Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

<亮と静香>高校時代(17)ーサインー

2015-05-19 01:00:00 | 河村姉弟2<西条編~おかしな子供>
あれは高校三年生の、秋のことだった。



有名ピアニストの来日公演。河村亮は心底その演奏を聞きたがっていた。

しかし彼は自身のピアノコンクールに出席せねばならず、代わりに淳が足を運んだ。



目を閉じ、その音色に耳を澄ます。

鮮やかに奏でられるシューベルト「楽興の瞬間」。亮の弾けるようなそれとはまた違う、重厚な音の響きー‥。






遠目に見えるピアニストの横顔は、髪も肌も白人種のそれであり、彼の横顔に淳は亮の面影を見る。

脳裏に、いつか自分を肯定してくれた時の亮の姿が浮かんだ。

「お前はいっこも間違ってねーぞ?」



ずっと集めていた野球のボールをクラスメートに譲ることになった時のことだ。

亮は何の疑いもなく淳を肯定した。

「何がおかしいんだ?全然おかしくなんかねーだろ?」



嬉しかったのだ。

自分のことを肯定してくれる幼馴染の存在が、あの時何よりも嬉しかった。

「あ~~~つーかマジコンサートよぉぉぉ!お前代わりに行けよ!」



だからそんなに興味があるわけでもないコンサートにも、亮の代わりに足を運んだのだ。

今日のこの演奏の感想を口にした時、亮はどんな顔をするだろう‥。



コンサートは盛況の内に幕を閉じた。

ステージの中央に立ち頭を下げるピアニストに、豪雨のような拍手が鳴り響く‥。







演奏後、淳はピアニストの楽屋に足を運んだ。

青田家が有するスポンサーの特権で、入ることが出来たのであった。

「あれ?」



淳が手にしていたのは、「楽興の瞬間」の楽譜だった。

それを見たピアニストは嬉しそうに、淳に向かって話し掛ける。

「これは僕の楽譜じゃないかい?素晴らしい!」「ファンですので」



淳はニッコリと笑顔を浮かべ、更に言葉を添える。

「”楽興の瞬間”、原曲も良いですが、この編曲の方が好きなんです」



淳のその言葉を聞いて、ピアニストは豪快に笑った。

「僕にもスゴイファンがいたもんだな!ハハハ!」



そして彼はペンを取り、淳に向かって口を開く。

「そうそう、サインの依頼だったね。名前は?」



「河村亮です」



淳は自身の名前ではなく、亮の名前を口にした。

ピアニストは聞いた通りに、楽譜に亮の名前をサインを共に書き落とす。

「河‥村‥亮‥と」



サインを終えたピアニストは、ニッコリと笑って淳に楽譜を手渡した。

「僕の演奏を聴きに来てくれてありがとう、河村亮君」



そしてTo.Ryo Kawamuraと入ったそれを、淳は笑顔で受け取ったのだった。

「いえ、こちらこそ。お時間を割いて頂いて、ありがとうございました」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<亮と静香>高校時代(17)ーサインーでした。

かなり短めな記事で失礼致しました。


演奏を聴きながら、目を閉じて亮のことを思い出す淳。

良い友達なのになぁ‥。この後だんだんと関係が歪んでいくのですね‥(T T)


次回は<亮と静香>高校時代(18)ー剥がれた壁ーです。


人気ブログランキングに参加しました
人気ブログランキングへ

引き続きキャラ人気投票も行っています~!