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Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

赤山蓮の悩み

2014-05-07 01:00:00 | 雪3年3部(防御壁~グルワ発表前日)


真昼間のマンションに、子供達がはしゃぐ声が響いていた。

開け放した窓から風と共に入って来るそんな賑やかさを聞きながら、赤山蓮はベッドに横になり、天井を眺めている。



ぼんやりと白い天井。

眺めていると気分までぼやけていくようだ。



退屈だった。

蓮は携帯を取り出して眺めては、つまらなくなって放り投げる。そんな折、友人から一通メールが入った。

何してんの?遊ぼーぜ。出てこいよ



脳天気なメール。

蓮は携帯を睨みながらブツブツ独りごちた。出て行きたくともお金が無いのだ、と。



蓮は退屈を持て余して、長い間仕舞ってあった参考書に手を伸ばした。少し勉強するつもりで。

つまらなそうに、パラパラとページを捲る。



延々と続くアルファベット。

アメリカで使っていた教科書は、当然の如く全て英語だった。

 

ページを捲る度に、心に募っていくこの憂鬱。

全く頭に入ってこない文章を眺めながら、蓮は父親から留学を持ち掛けられた時のことを思い出していた。


蓮、お前いっそ留学に行ってみたらどうだ? なんだかんだいって海外の卒業証書は必要だろう‥



父からそう聞かされた時、蓮は手放しで喜んだ。

アメリカ留学なんて最高にクールだと、何も考えずに喜んだ‥。



それから今に至るまでに経験したことを思い出す度、心の中は暗く湿っていく。

あの時は想像もしなかった苦い思いが、蓮の眼差しを厳しくさせる‥。




「あら?今日はまたどこへ行くの?」



結局出かけることにした蓮の背中から、母親が訝しげな顔をして声を掛けた。

蓮は笑顔を浮かべながら、外の風に当たりがてら友達に会いに、と答える。



母親は顔を顰めながら、「またなの?」と言って息を吐いた。

何も考えていなさそうな長男を前に、母親の小言が炸裂する。

「あんたこんな風に時間を無駄にして‥大学は一体いつ卒業する気なの?

良い所に就職するためには、あらかじめ準備すべきでしょう?!」




蓮はその勢いに気圧されながら、ダラダラとした仕草で靴紐を結んだ。

丸まった蓮の背中に、尚も母の小言は続く。

「アメリカではよくやってたんでしょうね?

私はあんたが帰国してから、勉強してる姿全然目にしてないんだけど?」




蓮は閉口しながらも、母から目を逸らして小さく反論した。

「それでも‥今回の単位はそれなりに良く取れてたじゃん‥」



ブツブツ続ける蓮に、母親は少し強い口調で諭し始めた。

「そんなの上がったり下がったりじゃないの!

あんた、アメリカで勉強する為の費用が一体いくら掛かるか分かってる?

他の子達を見るとアレコレ財団なんかも調べて単位も上手に取って、支援も受けてるってのに‥。

あんたもそういうこと調べてみたりしてるの?」




それなりに‥と蓮は小さく答えたが、その言葉に説得力は何も無かった。

母は溜息を吐きながら、もう何十回何百回と言い続けている言葉を口にする。

「お姉ちゃんを見習いなさい。奨学金も受けて、首席まで取ってるじゃないの!」



ズシッと、何かが蓮の肩に乗る気配がした。

それは目には見えないけれど、母の小言が続くにつれ重さを増していく。

「それにひきかえアンタはアメリカにまで行って奨学金も取れないで‥。

母さんはもう頭が爆発しそうよ。分かってるの?」




狭い玄関に、母の厳しい声が充満していた。

いつの間にか靴紐を結ぶ手は止まり、蓮は息苦しいその空間に一つぽっかり息を吐く。肩が重かった。

「‥それじゃあ、姉ちゃんをアメリカにやれば良かったじゃん」



小さな蓮の呟きに、

母は「え?」と言って目を見開く。



そして蓮は屈んだ格好のまま、ぽつりと心の声を口に出した。

「母さん‥俺、アメリカ戻んなきゃダメ?」



母は虚を突かれたような表情の後、声を上げて蓮に詰め寄った。

「アンタ気でも狂ったの?!言っていいことと悪いことがあるでしょう!

お父さんの前でそんなこと言ってみなさい!ただじゃ居られないわよ?!」




母は立ち上がった蓮の背中にそう声を掛けると、次の瞬間蓮はニッコリと笑って母に抱きついた。

「ヤダお母さ~ん!冗談だって冗談~!」



そして蓮はいつものヘラヘラとして笑顔を浮かべると、ポコポコと母の肩を叩く。

「そんなに長く出掛けないからさ~!そんで早く帰って来て肩揉むから☆」



引き攣った母の表情はそのままだったが、

蓮は笑顔で手を振って「行ってきます」と出て行った。



心労は絶えない。

母は溜息を吐きながら、お気楽長男のことに頭を痛める‥。









一方、こちらはA大学の構内である。

今は休憩時間中で、教室移動の学生達で廊下はごった返していた。

「お~?!恵ちゃーん!!」



廊下に居た小西恵は、不意に遠く離れた場所から声を掛けられた。

振り向いてみると、大きな男が手を振りながらこちらに駆けて来るのが見える。



柳瀬健太だった。

「今授業終わったの?」



そう声を掛けられた恵は、思わず白目でげんなりした。実はついこの間偶然ここで健太に会ったのだ。

彼はこの時間帯なら恵がここで授業を受けているということを、その時知ったのだろう。

「何でメールの返事くんないの~?」



健太はそう言って恵に近寄ってきた。

恵は後退りしながら、「止めて下さいって言ったじゃないですか」と彼に向かって口を開く。

どうやって自分の番号を知ったのかは分からないが、健太は度々恵にメールを寄越して来るのだ。

「え~?いや~ただ俺は~、恵ちゃんのことを心配してさ~」



そう言って健太が思い出すのは、開講早々知ることになったあのニュースだった。

”青田と赤山が付き合っている” そう聞いた健太は、恵はどうなるんだと言って淳に詰め寄った‥。



そして健太は頭を掻きながら、恵を心配している根拠を語った。

「恵ちゃん、アイツにフラレて寂しいんじゃないかなって‥」



急に語られたその見解に、恵は思わず目がテンである。

しかし健太は少し決まり悪そうな態度で、尚も言葉を続けた。

「なんかどうしても気になって慰めようかなって‥。ん?」



健太は、恵が俯きながらプルプルしているのに気がついた。

次の瞬間、恵の叫びが廊下に響き渡った。

「誰がフラれたって言うんですかっ!



オロオロする健太と、噛みつかんばかりの恵。

身長差42センチの二人が、暫し廊下の真ん中で睨めっこだ‥。


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<赤山蓮の悩み>でした。

雪が蓮のように振る舞えないのを悩むように、蓮も常に優秀な姉と比較されて悩んでいるのですねぇ‥。

お母さんの正論を畳み掛けるような説教は、夏休みに蓮を叱った雪を彷彿とさせますね。似てるな~。




次回は<舞い散る葉の中で>です。

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