです」‥etc
忘れていたが、これが通常の”青田先輩”の周りの風景だ。彼は皆に取り囲まれもてはやされる、中心人物なのだ。
すると淳の隣に居た柳がふと雪に気づき、大きな声で挨拶をして来た。
「赤山ちゃーん!ハロー?」
突然声を掛けられ、雪はビクッと身を強張らせた。
視線を地面で泳がせながら、「あ‥ハ‥ハイ‥」とたどたどしい挨拶を返す。
柳はこちらを見ようともしない雪に疑問を抱き、隣に座る淳に向き直り質問をする。
「てか何でお前ら離れて座ってんの?ケンカ?」
柳からの質問に、淳は「試験期間中は各自集中することにしたんだ」と淡々と答えた。
さすが首席カップル、とはやし立てる柳の笑い声が教室中に響く。
雪が頭を抱えていると、前の方の席に座った横山が目に入った。
雪の方を見てニヤニヤしている。先ほどのやり取りを見て、そのぎこちなさを察知したのだろう。
「あの二人別れたんじゃね?w」
「まさか」
そんな横山とその仲間の会話が聞こえる位置に清水香織は座っていたものの、彼等の会話は一切耳に入ってこなかった。
先ほど彼からされた”警告”が、脳内を何度もリフレインする。
それすらも分からないほど間抜けじゃないだろうに
チラチラと彼の方を盗み見ながら、香織はガリガリと爪を噛んだ。
話してみたって誰も信じないわ‥さっきのこと‥。あ、青田先輩だもの‥
香織は彼から視線を逸らせなかった。皆に囲まれ談笑する彼は、いつもと変わらないように見える。
香織はいびつな爪を更に齧りながら、俯いて一人悶々としていた。
集中集中、勉強でもしよ‥
雪はそう自分に言い聞かせながら、食い入るようにノートを見つめた。
しかし一向にその内容は頭に入って来ない。
雪はこっそりと、視線を彼の方へと流してみた。
両手で顔を覆い、その指の隙間から密かに彼を盗み見る。
見ちゃダメだ‥ダメだったら‥目を逸らせ、私!
脳は自らの視線が彼に向くのを制止するのに、それに抗うように雪は彼に眼差しを送り続けた。
彼の周りは依然として沢山の人が集っていて、時折大きな笑い声が上がる。
こちら側に座る柳の背中に阻まれて、彼の顔は見えなかった。
雪は顔を覆っていた手もそのままに、気がつけば彼の姿をじっと見ていた。
すると人波の間から、遂に彼の顔が見えた。
片目だけしか見えなかったが、その視線は雪に注がれていた。
その瞳と目が合うやいなや、雪は弾かれるように立ち上がった。
その突然の雪の行動に、隣に座る聡美と太一がビックリして目を丸くする。
雪はそのまま彼に背を向けると、味趣連二人に離席を促す。
「い、行こ‥!なんか眠くって!コーヒーでも飲みながら復習しよ!」
聡美と太一は大人しく雪に従い、そのまま共に教室を後にした。
暫し彼等は自販機の前で談笑していたが、雪の心は依然としてざわついていた。
本を開いているものの、内容は全然頭に入って来なかった。
雪は息を一つ吐くと、トイレに行ってくると言って席を立った。
聡美と太一が頷いて、雪は一人廊下を歩き出す‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<逸らせぬ視線>でした。
試験期間中にこんなアナウンスが流れるんですね~。
そして学生総数の多そうなA大、全学科が一斉に試験期間となると図書館は満席だろうしコピー機はフル稼働だろうし‥。
学生にとっても大学側にとっても、試験期間というのがいかに大きなものであるかが分かりますねぇ。
では最後に、意味なく無邪気な柳楓を貼って終わります(笑)
(↑隣の頭は先輩ですね。柳の無造作ヘアとは違って天使の輪的な光が‥。サラサラヘアー健在ですね~)
次回は<無言のSOS>です。
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もう試験も二日目ですね。皆さんが努力した分、良い結果が出ることを願っております。
構内に、そんな内容の校内放送が流れた。
先ほどまで外に居た雪、聡美、太一はバタバタと教室へと移動する。
「!」
しかし教室へと一歩足を踏み入れた途端、雪は立ち止まった。
視線の先に、彼の姿が見えたのだ。
久しぶり、と彼は色々な人から声を掛けられていた。
向こう側に座る四年の先輩と、一番こちら側の柳に挟まれて、青田淳は座っていた。
インターンのことについて聞かれている。彼が大学に来るのは、随分久しぶりだからだ。
あちらを向いているのでその表情は窺えないが、雪は複雑な気持ちになる。
彼とは、あの言い合いの日以来顔を合わせていなかった。
あれからまだほんの数日、心の中にあるわだかまりはまだ随分固い‥。
雪は彼の方を見ることなく、少し離れた席へと向かった。
雪から少し事情を聞いている聡美と太一は、目配せをして沈黙を守る。
雪が席に就いてノートを広げる間にも、彼の席の周りでは幾度も声が上がっていた。
「久しぶり」「先輩おはようございます」「私のことご存知ですか?一年生なんです」‥etc
忘れていたが、これが通常の”青田先輩”の周りの風景だ。彼は皆に取り囲まれもてはやされる、中心人物なのだ。
すると淳の隣に居た柳がふと雪に気づき、大きな声で挨拶をして来た。
「赤山ちゃーん!ハロー?」
突然声を掛けられ、雪はビクッと身を強張らせた。
視線を地面で泳がせながら、「あ‥ハ‥ハイ‥」とたどたどしい挨拶を返す。
柳はこちらを見ようともしない雪に疑問を抱き、隣に座る淳に向き直り質問をする。
「てか何でお前ら離れて座ってんの?ケンカ?」
柳からの質問に、淳は「試験期間中は各自集中することにしたんだ」と淡々と答えた。
さすが首席カップル、とはやし立てる柳の笑い声が教室中に響く。
雪が頭を抱えていると、前の方の席に座った横山が目に入った。
雪の方を見てニヤニヤしている。先ほどのやり取りを見て、そのぎこちなさを察知したのだろう。
「あの二人別れたんじゃね?w」
「まさか」
そんな横山とその仲間の会話が聞こえる位置に清水香織は座っていたものの、彼等の会話は一切耳に入ってこなかった。
先ほど彼からされた”警告”が、脳内を何度もリフレインする。
それすらも分からないほど間抜けじゃないだろうに
チラチラと彼の方を盗み見ながら、香織はガリガリと爪を噛んだ。
話してみたって誰も信じないわ‥さっきのこと‥。あ、青田先輩だもの‥
香織は彼から視線を逸らせなかった。皆に囲まれ談笑する彼は、いつもと変わらないように見える。
香織はいびつな爪を更に齧りながら、俯いて一人悶々としていた。
集中集中、勉強でもしよ‥
雪はそう自分に言い聞かせながら、食い入るようにノートを見つめた。
しかし一向にその内容は頭に入って来ない。
雪はこっそりと、視線を彼の方へと流してみた。
両手で顔を覆い、その指の隙間から密かに彼を盗み見る。
見ちゃダメだ‥ダメだったら‥目を逸らせ、私!
脳は自らの視線が彼に向くのを制止するのに、それに抗うように雪は彼に眼差しを送り続けた。
彼の周りは依然として沢山の人が集っていて、時折大きな笑い声が上がる。
こちら側に座る柳の背中に阻まれて、彼の顔は見えなかった。
雪は顔を覆っていた手もそのままに、気がつけば彼の姿をじっと見ていた。
すると人波の間から、遂に彼の顔が見えた。
片目だけしか見えなかったが、その視線は雪に注がれていた。
その瞳と目が合うやいなや、雪は弾かれるように立ち上がった。
その突然の雪の行動に、隣に座る聡美と太一がビックリして目を丸くする。
雪はそのまま彼に背を向けると、味趣連二人に離席を促す。
「い、行こ‥!なんか眠くって!コーヒーでも飲みながら復習しよ!」
聡美と太一は大人しく雪に従い、そのまま共に教室を後にした。
暫し彼等は自販機の前で談笑していたが、雪の心は依然としてざわついていた。
本を開いているものの、内容は全然頭に入って来なかった。
雪は息を一つ吐くと、トイレに行ってくると言って席を立った。
聡美と太一が頷いて、雪は一人廊下を歩き出す‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<逸らせぬ視線>でした。
試験期間中にこんなアナウンスが流れるんですね~。
そして学生総数の多そうなA大、全学科が一斉に試験期間となると図書館は満席だろうしコピー機はフル稼働だろうし‥。
学生にとっても大学側にとっても、試験期間というのがいかに大きなものであるかが分かりますねぇ。
では最後に、意味なく無邪気な柳楓を貼って終わります(笑)
(↑隣の頭は先輩ですね。柳の無造作ヘアとは違って天使の輪的な光が‥。サラサラヘアー健在ですね~)
次回は<無言のSOS>です。
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テストの時期はテストについて話すっていうか。
それより集中したいから彼女とも離れて座ってる設定なのに、
「私のこと知ってます~?一年生ですよ(ハート」
とはなんでしょ。勉強させろよw
先輩それどんな表情やねん!待つよ言ってたのにもっと優しい眼差しできないんかい。と。笑
やっぱり、全てを納得できてないからあんな刺すような眼差しになってしまうんでしょうか…
自分なら試験ボロボロですよ…
けど、けど、かっこいい~U+1F648U+1F648U+1F648U+1F495笑
>それより集中したいから彼女とも離れて座ってる設定なのに、
>「私のこと知ってます~?一年生ですよ(ハート」
とはなんでしょ。勉強させろよw
には爆笑しました。
卒業がかかってる4年と比べて1年はまだフワフワしてるっという対比なんでしょうか。
それより1年と4年が同じテスト受けるって韓国だと普通なんでしょうかね。
私の時はまあ1,2年が被ることはあってももう専門が増えるし4年時は絶対1年がいるってなかったような。
それにしてもまだ数日しかあの言いあいから経ってないとは・・
ほんと大昔のように色々感じてしまいます。(笑)
師匠の毎日更新で見てるにも関わらず。。
これ現地で週刊で見てたら感覚忘れそうです。
そしてあの瞳の色というか光のなさというか、、その後の行動につながる予感がまったくしない眼差しの淳は何を思ふ・・・のか。
後はこれは雪を通した淳なので、その読めなさとか不信感が表れてるんでしょうかねえ。
携帯の画面では、ここまで先輩の目が恐ろしかったとは気づきませんでした。
安易に自分に置き換えてみれば、今自分をどう思っているんだろう?このまま拒絶されたら?相手の情報が皆無だったら、不安で気が狂いそうかも…
にしても、あのカットは異様さというか何というか、インパクトがありすぎて、夢に出てきそうな勢いです。
あ、なるほど!あれはお昼の校内放送なんですね。
こっそり直しておきます^^
そして確かに「集中したい」のに周りに人集いすぎ(笑)