はちみつと青い花 No.2

飛び去っていく毎日の記録。

佐藤千矢子著『オッサンの壁』

2023年01月23日 | 
2023/01/23


『オッサンの壁』は昨年読んだ本ですが
興味深くて、読みごたえがありました。


著者の佐藤千矢子さんは
男女雇用機会均等法第一世代として毎日新聞社に入社。
全国紙初の女性政治部長になった方です。


政治記者として経験し感じてきた
男性社会の「壁」について書いてます。

 


「オッサン」とありますが
世の中のすべての中高年男性が
「オッサン」というわけではありません。

著者は「オッサンとは何か」をこう書いています。


(引用)
〈私が思うに『オッサン』とは、男性優位に設計された社会で、その居心地の良さに安住し、その陰で、生きづらさや不自由や矛盾や悔しさを感じている少数派の人たちの気持ちや環境に思いが至らない人たちのことだ。
いや、わかっていて、あえて気づかないふり、見て見ぬふりをしているのかもしれない。男性が下駄をはかせてもらえる今の社会を変えたくない、既得権益を手放したくないからではないだろうか。

男性優位がデフォルトの社会で、そうした社会に対する現状維持を意識的にも無意識のうちにも望むあまりに、創造力欠乏症に陥っている。そんな状態や人たちを私は「オッサン」と呼びたい。〉(p.13) 
〈男性でもオッサンでない人たちは大勢いるし、女性の中にもオッサンになっている人たちはいる。〉


「日本は政界、経済界も極度なオトコ社会。
普通に会社で働いても男性と同じようには評価されない
国なのです」と書いています。

著者は、女性の同僚から
「男だったらもっと出世できたのにね」
と言われたこともあったのです。


女性が出てくると叩く男性のタイプについて
こんなふうに書いてあります。

・男尊女卑の文化の中で育ったミソジニ―(女性嫌悪・女性蔑視)が染みついているタイプ
・競争を勝ち抜くために、足を引っ張りやすい女性を外そうとするタイプ
・女性の進出によって、男性優位の社会や文化が変更を迫られることを嫌うタイプ(p.69) 



第2章「ハラスメントの現場」に
書いてあったことは
少し前まではこういうことは
たくさんあっただろうなと思います。
(今もあまり変わっていないかもしれませんが)

(引用)
〈政治家に、取材のためアポイントを取ろうとしたところ、「資料を渡してきちんと話したいから、ホテルの部屋まで来てくれ」と言われた。男性の先輩記者に相談したら、「絶対にやめておけ」「仮に何もなかったとしても、ホテルの部屋に入るところを誰かに見られたら、言い訳ができない。アウトだ」 
セクハラという言葉が認知されるのは1989年。〉(p.88)

〈お酌、チークダンスの相手。若手記者時代に取材相手などと20回以上、チークダンスを踊らされたと思うが、不愉快でなかったことは一度もない。そしてただの一度も断ったことはない。
セクハラを受けたときに抗議をすれば、報復される可能性がある。新聞社ごと取材拒否、女性の側にも落ち度があるのだろうという批判が出る〉(p.103)


女性が3割になると、組織に影響を及ぼせるそうです。

2020年の新聞・通信社の記者に占める女性の割合は22.2% 
そのうちの管理職は8%
NHKは女性管理職10.1%、民放は15.0%


世界経済フォーラム(WEF)が発表した
2015年のジェンダーギャップ指数は
日本101位 だったのが
2021年には120位に後退。

日本の女性管理職は今もまだまだ少ない。
3割になるのはいつのことでしょう。



その「壁を壊すには」どうしたらよいのか。

〈女性がお金を稼げる社会に変えていく必要がある。
女性にお金が回らない社会がある。
お金の差別がある。
金融の世界のトップに女性が少ないのが一因ではないか。
社会的な発言力とお金を稼ぐ力は関係する。〉(P.222~223)


そうね、お金のない者は発言権もない。


〈給与アップの交渉ができる人は、交渉すべきです。
女性の賃金が低いことに正当化できる理由はありません。〉


さらに著者はこのように書いています。

女性がまず自信持つこと。
今の2∼3割増しくらいの自信をもって男性と同程度。

2020年の育児休業の取得率は女性81.6%、男性12.65%。
まだ子育ては女性の仕事とみられています。

女性雇用者の 54.4%が非正規。男性は22.1%
女性の給与の低いのは
非正規が多いこともあるのですよね。

「人口の半分を占める女性を登用しないと経済は傾く」
と云っています。

ここ20年、日本の経済が低迷したのは
女性を登用しなかったのと関係あるのかな。


「女性問題となると自分の言葉を持たない男性がけっこう多い」
(P.232)

〈海外駐在経験の長い女性の友人は、「男性が既得権益をして握っていたものを手放してみたら、たいしたことはなかった。手放したほうがかえって 幸せになれる、と気づくこともあるのではないか。」〉と云ったそうです。

男性を悪者にしたいわけではないのです。
子どもの頃から刷り込まれた「ホモソーシャル」
な考え方が
生き方を支配しているのかもしれません。

男性も女性も気づいて
意識を変えていくことが必要ですね。



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