Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

<亮と静香>高校時代(1)ー西条のエピソード(8)ー

2015-05-11 01:00:00 | 河村姉弟2<西条編~おかしな子供>
「くっそーーー!!兄貴のせいで俺まで門限早まって、

監視までつけられたじゃねーかよぉ!狂っちまうっつーのマジで!」




亮のクラスの副級長、城崎仁は叫んでいた。そんな仁の話を、亮はジュースを飲みながら耳を傾ける。

「ふーん」

「西条のヤツのせいで‥。あ~ムカつくぜマジでー。あの野郎、前は兄貴の仲間に入りたくてヘコヘコしてたくせによぉ!

なんでチクるような真似すんだよ!くそっ」


「そんで先生たちが店に押し入った時に、運悪く仁のお兄さんだけ捕まったと」

 

仁は兄の不運と事件による自分への余波を思い、その場で地団駄を踏んで悔しがった。

しかし亮にとっては所詮他人事。「運悪ぃのなー」と軽く受け流す。



「あん時職員室で聞いたヤツが全部情報流して、兄貴とその仲間達が西条をボコったってわけ」

仁は、西条が兄達に殴られることになった顛末を話し出した。亮はじっとそれを聞いている。

「西条のオヤジがうちの家に文句言えるレベルじゃねーから丸く治まったけど‥、

危うく兄貴、留置場行きになるとこだったぜ」
「ふーん」



「てか西条マジふざけてんよ。アイツ、兄貴じゃなくて淳が酒を飲みに行ったからチクったんだってよ。

マジで頭おかしいんじゃねーか?三年と淳っていったら三年も捕まるに決まってんじゃんかよ」




「兄貴達の仲間に入れてもらえなかった腹いせだってバレバレだっつーの」

「‥だよな」「しかも今回のことまで淳のせいにしやがって‥マジイッてるって」



「俺と淳がクラス代表で見舞いに行ったら、淳に向かって

「なんでお前行かなかったんだ」って大騒ぎ」


「なんだその八つ当たり。自分がチクったくせに」



ふぅん、と亮はそれに相槌を打ちながら、微かに胸が騒ぎ出すのを感じていた。

仁は事件に関するファクターを一つ一つ明らかにしていく。

「兄貴から聞いたけど、淳は初めから行くとは言ってなかったらしい。

メール履歴に「すみませんが行けません」ってメールも残ってた」




心の中がざわめく。

思い出すのは、西条のせいで職員室に呼び出された淳の姿。

「あなたが横領してるって聞いて‥」



淳に対する常日頃の西条の態度。

「偉そうに金出せだの言いやがって何様かしらねーけどよー」



クラスメートが西条に対して思っている心の内。

「西条のことだから、あの性格のせいで三年をムカつかせて殴られたんだろ」

「いつかこんなことになると思ってたよ」「青田にも無駄に突っかかってたもんなー」




そしてあの日、西条に向かって言った淳の言葉。

「無闇に人に喋るんじゃないぞ」



「俺も呼ばれたんだ」「お前は行かないのか?」



「西条も行く?」「お前と俺の仲が良くないって知ってるんじゃない」



巧みな言い回し。確実な証拠となる発言は何も無い。

亮は再度心の中で思う。

‥そうだ。確かに「行く」とは言ってねぇ。


そして先ほど目にした、口元に浮かぶ微かな嘲笑ー‥。





ふぅん‥



数々のファクターが、全て一つの線で繋がっているような感覚を亮は微かに覚えた。

心のどこかで感じる、じわりと漏れる毒。仁も微かにその毒を感じる。

「でもちょっと話が無理矢理すぎねぇ?」



「んな嘘一発でバレんじゃん。西条ってそこまでバカだったっけ?」

「ヤツは仁の兄貴達と仲良くしたがってたからな」

「淳の話によると、「自分は行けないから西条だけでも行って来たら」って言ったんだって。

けど西条の言い分としては、淳は西条に「行け」って言ったわけじゃなく、「淳自身が飲みに行くって言った」ときてる」




じわり、じわりと毒が漏れる。

この事件は偶然ではなく、誰かがもたらした必然であるかのように、うまく出来過ぎているのだ。

「おい亮、お前何か知らねぇ?」

「え?」



「マジで淳が酒飲みに行こうなんて誘ったわけじゃねーよな?」

「でも青田が最近急に仁の兄貴達と仲良くなったのは事実なんだ」



仁と友人は亮に質問を投げかけた。

この事件において最も疑われることのない、その当事者のアリバイについて。

「あの日淳がどこにいたか知ってるか?」「教室には居なかったよな」

「二人の言い分が噛み合わねぇから、どっちが正しいのか分かんねーんだ」



おそらく毒は回り出す。

亮が見聞きした西条と淳の会話を今口に出せば、きっと確実にー‥。




「あ‥」




しかし亮は選択した。

真実を話さずに、毒が回ることの無い未来を。


「おいおい、淳がどんなヤツかってのはよく知ってんだろ?

仁、お前の兄貴だから仲良くしてたってだけで、一緒に酒飲みに行くなんてー‥」




亮は思った。

ここで自分が下手なことを言えば、淳の分が悪くなるー‥。

「そういえば前の集会ん時、淳は兄貴と会ったんだったな」

「つーかオレ見たんだよ。西条と淳が口喧嘩してんの。そん時確かに淳は行かねえっつってたよ」

「やっぱりかー!だよなぁ、淳に限って!」



毒が回り出さぬよう、その為の予防線まで亮は張った。

「「西条が行きたいなら行けば」とか言ってたっけな?」



オレが片をつけてやると思いながら、亮は淳を庇う小さな嘘を吐いた。

そしてその嘘は、淳の常日頃の人間性を証拠として、立派な真実として仁達を納得させる。

「やっぱり西条のヤツ、淳に因縁つけたくてしゃーねーのな」

「それじゃ青田はまた罪もねーのに担任に呼び出しくらったってわけか」

「そーゆーこったな」



西条と上級生達の事件を受け、職員室に呼び出された淳はこう言ったと言う。

「先輩達に誘われましたが、当然断りました。

先輩達が罰を受けるんじゃないかと思って、言えなかったんです。すみませんでした」




淳の言葉を仁が反復し、「アイツは義理堅い男だ」と言って笑った。

仁の友人も、亮もつられて笑う。



笑顔の裏で、亮は思った。

淳のヤツ、自分でもここまで事が大きくなるとは思ってなかったんか?



さらりと発された、あの台詞。

西条も行く?



そうだよな、確かに自分が”行く”とは言ってなかったけど‥。

西条”も”か‥。




亮はフッと笑いながら、その意味深な言葉をそれ以上気にすることを止めた。

毒は心の中に押し込めて、苦労の多い幼馴染を慮って。

ま‥わざとか言い間違ったのかは知らねーけど‥。

たまにはお人好しのカモは止めて、ストレス発散ってとこかねww




亮はククッと笑いながら、そのまま教室まで歩いて行った。


西条和夫に関する事件は、これで幕を閉じることになる。

真実は闇の中に葬られ、毒だけが閉じ込められたまま、亮の中にこびりついた。


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<亮と静香>高校時代(1)ー西条のエピソード(8)ーでした。

これで西条のエピソードはおしまいです。

しかし淳は、人を陥れる才能ありすぎですねぇ‥。

子供の時も高校生になってからも、”線を超えた”者に対する制裁が半端ないですね。

頭が切れすぎる不幸、という印象を受けます。


さて次回はタイマン勝負からの続きですね。

<深い溝>です。

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