父の「味噌天」(その3終わり)
たいていは、暇な冬、それも村の女性たちが多く集まる、
お寺の行事の際にたくさん作った「味噌天」持参で集会所に出かけた。
お世辞ばかりではなくて、その味は昔風でもあり、人気があったようだ。
父が亡くなってからも懐かしいと言って下さる声も少なからず聞かれましたから。
その「味噌天」は、良く乾燥した赤紫蘇の葉を丁寧に砕き、
紫蘇の実と天婦羅粉とパン粉を混ぜ合わせて揚げる。
そう「味噌天」と呼ぶくらいで、もう味噌も混ぜ合わせて足を付けて揚げるのです。
何とも言えない、お菓子のような雰囲気の天婦羅でもありました。
父は大量に揚げた「味噌天」を持って、嬉々としてお念仏に出かけていたけれど、
倅と同じで、女性が好きで、褒められたかったのかも知れない。
(終わり)
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