ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

教員の基礎体力

2016-09-21 07:32:32 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「教員の基礎体力づくり」9月11日
 『想像力養うストーリーテリング』という見出しの記事が掲載されました。記事によると、『語り手が昔話などの物語を暗記し、本を見ないで子どもに語る「ストーリーテリング」が教育現場などでじわじわと広がっている。子どもの想像力や菊池からが養われるという』のだそうです。
 子供に対する教育効果についてはここでは論じません。私が指摘したいのは、教員の指導力育成という視点から見た「ストーリーテリング」効果です。私には忘れられないシーンがあります。
 大学4年生のときの教育実習でのことです。教務主任を務める40代後半の教員A氏が特別な授業を見せてくれるというのです。学年は2年生でした。A氏は黒板を背にして立ち、お話を始めました。私の知らない昔話のようでしたが、至って単純なストーリーで、普通に筋だけを辿れば、10分もかからないで終わってしまう内容でしたが、A氏は、表情豊かに、身振り手振りを交えて、さらに時折子供たちに「どうなったと思う」などと語り掛け、子供の質問にも答えながら、つまり子供とやり取りをしながら、話をふくらませ、とうとう45分間、一つの昔話で子供たちを引きつけ、飽きさせることなく「授業」を終えたのです。
 今の私であれば、A氏が行ったのは、学習指導要領のどこに位置付くのか、学校の年間全体指導計画との関連は、評価に視点と基準は、などの疑問点を指摘するでしょうが、当時は、A氏の神業のような語り口に呆然とする思いだけでした。何しろ当時の私ときたら、教えたいことは山ほどあり、そのための指示や注意を煩いくらいに繰り返しても、子供たちは耳を貸してくれず、怪訝な顔をしたり、露骨につまらなそうな顔をしたり、少し大人びた子供は私に同情の表情を見せるという有様で、学習指導案も準備もなく(当時の私にはそう見えた)、しかも小さな2年生を45分間引きつけ続けるなどということは、人間業には思えなかったのです。
 神業の種明かしをすれば、A氏は、学生時代から「児童文化部」に所属し、紙芝居で鍛えてきた語りの達人だったのです。その時から私は、教員にとって「話す」「語る」ことの重要性を自分の研究課題としてきました、記事にある「ストーリーテリング」は、教員としての基礎体力のようなものを強化する上で絶好のトレーニングになると考えます。授業の下手な教員だと自覚のある人は、早速取り組むべきです。

 

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