はちみつと青い花 No.2

飛び去っていく毎日の記録。

『うつ病九段』

2019年07月28日 | 
2019/07/29

将棋の先崎学九段が、自身のうつ病闘病記を書いた本。

私は将棋のことは詳しくないので、先崎学九段の名前も存じ上げなかったが、ラジオで本のことを知ったのだ。

 
 

先崎九段はNHKの将棋講座の講師や週刊文春のコラムも長く執筆されていた。羽生善治さんと同い年である。

先崎九段がうつ病を発症し入院したのが2017年、藤井聡太君が注目を浴びだした頃。発症前には働き過ぎといわれるほどに働き、精神のバランスを崩してしまったらしい。

先崎九段によれば、うつというのは「心の病」ではなく、「脳の病気」なのだそうだ。素人考えでも、将棋はすごく頭を使うだろうなと思う。大変な集中力を必要とするし、記憶力も先を読む力も必要となる。心が強くないと勝てない。

症状のひどい時には怖くて電車に乗れなかったそうだ。乗り方がわからないのではなく、電車に飛び込みそうな衝動があったらしい。うつは死にたがる病で、自殺させないためだけに精神科医がいると、精神科医であるご自身のお兄さんが言っていたという。

「うつっぽいのとうつの症状は全く違う。本物のうつの症状は無反応だ。喜びにも悲しみにも反応がなくなってしまう。感受性が消えてしまう。 うつっぽいというのは表面的に暗いだけ。」

しかし、将棋に対する執念・愛というのはすごいものがあるなあと思う。

「6歳で将棋を覚え、9歳でこの世界に入った。17歳でプロになって30年。自分は将棋が強いんだという自信だけで世の中を生きてきたのである。勝ち負けとか金とか以前に、将棋が強いという自信は自分の人生のすべてだった。世の将棋が弱くなる。それだけは絶対に許せなかった。」

うつ病の人はこんなふうに感じているということの一端がうかがわれ、また将棋の世界のことも少し知れて、闘病記ではあるが面白く読みました。
コメント
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