ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

記録が作る専門家

2018-10-03 08:33:10 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「いずれデータ化」9月29日
 『データより眼力』という見出しの記事が掲載されました。プロ野球広島のスカウティングに関する記事です。記事では、ホーム球場マツダスタジアムにだけ、データ野球に欠かせない弾道測定器「トラックマン」が設置されていないこと、スカウト統括部長が『データも重要だが、「それ以上に重要なものがある」』と語っていることが紹介されています。
 具体的には、『野手なら肩が強く、足が速いか。投手なら癖のない投球フォームか』などの資質面に加え、『野球が好きかどうか。三振した時、ホームランを打たれた時、どれだけ悔しそうな表情をするか』『ユニホームの着こなし』『ランニング姿のかっこよさ』など、野球に取り組む姿勢なども評価の視点とされているそうです。
 他の11球団は、「トラックマン」を使い、『投球の回転数や打球の角度、飛距離などを計測、数値化』したデータを活用している訳ですが、広島がセリーグ3連覇、今期も最も早く優勝を決めたことを考えると、同球団のデータよりもスカウトの眼力という方針が重みをもってきます。
  プロ野球のスカウトは、高度な知識や技能が必要とされる専門職だと思います。しかも、人を評価する専門職です。その専門職において、一見すると古めかしい「眼力」が重要であるとすれば、他の専門職においても同様なことが言えるのではないでしょうか。
 教員も専門職です。しかも、子供を評価することを求められている専門職です。だとすれば、数値化されたデータ以外にも子供を見る「眼力」が重要なのだと考えることは妥当であるはずです。新規採用されてすぐにこうした「眼力」をもつことは難しいでしょう。しかし、10年以上教職にありながら、自分なりの見方や観点をもてないようでは、教員としての自らの資質と努力を疑ってみた方がいいかもしれません。
 また、教員であれば、保護者や家庭の状況についても、「眼力」をもつ必要があります。というよりも、保護者や家庭を見る目なしに、子供を見て評価することはできないはずです。
 では、こうした「眼力」は、どのようにすれば身につくのでしょうか。ただ漠然と10年間教員を続けていても、「眼力」は身につきません。記事には、『広島スカウト陣必携の書がある。この道40年の苑田統括部長が、自身の日記から選手を見抜くエッセンスを抽出した「スカウト心得」。内容は30項目以上に及び~』と書かれていました。つまり、「眼力」養成には、日々の記録を付け、記録を蓄積し、蓄積された記録からエッセンスを抽出するという根気強い取り組みが有効であるということです。
 私はこのブログで、授業記録を取り、その分析を続けるという授業力向上策を提唱してきました。子供一人一人の言動を記録した子供カルテについても触れてきました。苑田氏の「スカウト心得」と同じ発想です。ちなみに私は、教委に勤務するようになってからも、日記をつけていました。元々は、業務の見通しをもつためのものでしたが、結果として学校やその管理職、教員についての情報を蓄積する記録ともなっていました。
 教員を長く続け、成長していくためには、記録をとり続けるという習慣をもつことが必要ですし、効果的でもあります。記録は教員にとっての宝なのです。

 

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