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Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

自主ゼミ開講<雪の場合>(2)

2013-05-28 09:26:55 | 雪2年(復学~球技大会前まで)
佐藤先輩の自主ゼミが始まった。

しかし‥



雪は場違いのような気がしてならなかった。男ばかりの上に、不穏な空気が漂っている。

雪はチラチラとゼミのメンバーを見ながらも、最も気になることはやはり青田先輩がここに居ることだった。

なんでここに居るんだろ‥和美のゼミに行くんじゃなかったのか?



すると横山が、つまらなさそうに一人不平を鳴らす。

「あーあ、男ばっかでムサイっすね~!平井んとこは淳先輩が来るからって、

女の子ばっかり集まってたっすよ」




すると青田先輩はそれは初耳だよ、と言った。

たとえ誘われたとしても、柳からこのゼミに一緒に来て助けてくれと言われてるから断ってただろうけどね、とも。



横山はそれを聞いて大声で笑った。

「平井ザマァ!クソウケる!」



その馬鹿騒ぎに、佐藤先輩が「静かに、」と注意する。

しかしなおも騒ぎ続ける横山に、佐藤先輩は「横山!」と声を張った。

だが、その横で青田先輩が静かに言った。

「翔、そろそろ集中しよう」



横山は佐藤先輩の方は見ず、青田先輩に対して「はい!すんません!」と返事をした。


ようやくゼミが進行し出す。

佐藤先輩が今後の予定について話始めた。



空講の時間を使って週に二回集まろうという意見に、

柳先輩が週末は遊びたいし、二回は多いんじゃないかと不平を口にする。

それに対して佐藤先輩は遊びたいのならなぜここに来たのかと言葉を返し、

柳先輩がそれにカチンと来た。



言い争いが始まりそうな時、青田先輩がやんわりと仲裁に入る。

「週末に遊ぶだけならいいけど、自分のTOEICの点数も考えろよ。

就活も考えないといけないしな。お前が助けてくれって言うから俺も来たんだ。がんばれよ」




柳先輩は「痛いところを‥」とたじろぎながらも、その場は治まった。

佐藤先輩が面白くないといった顔をしたが、話は続く。

「じゃあ、集まる度に単語を100ずつテストすることにしよう。週に二回集まるから、一週間に200だな」

その提案に横山が思い切り反論した。

「ええ~?!なんでそんなテストばっかり!負担多すぎッスよ!」



佐藤先輩は苛立ち、場の空気は険悪になっていく。

しかしまたもや青田先輩がにこやかに声を掛けた。



「それでも、佐藤の言うことを聞くべきだよ。単語は覚えれば覚えるほど良いからね」

ニッコリ笑う青田先輩に、横山もしぶしぶ了承した。



雪はこの場の雰囲気に、気まずい思いを抱えていた。

佐藤先輩、ムカついてるだろうな‥。皆親しくないせいか、意見が全くまとまらない。

横山は出しゃばりすぎで、テストの件だってみんな巻き込まれたじゃん‥。

青田先輩もあきらめたのと同じだし‥。
 

そこまで考えて、青田先輩はもともとこのゼミのメンバーではなく、柳先輩に頼まれて来ただけだっけ‥と気づいた。

つまり、単語のテストも彼には何の関係もない‥。


青田先輩の携帯電話が鳴り、ちょっと電話してくると席を立った。



テーブルでは横山と柳先輩が週末の合コンについての話で盛り上がっている。

頭を抱える佐藤先輩を尻目に、

横山は雪に話しかけ、聡美に彼氏はいるのかとか、俺あいつタイプなんだとか、

延々とまくしたてている。

そしてついに、

「横山!なんの話だよ!お前何しにここに来てんだ?!」



佐藤先輩がキレた。

さすがの横山もびっくりしたのか黙りこみ、ゼミの雰囲気は最悪だった。



そこに青田先輩が帰ってきた。

「翔、さっき事務の助手さんたちが今すぐロッカーの中身開けないと全部捨てるって言ってたぞ」



やっべぇ~!と横山は荷物をまとめ、「お先失礼しまーっす」と去っていった。



教室は幾らか静かになり、佐藤先輩の舌打ちと、青田先輩と柳先輩が談笑する声だけが響いた。


雪はこの気まずさに耐えていた。



そして、微妙なランクの差を感じていた。


本人の意志で募集をかけたものの、思い通りにならない佐藤先輩。



誰かを頼り、自分の能力を発揮し安定を感じている柳先輩。



楽な方に流されたり、あからさまに強い人間にだけ従う横山、その友人。



そして‥

謙虚なフリをして、何くわぬ顔でトップに立つ青田先輩。



自主ゼミという小さなコミュニティでも、顕著に表れる序列関係。

悶々としていると、佐藤先輩が「赤山、お前も意見出してくれよ」と言った。



「いやー私は、先輩の言うことならなんでも‥」と頭を掻くと、

「誰に聞いても一緒か」と佐藤先輩がため息を吐いた。

佐藤先輩のことを言ったのだが、この状況では誤解されてもおかしくない。

柳先輩が、

「そういや~赤山ちゃん大当たりじゃ~ん!淳独り占めだな!」とチャラけてきた。



「淳に近づけるチャンスだぞ~!でもオレらのことも除け者にしないでくれな~」

ははは、と雪は白目にならんばかりだったが、



青田先輩が「冗談はそこまでにしてどの範囲でやっていくか決めよう」と言ったので、

開放された。



雪が彼を見ていても、彼は一度も雪と目を合わせない。


雪は苛ついてきていた。



自分がいつ彼に無視されるようなことをしただろうか。

不信はじわじわと懐疑になり、

いつからか彼を観察するようになった。



そこで分かったこと。

あの先輩が、陰ながら人を分けているということだ。




適当にあしらってかまってあげる子もいれば、

人から嫌われていても年上だったり目上の立場の人間であれば付き合っていたり。



けれど見るからに違う子や、めんどくさい子、しつこい子は100%避ける。

しかし基本的には誰もが下手に回ってくるから、彼の主導で関係性は保たれている。


雪の場合は、何が気に入らないかは分からないが、あからさまな無視だ。

それもあって、知らぬ間についつい目が留まり、観察してしまうのだ…。




雪はチラチラと彼を盗み見た。


誰しもが、人によって態度を変えたり多少の下心を持って行動している。

けれどこの先輩に関しては、それが顕著に腹黒く見える。



自分の気にしすぎかもしれないけれど、なんだかもうわけが分からなすぎて笑えてくるのだ。



自分の中の彼のイメージは、もう普通の先輩ではない。

高飛車な王子様?



「俺様が遊んでやろう」(イメージ)

それとも潔癖症のお坊ちゃま?



「使い古しなんて使えないよ」(イメージだってば)


想像しただけでも笑ってしまう。

相当ウケる‥ともう一度盗み見た時だった。
















今日、初めて彼と目が合った。







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自主ゼミ開講<雪の場合>(3)へと続きます。

長くなった‥。



自主ゼミ開講<雪の場合>(1)

2013-05-27 17:02:33 | 雪2年(復学~球技大会前まで)
ある日親友の聡美が、英会話の自主ゼミを一緒にやらないかと誘ってきた。

平井和美がゼミの募集をしているのを、掲示板で見かけたというのだ。



「会話の練習する時、たまに青田先輩も手伝ってくれるって」

雪は相槌を打ちながら、その先輩が苦手っていうのもなんだしな‥と思い、言葉を濁す。


しかし度重なる聡美の暴力的な熱烈な誘いで、遂に雪も了承する。




授業が終わると、聡美が和美の姿を見つけ、声をかけようと近寄った。

するとキノコ頭の新入生とその友人が、プンスカと

「なにあの先輩!」と怒って去る所だった。



和美は友人とクスクス笑っていた。


聡美が自主ゼミを一緒にやりたいと言うと、

「もう定員オーバーなのよ、それでさっきの子たちも断ったの」



と難色を示した。それでも聡美が食い下がっていると、いきなり横山翔が割り込んできた。

「聡美ちゃん元気だった~?なにしてんの?」と馴れ馴れしく肩を抱く。



和美が持っている自主ゼミの紙を見て、

「和美のゼミねぇ‥俺んとこにくればいいのに~」と、意味ありげに笑う。



何度も追い払い、ようやく横山が去ると、

聡美が「あいつこのごろずっとああでさ」と溜息を吐き、

和美が「前あたしにもそうだったわよ。しつこいから気をつけなさいよ」と呆れた。

横山効果か(?)「なんにせよ、ゼミ入るんでしょ。名前書いとくわ」と和美は言ってくれたが、

雪は「私やっぱりいいや、ごめん~」と申し出を辞退した。



聡美は不服そうだったが、正直気の合わない子と、しかも青田先輩も来るゼミに入るなんて耐えられない。

雪は一人教室を後にした。

すると廊下の掲示板に、一枚のメモを見つける。



佐藤先輩の自主ゼミ募集の紙だった。

顔が思い出せないが、静かで頭の良い佐藤先輩のゼミなら、勉強に集中できそうだ。

いいかもしれない、と佐藤先輩に連絡することに決めた。



自主ゼミ開講の日がやってきたが、雪は時間に遅れそうだった。



411教室までダッシュしてドアの前まで辿り着くと、まだ誰も来ていないようで、「セーフ!」と息をつく。

すると、



ドタッ!

床がツルツルしていて、思わず転んでしまった。

後ろに居た横山が、盛大に笑った。

「プハハハハ!赤山クソウケる!ずっこけてやんの!」



どうやら横山もここのゼミらしい。どうせなら聡美と来るとかしろよ~と憎まれ口をたたかれながら、

共に教室に入った。

「先輩、早かったっすね!」



そこには、



「お、翔」



「前の授業が早めに終わったんだ」

居るはずの無い男がそこに居た。

隣の柳先輩が、雪が先ほどコケたことについて笑っているが、リアクション出来なかった。




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自主ゼミ開講<雪の場合>(2)へ続きます。


新学期<雪と淳の学生生活>

2013-05-27 11:32:48 | 雪2年(復学~球技大会前まで)
いよいよ大学が始まった。

しかし雪は常に眠そうである。



実家から大学まで通学に二時間かかるので、夜遅くまで勉強しようものなら、

睡眠時間が確保出来ないのが悩みなのである。

奨学金を得るために毎日勉学に励む雪だが、聡美から現在の全体首席は青田先輩なのだと教えられる。



学年首席は雪なのだが、学科全体の首席は青田先輩なので、雪は全額奨学金を受けることが出来なかった。

悔しいが、努力の結果ならしかたがない。

しかし雪は初め、彼がバカなんじゃないかと思っていた。



ニコニコと笑いながら飲み会で皆におごったり、簡単にノートを貸したりするからだ。

しかしバカでは首席になれるわけなく、ではその真逆‥恐ろしく頭の切れる男なのかもしれないと思うようになった。


彼に対する不信は依然として解けることなく、胸にモヤモヤとしたものが常に残っていた。

だが聡美からは「あの先輩は大学でも有名な人だから、あんたも良い顔しときなね」とも言われている。



大学始まって最初に挨拶したとき、



初めこそ笑って返してくれたものの、



すぐに視線を外された。





その後会う度に挨拶をし続けたが、



ことごとく無視されるようになった。



こうなったらもうあからさまだ。

二度と挨拶なんかするもんかと、雪は彼に背を向けた。



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淳の学生生活もまたスタートした。

構内を歩くと、色々な人間から声をかけられる。



あの空気が読めない新入生。



「いつも女遊びどこでしてるんすか~?今度連れてってくださいよ!」

お調子者で騒がしい後輩、横山。




健太先輩、女学生たち、顔が判然としない同学科の学生。



あの馬鹿騒ぎしていた汚らわしい女。


この女は特に、この間大学を歩いている時に聞いてしまったものもある。



空き教室で、友人と二人で話していた。

「有名な先輩だってば。あんたも挨拶しっかりして、いい顔見せときなさいよ。親しくなって損はしないんだから」

「んー‥、確かに‥」



こんなことは日常茶飯事だが、背を向けるのには十二分な動機だろう。


自分に近寄ってくる人間の一人に、平井和美がいた。



入学時は首席で入ってきて、美人でスマート。やっかいな性格だが、利用できるところがあった。



彼女が側にいると、あの新入生たちや女後輩たちが寄ってこないのだ。

「先輩、新学期が始まった途端色々な人に声をかけられて大変ですね」



そう口にする平井和美は、あの空気の読めない人間たちよりはいくらかマシだった。

二人で歩いていると、前をあの女が歩いていた。



平井とあの女は同期だ。



平井が「雪ちゃ~ん、元気?」と声をかけると、あの女は形式的な挨拶を返して、そそくさと去っていった。

後味の悪い顔をした平井が、「先輩、あの子知ってます?」と続ける。

「赤山雪っていって、今回次席だった子なんですけど、先輩が頭いいからって接しにくいみたいですよ」



意外だった。

あの子が次席?と淳は小さくなった後ろ姿を見送った。

「でもあまり礼儀を知らないみたいですね。上には上がいるんだから、

たとえ次席でも満足するのが当り前なのに」




平井和美が不満そうに言う。

教室へと歩きながら和美は「先輩金曜日空いていますか」と誘ってきたが、先約があると断った。


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二人の新学期の始まりです。

互いに悪印象ですね‥。

しかしこれからもっと悪くなっていきます‥。


物語の始まり<淳の場合>

2013-05-26 12:11:28 | 雪2年(復学~球技大会前まで)
時を同じくして、復学したもう一人の主人公、青田先輩。

彼の物語もここから始まります。

青田淳 休学明け三年生



復学して初めて大学に出てきた彼は、廊下で一番親しい友人である柳に出会い、久しぶりだなと声をかけられる。

「今夜の飲み会来るんだろ?」

と言われ、

「もちろん」

と笑って答える。



遅れて到着した彼を、かつてのメンバー、新しい学生達が一斉に迎えた。



「久しぶりだな!元気だった?」

「髪伸びたなぁ、オレのこと覚えてるか?」

「青田先輩こんばんは!」



彼の周りにはあっという間に人だかりが出来、彼はそれに笑顔を向ける。



口にした言葉はたった一言だけ、「ああ」と言うだけだったけれど。


休学前からお世話になっていた健太先輩は淳の復学を喜び、もう一人の復学生を紹介しようと声をかけた。

遠くでぼんやりとした女学生が、よろしくお願いしますと言った。





淳もよろしくと挨拶し、すぐにまた健太先輩との話に戻った。


共通の先輩の話、学生連合の会合の話、男子学生だけの飲み会の話、

健太先輩と、前に座る柳との会話は、二年ぶりのせいか色々尽きることはない。

積もる話は沢山あったが、新入生の女の子達が隣りに座ってきたせいで、ちっとも話は進まなかった。



挙句、無遠慮にも新入生は自分に密着する。



ドンガラガッシャーン!

グラスは倒れ、新入生のスカートは水でびしょ濡れになった。

女学生は席を外し、騒然となったこの場も自分が片付けることでうまく治まる。

淳は手を拭いた。



飲み会は続く。

ガヤガヤと人々は会話を続ける。



そんな中、遠くの席がにわかに騒がしくなった。

先ほどの復学生が面白いことをやると言う。



その子はサンチュに入った焼酎を飲み干し、口からは酒が滴った。



知らず知らずの内に、顔をしかめていたかもしれない。

「あいつ結構面白いだろ?」という健太先輩の会話には応えず、また他の話題で話は続いた。



先輩、こんばんは!私達のこと覚えてますか?




キャハハハ、飲むぞー! ちょ、トイレ‥マジ吐きそう




金集めとく?  青田が出してくれんじゃね?







目は閉じることが出来ても、耳は閉じられないのは生物の進化か、人類の退化か。




飲み会は続く。

ノイズを撒き散らしながら。




そんな自分を見て、柳が「眠そうだな」と笑った。



「大学に戻った感想は?」

と聞かれ、

「何も変わってないのな」

と答える。


その時ポケットの携帯電話が震え、ちょっと電話してくると席を立った。




電話の主は、幼馴染みの河村静香だった。

いつも不注意で体調を崩す彼女に労りの言葉をかけながら、

ちゃんと勉強してるのか?と小さな説教もする。

静香は淳の言葉には返事をせず、雑誌で淳の恋愛運を見ていたんだと言った。

「よーく聞いててね?新しい縁はもしかすると、すぐに近くにいるかもしれませーん!

その上あなたはその相手に多くの影響を与えるでしょう!」

 
これは私と淳のことだと思うのよね!と静香は続けたが淳は、

そういった話は聞き飽きた、俺はお前のことは幼馴染以上には考えられない、

と鋭く諌めた。

おまけにもう一度小さな説教をするものだから、静香はブーたれた。



すると、

「おっ!」

という声が聞こえたのでそちらを見ると、タバコを拾う一人の女が居た。



確かさっきサンチュ焼酎を飲んで、馬鹿騒ぎをしていた女だ。


「さっきからなんなんだあいつ‥」


淳がひとりごちたので、静香が不思議そうにした。



「このままオールするの?」

「いや、もうそろそろ終わりそうかな」

「復学した子は結構いるの?」

「もちろん、俺の他にも何人かいるよ。そんなもんだろ」


ノイズが障る、先ほどの宴会が思い出された。



馬鹿騒ぎする女、

空気の読めない新入生、

金目当てで寄ってくる同期、

恥ずかしげもなく羞恥な姿を晒す後輩




「まぁ、ちょっと汚らわしいけどな」





寒くなってきたから切るぞ、と言って淳は飲み会に戻る。


おそらく死屍累々なその現場を想像して、少しため息を突きながら。




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これが青田先輩の物語の始まりです。


雪と同じ場面ではありながら、見ているものや感じているものは全然違う。


私ら読者でさえ、どちらかの視点で語られた物語をそれが全てだと信じ、

視点の主に共感することで人や物事の印象を自然と決めている。

それが顕著になった話ではなかったでしょうか。



二人の物語の始まりは、互いの印象は、けして良いものではありませんでした。


続いて始まる新学期に、二人の運命が翻弄されていきます。

物語の始まり<雪の場合>

2013-05-24 19:54:01 | 雪2年(復学~球技大会前まで)
さていよいよ物語は始まります。

季節はまだ冬の寒さが厳しい、おそらく二月。A大学の春学期は始まります。

赤山雪 休学明け二年生



雪は去年一年間休学し、アルバイト地獄だったようです。

韓国の大学は学費がとても高く、学生自ら働いて自分の学費を捻出しなければ、通えないほどらしいですね。

そのため学生の多くは休学をして学費を稼いだり、奨学金をもらうために猛勉強することになります。

雪は前者後者どちらも目指し、頑張っていこうと意気込んでいる。

高3の時出会い、共に同じ大学に進学した親友・伊吹聡美とも、今学期から同じ学年として学校に通う予定で、

とにかく真面目に頑張って、卒業するまで大人しく通う!と思っているわけです。



しかし大学が始まる前、雪はとある占い師にこう言われます。

「あんた、男に気をつけなさい!」




すげーインパクト‥。



その占い師のおばちゃんが言うには、

今年雪の運勢にものすごい厄が入っている

近々会う男のせいで、悪いことが次々起こる

おまけにその厄は来年まで持ち越すっぽい

‥なんという幸先悪いスタート‥orz




その一週間後に大学はスタートし、

物語は、学科全体の新学期飲みから始まる。




一年ぶりの大学だが、知った顔も多い。



中でも最年長、健太先輩は雪が最もお世話になってる先輩の一人だ。



休学明けだから知らない奴も多いだろ、と全員の前で雪を紹介する健太先輩‥。

悪い人じゃないんだけどね‥うん‥。





飲み会がまったりと進行する中、一人の男が遅れて入ってくる。




イケメンキタ━(゜∀゜)━!

思わず雪もヨダレを垂らし「あ~タイプ‥」と思う始末!

当然雪にとってのそれは皆にとってもそうなわけで‥。




も~大騒ぎ。一瞬でその場の空気が変わった。

先生に呼ばれていたから遅くなった、でも走ってきたから許してくれよ、と汗を拭きながらもイケメンは止まらない。

雪は自分の目の前を通る彼の腕に、ブルガリの腕時計を見る。

「かっこよくて金持ちで、みんなが騒ぐわけだ」とこの場の雰囲気に納得する雪。

隣の席の先輩が、雪が休学する以前に休学し、今学期から復学する青田先輩だとはしゃぎながら言った。

格好良くて、性格もすごく良いのだと。

雪はこの現状に圧倒されながらも、どこか虚しさを感じる。



「同じ復学生だというのに、自分と違いすぎる」と。

そして、可愛がっていた後輩二人が同時に復学することになって、テンションマックスな健太先輩はまたやらかす!


「おい赤山!復学生同士挨拶しろよ!」




orz again!!

勘弁してよといたたまれなくなりながらも、挨拶をする雪。




「よろしくな」と青田先輩。

「あ、はい。こちらこそどうか宜しくお願いします」と雪。

が、そう言い終わらない内に、青田先輩は健太先輩に向き直って会話を続けた。



「‥‥‥‥」

なんてことはない。

なんてことのないことなのだ。

しかし他人の感情に敏感で鋭い雪には、どこか引っかかるものがあった。

続いて起こる小さな事件に、それは密かに持ち越された。



新入生の女の子二人が、青田先輩の隣りに座る。

中でもキノコ頭の子は積極的で、

どんな授業取ってるんですか?とか

いっぱい召し上がって下さいね!とか、

バンバンにアピールを始め出す。



健太先輩との話をも遮って、

果てには目の前の鉄板の肉が焦げてるからと、青田先輩の体に密着!



ドンガラガッシャーン!



キノコ頭ピンチ!

スカートはびしょぬれ、健太先輩はブチ切れ!

そんな中、青田先輩は「俺が片しておくから、早くトイレ行って洗っておいで」

とにこやかに言った。

「なんでお前が片付けるんだよ」と不満そうな健太先輩にも、

「グラス持ちながら鉄板の火を消そうとした自分のせいでもありますから」と、

おしぼりで濡れた机を拭きながら笑った。



そのスマートな優しさに、周りの女子からはため息に似た花やハートが飛んだ。

「優しすぎるー、あーゆう人と結婚したいよね」「イケメンすぎる」



そんな中、雪だけは違った。

先ほど引っかかったものが、彼の行動に疑問を抱かせた。

コップ、わざと手を滑らせたんじゃないの

おしぼりだってテーブルは他人ので拭いて、手は自分ので拭いて。

‥いや、さすがに考え過ぎだろうと雪は自分を戒める。


そんな中で、ようやく聡美が飲み会に到着する。



雪の隣りに座っていた福井太一とは親しいようで、ここからこの三人の友情が始まったかと思うと感慨深い。

そして聡美は、遅れてきたくせに雪にサンチュに焼酎を注いで飲ませるのだった‥。




もうこうなったらとことんこの場を盛り上げるしかない!とその誘いに乗る雪。



見事飲み干し、周りからは拍手喝采!



太一に「あんたもやりな!」と絡んだりと、宴会のボルテージはマックスだ。


ただ一人を除いては。



目の端に、一人顔を背ける彼の姿が映った。

顔を向けると、もうその人は健太先輩と談笑している。



雪は「気のせいだよね‥」と自分に言い聞かせた。




宴会は進み、大多数は屍となった‥

雪も一杯だけのつもりが思いの外飲んで、かなり酔っ払ったようだ。

前で突っ伏してる聡美も寝ぼけて、雪にタバコを催促する。(しかし雪は超がつくほどのタバコ嫌い)

家に電話をするからと、外に出る雪。


2月の夜。酔っ払った体には夜風が染みる。

帰り道、雪はタバコが落ちているのを見つける。



聡美が吸いたがっていたのを思い出し、拾っていってあげようとそれを手に取った。

すると、誰かが電話している声が聞こえた。



振り返ってみると、青田先輩だった。

こちらには気がついていない。

「こっちは、もうそろそろ終わりそうかな。まぁ、それなりに楽しいよ。

てか、ご飯は食べたのか?夜ご飯抜かずに、ちゃんと食べろよ」



その会話から、彼女か?と予想する雪。あの顔でフリーなわけないもんな、とぼんやり考えながら、

ついつい盗み聞いてしまう。

「ああ、もちろん俺の他にも何人かいるよ。そんなもんだろ」

復学生のことか?とまたもや考えるが、あまり聞きすぎても悪い。

そろそろ中入ろ、と立ち上がりかけた時だった。



「まぁ、ちょっと汚らわしいけどな」






え?





まさか、と雪は思う。




背けられた視線、

心に引っかかったままの刺。

不信感を抱いた行動、

そしてその言葉。






汚らわしいという言葉の対象は、まさか‥。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

こうして物語は始まりました。

これが雪の物語の始まり。


次回は、青田先輩の物語の始まりを紐解いて行こうと思います。