
「アレッ!マックスは?」時折り交わす夫婦の会話。
タヌポーン殿下ことマックスがまた姿を御隠しになられたのです。
仕方なく仕事の手を休め、姿を消した方向に探しに出かけます。

おー、居た居たー、タヌポーン殿下はよたよたよろよろとご帰還です。

マックスは食欲の秋を迎え、食欲全快フルスロットル。
そのため、手足は細くなったのにお腹周りは丸くなり、その鈍い動作と相まって狸そのもの。

本ワンは何を言っても聞こえないので、陰でタヌキのポンポコポーンを取り「タヌポーン」なんて陰口。
フルネームは「タヌポーン・シッチャカメッチャカ」殿下と申します。

もう老ワン力を発揮して怖い物知らず。
畑なんて畝だろうが、畝間であろうが平気で作物を踏んで歩く。

ま、仕方有りませんね。
昔は敏捷に走り回り、畝間から外れて作物を蹴散らすなんてことは絶対に無かったのですから。

子牛のように逞しかった胸も、丸太のよう腕もすっかり細くなってしまった。
逞しい、四肢を踏ん張り、腰を入れてジャガイモやさつま芋を掘る姿なんて見惚れるほどでしたよ(笑)。

はい、タヌポーン殿下は無事に畑にご帰還です。

さて、トーちゃん達はまだ帰る時間では無いのかなーとマックス。

乗ろうとして思案顔だけれども、今はよほど調子が良くないと自分では乗れません。
スベルべがよっこらしょと抱きかかえて助手席に上げようとするとスベルべの顎髭のあたりを軽く噛みます。
「こりゃ、よせー」なんて言うかのように。
軽トラの助手席の内張りがはがれていますが、これはマックスが外に出たいと齧り取った跡。
一度は自動車屋さんに張り替えて貰ったのだけれども、また齧り取ってしまった。
この殿下は自己主張も有って大変。「出してくれー」と吠えても言う事を聞いてもらえなかったからかな。
でも、基本的には利口なところが有り、悪戯を叱ると二度と同じ事はしない聞き分けの良さも有りました。
履物を齧ったのも一度だけ、家の中に入り込んで暴れまわったのも一度だけ、そんな性格でも有ったのです。